無題1
何かが飛来する音を捉える。
近くの壁から急いで離れると、先程まで俺がいた場所は爆発で起こった煙で見えなくなってしまっていた。
爆風で体勢を崩されながらも、俺は全速力で距離を取る。
「………くそっ。」
俺の撤退の判断が遅かったか?
いや、最悪の状況にまでなった原因は、危険度予想を遥かに超える脅威のゴーレムいたことか…
曲がり角や障害物を使って距離を離し続けているが、一向に俺を見失う気配がない。
全く…、索敵までバケモン並なのかよ…。
3人いたメンバーもすでにあの爆発に吹き飛ばされてる。
………正直、あのナオとはいえ、あの威力の爆発を食らって動けるとは思えないし、前衛で軽装だったサリアは死んでるかもしれない。
だがまずは、俺が生きて帰ることが重要だ。
全滅すれば、俺たちの全滅を悟ってこの迷宮に再び調査隊が来るだろう。
俺より強い探索者は少なくないが、あのゴーレムには勝てないと断言できる。
こいつの情報は絶対に伝えないといけない…!
転移魔術をストックしていたミアが初めにやられたのが偶然かは知らないが、あのゴーレムには自動で魔術師を狙う性質があるのか、それとも自ら考えて魔術に長けるミアを狙ったのか…
どちらにせよ高度なプログラムだな。
だが、傀儡操作術には大きな弱点がある。
ゴーレムが術者から離れすぎると術式が解除されるということだ。
その距離は術者の力量にも寄るが、殆どが半径50m以内!
逃げ回りながら記録していたこの迷宮の設計は、最長辺約150m、最短辺約100m!
遠距離攻撃バカスカ打ってくるあのゴーレムがいるにしては狭いし、入り組みすぎてる!
記録していたマップには不自然な程、中央への道が無かった!
つまり───
「ッここだ!!!」
バケモンゴーレムが最低3体徘徊してるこの迷宮…
中央へつながる道を探してる途中に遭遇する回数はそれまでの探索道中とは比べ物にならなかった!
道の奥には石製の扉が見えている。
俺は全速力を維持しつつ更にスピードを上げ、その扉を蹴破った───