第十七話「お嫁さん(とその候補)そのに」
「陛下の正妃に選ばれたと聞きました。おめでとうございます」
「偶々ですよ。私のほかにも選ばれても可笑しくない人たちが大勢いましたから」
何やらただならぬ雰囲気の二人だけどとりあえず僕の前でやらないで?ここ一応玉座なんだよ?皆に注目されてるよ?大日本皇国の人なんてなんか目輝かせて「もっとやれ」みたいな視線を向けてくるんだけどやめてくれる?高原さん、君の同僚か部下か知らないけどその視線を止めさせてよ。
「貴方だって伯国の皇族だった人です。落ちぶれて州の一つを任せられる程度になったとしても十分魅力はありますよ」
「そう言う貴方だって満州を統治する者の娘でしょう?政治的に見れば貴方が選ばれても可笑しくありませんでしたよ?」
「……ふふふ」
「……アハハ」
「「……」」
正直に言うと物凄く怖い。とっっても怖い!二人とも微笑んでいるのに目は全然笑ってないよ!しかも言い合っている内容は相手を牽制するような内容だし……。これ、下手に仲裁に入ろうものなら二人から総攻撃を食らうな。ここは静観しよう。というかそれしか出来ないよ。
「宇春さん、陛下への挨拶は終わったでしょう?陛下との挨拶を望む者はまだまだいます。これ以上は公務の妨げとなりますよ?」
よ?
「……分かりました。今回はこれで。陛下、また今度じっくりとお話をしましょう。次は二人っきりで」
そう言ってウインクして宇春さんは離れていった。意外と早く終わった修羅場とも言える事態に僕は安堵の息を吐くと同時に助かったという視線を紅花ちゃんに向ける。すると紅花ちゃんは返事をするように笑みを僕に浮かべてくれた。ああ、これだけで昇天しそうだよ。美少女の笑みって最高だね。それも自分にだけ向けられていると余計に。
そんなわけで挨拶は無事に完了し飲食を程々にしつつパーティーを楽しんだ。途中からは見られているという状況にも慣れてきて飲食に集中できるようになった。その間紅花ちゃんが侍女の様に僕のお世話をしてくれたけどこれって多分宇春さんへの当てつけなんだろうね。途中で宇春さん帰っちゃったし帰るときに紅花ちゃんの方をにらみつけていたから。
それにしても皇帝派の中も不和が起きているのか……。これは本格的にやばいかもしれないね。もし今国外の勢力、それも列強と紛争でも起こればこの国、崩壊するんじゃないかな?
_そんな事を考えたせいであろうか?このパーティーから約ひと月後、満州=シベリア共和国の国境沿いで紛争が発生した。シベリア共和国側より放たれた一発の弾丸が原因のこの事件は後に「第一次杏日西紛争」と呼ばれる紛争に発展する事となる。




