第二十四話「ふんそーです!なな!」
「撃て!ここを通すな!」
生き残っている指揮官の言葉に小隊の一斉射撃がそれに対して行われる。この小隊は遼東半島に展開する大杏帝国軍の中でも精鋭中の精鋭でありその功績を称えて外国より購入した最新鋭の銃火器が与えられていた。
そんな彼らの一斉射撃は全てそれの装甲に弾かれ甲高い音を立てるのみだった。距離はそれなりに離れているとは言え歩兵なら簡単に倒せるその射撃を全く通さないそれに小隊は軽く絶望する。
地震とも取れるうねりを上げながらゆっくりと近づくそれ。史実においてはマーク戦車と呼ばれる戦車がゆっくりと近づいてくる。そんな戦車を盾にするように大日本皇国の歩兵が前進してくる。既に野砲陣地は半壊状態にある上に元の前線から大分押されており一番前線と近かった野砲陣地は大日本皇国によって占領されている程だ。
「騎馬兵並みの速度で歩兵の銃弾程度なら弾く……。噂には聞いていたがこれが戦車か……!」
指揮官はどうしようもない現状への苛立ちと共に吐き捨てるように言った。
大杏帝国でも欧州大戦で使用された戦車の事は知っていた。とは言え戦車を見たことが無い大杏帝国は具体的な絵を見た程度でその性能に関してはあまり知らなった。それだけに対策など考えている訳もなくこうして大日本皇国との前線はパニックに陥り戦線が崩壊しかけていた。
それでもここに配置されているのは大杏帝国の中でも精鋭である。他国から見れば練度は低いかもしれないが士気はとても高かった。
「新兵!お前は援護しろ!戦車の砲塔や機銃部分に銃弾を打ち込め!第一分隊は右から、俺達は左から接近する!行くぞ!」
「「「はっ!」」」
この小隊も戦車の前進を止めるべく無謀とも言える接近戦を開始する。直ぐに大日本皇国の歩兵が気づき発砲を開始するが後方に残った兵がまばらながらも反撃と言わんばかりに銃撃を行い牽制をかけている。その隙を狙い戦車に一斉に近づくが機銃掃射が行われ次々と倒れていく。
「固まるな!ばらけつつ近づくのだぁっ!」
「分隊長!」
戦車を挟み右側では指示を出した分隊長が機銃にやられたが最後の指示に従い近づいていく。20名程いた左右の分隊は機銃で攻撃出来ない距離まで接近する頃には5名まで減っていた。
「死ねぇ!日本兵ども!ぐぁっ!」
「殺せ!戦車に近づけ……ぎゃっ!」
戦車に乗る兵や後ろにいる日本兵が5名の兵士に発砲する。指揮官を含め全員が銃弾の雨を浴びるが指揮官は最後の力を振り絞る。
「ここは、我ら中華の土地だぁ!」
指揮官はそう叫びながら手に持った手榴弾を戦車の上部に投げ込む。指揮官は投げると意識を失いそのまま戦死するが最後の気迫で投げ込んだ手榴弾は運良く車体に入り込んだ。慌てて逃げ出そうとする乗員だったが直後に爆発。一部の後方の歩兵を巻き込み大爆発を起こした。こうしてとある小隊の奮戦によりこの前線の戦車の破壊に成功するのだった。
大日本皇国はブリテン連合より購入した戦車20両のうち8両を投入した。しかし、大杏帝国軍の命を厭わない反撃により8両全てが僅か3日で破壊される事となったが大杏帝国軍の前線はパニックに陥った事で領内への侵攻を許す結果となるのだった。




