第二十五話「ふんそーです!はち!」
僕の元に知らせが届いた時には既に前線は大きく後退していた。いや、敗走していたと言ってもいいくらいだ。
大日本皇国は戦車を投入してきて始めてみる戦車に大杏帝国軍はパニックに陥った。しかし、勇気ある者達によって出て来た8両全てを撃破に成功するが前線の後退は止められずに南満州の半分を奪われてしまっているらしい。更に、海西州……現実世界での山東半島にも大日本皇国が強襲上陸を仕掛けてきて同州の守備隊と交戦しているらしい。海西州は海を挟んで存在する皇帝派の軍閥、と言うか僕のお嫁さんの紅花ちゃんの実家が統治している地域だ。つまり大杏帝国の前の伯国の一族最後の土地と言う事になる。
海西州には伯国に仕えていた重鎮たちが集まっているらしく兵の練度も高い……とは聞いていたけど報告にはそんな様子は微塵も感じられない。何せ山東半島部分は完全に占領されて少しずつ大陸側に押し込まれているのだから。とは言え大日本皇国が列強であり世界を支配する大国の一つと考えれば仕方ないのかもしれない。
「陛下……。このままでは帝都も危険かと」
「うん、そうだね……」
青姜さんの言葉に僕も同意する。大日本皇国がこのまま攻勢を強めていけば大杏帝国は近いうちに滅びてしまう。帝都を奪われれば各地の軍閥が独立をして中華が大分裂するかもしれない……。でもそうなれば処志高正さんの軍閥が中華を統一する事になると思う。
「陛下!帝都付近の海岸線の防衛の為に帝都の兵をお貸し願いたい」
「青姜殿!?それでは万が一の時に……!」
「その万が一を防ぐべく使うと申しているのだ!大日本皇国が帝都近くに強襲上陸を仕掛けてくれば帝都は危険にさらされるのだぞ!それに減った分は同じ皇帝派の軍閥に徴兵を命じて補充する」
「馬鹿な!彼らとてこの状況で兵を貸してくれると思っているのか!?もしこの状況で兵を出すのなら最初から出していたはずだ!」
先ほどから青姜さんと言い争いをする清択さんの言うとおりだ。この紛争、もう戦争と言っていい規模のこの戦いが始まってから各軍閥が兵を出してくれる事はなかった。海西州に関しては序盤に制海権を喪失した事で海路での輸送が出来なくなった事で海西州の防衛に専念してもらっている。
それ以外の派閥は兵を出していない。宇春さんの実家は満州を統治する軍閥だから大杏帝国軍と一緒に戦っているみたいだけどね。
「失礼します!緊急の要件が入ってきました!」
そうして二人の口論を眺めていると突然部屋に兵士が入って来た。兵士の言うとおり急ぎの様で顔を青くしつつ汗をだらだらと流している。一目で尋常な様子ではないのが見てわかる。それは青姜さんと清択さんも同じだったようで口論を止めて兵の方を向いている。
「なにかあったの?」
「はい!先ほど帝都近くの沿岸部に大日本皇国の使者と名乗る者が現れました!その者は陛下との会談を望んでおります!」
「……え?」
大日本皇国の使者?何で?まさか講和したいとか?でも明らかに優勢なのは日本の方なのに……。っと、ここでグダグダ考えても仕方ないか。
「分かった。その使者を連れてきて。会うよ」
僕はそう宣言した。




