ポツポツと喋り始める
「美咲……今まで俺の我儘に付き合わせてしまって申し訳ない……っ!」
そんな彼女を見ていると、俺は気づいた時には彼女に頭を下げ謝罪していた。
「え? えっと……な、何がでしょうか? と、とにかく頭を上げてくださいっ!! 良くわからないのですが私は祐也さんから何か嫌な事をされたような事を思い当たる節はございませんので、謝る必要は何一つもありませんっ!!」
しかしながら当然なんの脈略もなく俺に謝罪されたところで美咲は何に対しての謝罪かわかる訳もなく、とりあえず俺に頭を上げるように言ってくる。
「俺が今まで美咲を側仕えとして束縛してしまっていたせいで、美咲の学生時代を俺は奪ってしまっていた事に今更ながら気づいてしまった。 気づくのがあまりにも遅過ぎる上に謝罪で許して貰えるような年数ではない事くらいは理解しているのだが、それでも謝らさせてはくれないか?」
そして尚も頭を下げている俺に美咲は真面目な顔になって話しかけてくる。
「何故、何故それで謝罪に繋がるのでしょうか? 私は一度でも今の状況が嫌だと申したことがありますか?」
「いや、そう言われたことは確かに無いのだが、それでも考えてしまうんだよ。 もし俺が美咲を束縛しなければ、今頃美咲はクラスメイト達と仲良く学園生活を送り、友達も沢山できて、もしかしたら彼氏なんかも出来ていたかもしれない、そんなifもあったのではないかって。 そして、そんな未来を奪ってしまったのは紛れもなく俺な訳で……」
「…………そ、そうですか……ですが、その謝罪はやはり受け取れませんし、もしこの事で今まで祐也様の重荷になってしまっていたのだとしたら謝るのは私の方です。 祐也様のお気持ちに気づくことができず、申し訳ございませんでした。 もし、まだ許されるのでしたらこれからも祐也様の側仕えとして働かせていただけないでしょうか?」
そして今度は俺の話を聞いた美咲が俺に向かって頭を下げ、謝罪をし始めるではないか。
俺が美咲に謝罪するのはまだ分かるのだが、美咲が俺へ謝罪する理由が一向に分からない。
そんな俺の気持ちを察したのか、美咲はポツポツと喋り始める。
「私は祐也様に今まで甘えていたのだと思います。 私と祐也様との出会い小等部三年の頃。 私は祐也様も覚えている通りクラスのガキ大将にいじめられておりました。 その理由は私自身にあり、私が星城学園の小等部に入学した頃に両親は離婚し、私は母親に引き取られました。 しかしながら元々病弱であった母は外で働く事はできず、父からの養育費で何とか食い繋ぐ日々。 そんな生活ではお風呂さえままならず、服装も日に日に見窄らしいものになり、結果的に虐められてしまうのも時間の問題でございました」