第二十八話「おそロシア」
「アレクセイ様、残念でしたね」
「仕方あるまい。モスクワからここまでは遠い。シベリア鉄道が途中から使えない以上それ以上は徒歩や馬、車を用いるしかない。それが出来ないなら航路で大陸を回るしかない」
アレクセイが部下からの言葉にそう返す。彼らは皇王の間で行われている大日本皇国と大杏帝国の白紙講和の調印式を眺めている。彼らは招待されていないゲストである為部屋の隅で大人しくしている事しか出来ないがそれでも調印式を見るのは意味があった。
「だが今回の件で判明した。アメリカ合衆国は我らが直接動かなければあちらも動かない。大日本皇国も国民の意見に左右されやすい事が分かった。朝鮮半島から追い出すことさえできれば大日本皇国は終わりだ」
「そこまでできるようになりますか?大杏帝国は?」
「出来る。とは断定できない。何せ大日本皇国の強さは我ら自身が良く知っているのだからな。とは言え大杏帝国にはシベリア奪還の為にもそれを成してもらわないと困る」
「帝国政府にはなんと伝えますか?」
「紛争介入には失敗。しかし、大杏帝国への支援は行うべき。と言うつもりだ」
「分かりました。日本にいる諜報員には引き続き情報収集を行わせます」
「ああ。頼んだ」
アレクセイは周囲から起こる拍手に合わせて自信も手を叩く。皇王の間の中心部では幼き帝国の皇帝が大日本皇国の代表と握手を交わし調印式を完了させた。これで大日本皇国は侵攻する南満州より撤退し、大杏帝国もシベリア共和国の首都ウラジオストックから撤退するだろう。白紙講和と言うお互いに得られる物がなかった紛争は終わるがこれをきっかけにロシア帝国は大杏帝国への支援を明確化していくことになる。
大日本皇国もシベリア共和国と連携し大杏帝国に対抗。更には他の軍閥への支援も行い大杏帝国の力を制限していくことになる。
こうして大日本皇国の現体制が崩壊する二十数年後までに全3回発生する案日西紛争、その最初の一回目は白紙講和で幕を下ろすのだった。
第一章はこれで終了です。次回からは第二章に移ります




