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今から私がすべき事




 その日懐かしい夢を見た。


 それはまだ私が小学生であり、圭介や翔子と一緒に始業のチャイムがある前の早朝の時間を過ごしていた時の光景から始まった。


 恐らく小学校五年ぐらいであろう。


 私たち三人が揃ったのは小学五年生のクラス替えが初めてであるから、三人揃っているということと、圭介や翔子の見た目から見ても恐らくそうだろう。


 懐かしいなと思う反面、変な胸騒ぎもしていた。


「お、誰か来たみたいだ。 って、なぁーんだ。 犬かいっ!!」


 そして圭介が犬飼さんが登校したのを見てそんな事を言う。


 子供だからこそ悪意のないその言葉に私も翔子も笑っているのが見える。


 そんな私たちとは対照的に犬飼さんは唇を噛み締めて俯いていた。


 しかしながら私たちはそんな犬飼さんの姿には気付いておらず、また圭介が馬鹿なことを言った程度の認識しかないうえに、犬飼さんの(くだり)が終わったらもう用無しとばかりに犬飼さんには興味が無くなっているのが分かる。


 そして圭介はひと笑い取れたのが嬉しかったのか上機嫌に昨日見たテレビの事や漫画やゲームの話をしていく。


 そのスムーズに次の話題へと移っていく光景からも圭介はこれが初めてではなく、幾度となく犬飼さんが登校してくるたびに言っては私たちから笑いを取っていたことが窺えてくる。


 そんな時である。


 圭介が祐也さんにぶん殴られたのだ。


「な、何をしやがるんだっ!!」

「テメェ、今まで自分が何をしてきたのかわからねぇのか?」

「はぁっ!? いきなりなんなんだよっ!! 頭おかしいんじゃないのかっ!?」

「そうよそうよっ!! 圭介君は何も悪いことなんかしてないのにいきなりなぐり飛ばすなんて最低だわっ!!」


 そして当時の私はいきなり好きだった人を殴られたという事しか頭になく、圭介が何もしていないにも関わらず祐也さんが急に圭介を殴ったと圭介と一緒に反論してる姿が目に入ってくる。


 今こうして客観的に見ることができるからこそ『何を言っているんだ、私はっ!?』と思えることができるのだが、当時は先ほどの犬飼さんに対する対応も悪い事だとは思っていない故になぜ何もしていない圭介が殴られなければならないのかと本気で思っていた。


 そして祐也さんは言い訳を言っていたが担任はそれを信じようとせずこっぴどく怒られていた事も思い出す。


 その日から祐也君の素行は悪くなり、犬飼さんは祐也さんの側を離れなくなった。


「最低じゃない……私」


 そして、今から私がすべき事は決まっている。

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