第三十六話「杏共内戦~簡単すぎた後方かく乱~」
約2か月ぶりです
李軍閥を主力に皇帝派の反抗作戦が開始される前後、挺と苑は農民の服を着て潜伏していた。場所は緑海軍閥の本陣付近の森である。数はそれなり、武装はおざなり、監視能力はほぼないと言った感じであるが二人だけではどうしようもない程度には強敵と言えた。
そんな二人だが別に本陣を強襲しに来たわけではない。彼らの目的はかく乱だった。
「いいか? 俺達はこの本陣に志願兵として来た農民だ。とにかく媚びへつらい、相手をおだてるんだ。相手がどんな将かは分からないが褒められて嬉しくない奴はいない。いいな?」
「勿論だ。機嫌が悪い奴も上機嫌にするくらいほめちぎってやるさ」
苑の問いに挺は勢いよく答える。二人で入念に打ち合わせを行いゆっくりと本陣に近づく。走ればすぐに本陣に入れそうな距離になって漸く武装した軍閥の兵士が出てくる。
「貴様等! 何者だ!?」
「ひぃ! お、俺達は志願しに来た農民だ! それを下ろしてくれ!」
「こ、殺さないでくれ!」
苑と挺は情けない声を上げながらそう叫ぶ。若干棒読みなのが二人の演技力の限界を示していたが軍閥の兵士には充分だったらしく構えた銃を下ろした。
「何だ。この辺の農民か。もうすぐ滅亡する帝国ではなく我らの所に来たのは賢明だったな」
「(誰が好き好んでお前らにつくか)ど、どうか俺たちも同志にしてほしいんだ!」
「(こいつは後でぶっ倒す!)お願いするだ!」
「仕方ないな。ついてこい。同志将軍に合わせてやる」
「あ、ありがとうございます! (すぐに合わせるのか? いくら何でも兵士の質が悪すぎるだろ。……まさか将軍とやらもそうじゃないよな?)」
苑はあまりにもすんなり信じた上に自分たちのトップに合わせようとする兵士に心の中で呆れつつも驚く。彼らが死ぬ事すら恐れずに将軍を殺せばたちまち空中崩壊していただろう。苑はまさか上の者達もそうではないよなと思いつつ謁見する。
そして、苑の予想は当たり将軍すらすぐに武器を与えて兵士にする同志将軍に呆れてしまうがそれならばとその翌日の深夜。食糧庫と弾薬庫が並んでいる本陣の後方で大爆発と火災を起こし本陣の継戦能力を削ぐことに成功した。これにより緑海軍閥の指揮能力を一時的に麻痺させる事に成功したがこれをなした二人はあまりにも楽過ぎる作業に呆れて自慢する気すら起きずこの出来事が世間に広まるのは彼らの死後、この事を綴った日記が遺族の手によって発見されてからとなった。




