俺はエロゲの悪役だからな
そして俺がキスをすると二人の姉妹は顔を真っ赤にして俯き、黙ってしまう。
そんな二人を見て俺は二人の頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
因みに美咲はなぜか俺が三股宣言していたにも関わらずどこか誇らしげであるのだが、後日その事を美咲に聞いてみると『二人にキスをする所を見てそれでこそ祐也様だと思いましたし、うじうじとここ最近の祐也様は何かしらに悩んでいましたので答えが祐也様の中で出たのならば行幸、そして吹っ切れた裕也様はカッコよかったので、その最高にカッコイイ裕也様に一番最初にキスをしたのは私ですので後の二人はは私の二番煎じでしかないと思うと優越感が……』だそうだ。
美咲は美咲でどこか頭のネジがぶっ飛んでいるような雰囲気は感じていたのだが、どうやら俺の勘は正しかったようだ。
そして俺はこの夜、彼女が一気に三人もできた。
とりあえずはこれで死亡フラグはある程度ブチ折ったとみて良いだろう。 …………いいよね?
◆
連休明け。
俺達は四人一緒に登校し、莉音とは学年が違う為下駄箱で分かれて三人で教室へ向かうと、何やら教室が騒がしいではないか。
その騒々しさは俺達の教室がある階へと続く階段を登っている時から聞こえて来た程だ。
その騒々しさにもしかしたら、俺が美咲、彩音、莉音と三股したのがクラスの連中にバレてしまったのではないかと嫌な予感がする。
しかしながら嫌な予感がするからといって教室に入らないわけにはいかないので意を決して俺は教室のドアを開き『三股の何が悪いっ!』という態度で教室へと入って行く。
すると、クラスの連中は俺が教室に入って来た事を目で確認した後、興味ないとばかりに人だかりができている場所へと視線を移すではないか。
「そやで。 ウチはもう圭介のもんやからな。 そらもう全身圭介色に染められてもうたわ。 圭介のあそこはウチのとは相性がええみたいでな──」
「ちょっ、だから流石に生々しい話は恥ずかしいから止めろって言ってるだろっ!? てかそういう話は普通女性はいやがるものなんじゃないのかっ!?」
そしてその人だかりの中心にはこの三連休で恋人(かどうかは不明だが本人たちが恋人と言っているのだから恋人だろう)になった南川と東城の姿があり、この三連休で一線を越えた話を南川が赤裸々に語っているではないか。
その南川の姿を見て俺は心の底から関わりたくないと思ったので存在を消して自分の席へと移動する。
それは美咲も彩音も同じらしく、頬がひきつる程ドン引きしているその気持ちがいたい程分かる。
「おっ、なんや西條くん。 いつの間に登校してきたん? この三連休で婚約者の彩音だけじゃなくて妹の莉音ちゃんに側仕えの美咲ちゃんの三人に告白されて、その場で三股宣言したらしいやないの。 さすがやなぁ。 で、この連休は何処まで行ったん? 聞くところによると四人は西條くんの別荘まで泊まりに行ってたみたいやないの? 何もないっちゅう事はないよね? これで何も無かったんなら何のために股間の一物がついてんねんって話やからなぁっ。 で、どないして三股成功させたん?」
しかしながら俺達は残念ながら南川に捕まり、三股だけではなく連休中に別荘で泊まっていた事までばらされてしまう。
こうなるとクラスメイト達の興味は南川から俺達へ移るわけで……。
でもまぁこうなる事は予め想定していた為予定通りと言えば予定通りでもある。
そして俺は予めそうしようと決めていた通り、美咲と彩音を引き寄せて二人の胸を揉みながら悪人面でこう答える。
「権力で弱みを握って金で頬を叩けば簡単だったぜ」
これでクラスメイト達のヘイトは俺だけに集まり、美咲たちには好奇の目線ではなく同情の目線が集まるだろう。
三股やモブのヘイトを集める事くらいどんとこいだ。
何故ならば俺はエロゲの悪役だからな。