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桜の宴で、君を想う

作者: 天星 えあり

書き出し苦手。

本編の他者視点で過去編として出そうかとも思いましたが、本編は設定はあっても書ける気がしなかったので、取り敢えず短編としてあげます。

普通に本編書こうとしても世界観を上手く表現出来ずに説明だけを書き綴りそうなので、イメージを感じ取ってくれたらいいなー的な。







「帝って、恋したことはおありなのですか?」



酒に酔った勢いか、普段ならあり得ないような事を聞かれた。

確かに、今まで恋愛話をしてはいたが───



「ほう?私にそれを聞くのか?うん?」


「っ、いえいえ滅相も無い!おい蓮華、酔い過ぎだ」



ほら盃離して水飲んでおけ、と渡された器を握りながら、酔った頭でも自らの失言に気づいたようだ。



「あ、蒼蘭さま、ありがとうございます。すみません帝、ついうっかり……。失言が過ぎました」


「よいよい、構わぬ。今宵は無礼講ゆえの」



からからと笑い飛ばす帝にホッとする周囲に、ニヤリとする帝。



「そうだな、ではそなたの無謀さに免じて、私の初恋でも語ってやろうかの」


「おお!」


「くく、現金なやつだのう。私の愛は重いのだぞ?まああれが、私の最初で最後の恋になってしまいそうなのだがなぁ」









そなたらも知るように、私は生まれつき霊力が高くてなあ。

幼い頃は、度々神隠しにあったり妖に取り憑かれては死にかけたりと、それはもう波瀾万丈な日々であった。

今では寧ろなくてはならないものではあるが、あの頃はなまじ強い見鬼も持ち合わせていたのも悪かったのだろうよ。

しかしな、そんな命がけの日々がある日を境にぱったりとなくなったのだ。

今までの事は夢まぼろしではないかと思いそうになったが、眼にはっきり映る妖の姿に変わりはないし、それはもう戸惑った。

まあ、どんな事情であれ命の心配が減ったのは良い事であったし、お陰で帝王学に励む時間が取れるようになったが、今度は暗殺の心配が出てきての。

私は元々優秀であったが、妖から身を守ることで手一杯だったのがなくなり余裕が出来てから頭角を現し出した私に、他の帝位継承権のある者たちが焦り出したのだろうなぁ。

だがそれも、軽い毒や多少の事故に気をつけるだけで済んだ。

しかしそれは、更に多くの皺寄せが『彼女』にいくようになった、ということでもあったのだ。









「帝、よく生きてましたねぇ」


「私は強運だからのう」









彼女を見つけたのは、桜が咲き誇る季節だった。

私が周囲に命を狙われ出してから一つ季節が巡った頃に、少々環境に辟易してなぁ。

道中は宮中よりいっそう危険だとは分かっておったが、それでも常に狙われるよりは余程マシだと思い、田舎の別荘へ行くことにしたのだ。

今思えば、『彼女』への負担を考えろ、と軽率な己を叱り飛ばしたくてたまらぬわ。

だがそうしなければ、私が『彼女』を見つけるのは不可能に近かったというのもまた事実。










「ほんに、自己顕示欲がないと言うか、職務に忠実なやつでのう」


「仕事は大事ですよ、脱走魔の帝殿」


「言うな、息抜きはなにより大切だぞ?」


「はあ、そうですねぇ」


「んふふ、おさけー」


「ってこら、だからもう飲むなと……蓮華!」


「ふ、良いではないか。恋人に付き合って真面目に話を聞かずとも。そなたも飲め飲め」


「えっいえ、ですが」


「ほれほれ」



酔っ払って聞こえてなさそうだと思い、はじめから『彼女』の正体を話すつもりは無かった帝は、蒼蘭の意識を逸らして話を切り上げ、ひとり思い出に浸る。










別荘に篭り始めて数日目の朝方、ふと目を覚ました時、血の匂いがした。

何度も死にかけたせいなのか命の危機には敏感で、血の匂いは慣れ親しんだものだったから、微かな匂いでも気がついた。

信用出来ぬから世話役はさほど連れて行かなかったゆえ、一人で衣を羽織って庭へ降りた。

別荘は山桜の木が並ぶ温泉地で、庭は一面山桜でまったく壮観な眺めだった。

山桜の合間を縫いながら、血の出所を探っておった時、ふと地面にぽたり、とそれが落ちてきた。



「赤い……血、か」



見上げた先には、真下にいたのに気がつかなかったことが不思議なほど山桜から浮いていた、血濡れの黒装束の女がいた。

今にも死にそうな、むしろそれほど血が流れていて何故生きているのか疑問に思うほどの大怪我をしていた。



「おい、そなた。意識はあるか」



そんな異様な状況だというのに、私は一切警戒心を抱く事はなかった。

瀕死の重傷で今にも死にそうだったから、というのもあったが、なにより「自分を守っていた存在だ」と漠然と感じていたからかもしれない。



「ひ、お……さま……?なぜ……」



ぐったりと木にもたれかかっている女がふるふると瞼を開いて、知るものがほとんどいない自分の名を呼ぶ声に、ぞくりとした。



「そなた、まだ動けるか」


「……?」



酷な事とは思ったが、素性が知れないどころか、明らかに普通ではない女を誰かに任せるのは得策ではなかった。



「こい。庇護下に入れば、周囲は少なくとも表立って手出しは出来ぬ」


「い、え…。じき……癒え、ま……っけほ、」



息も絶え絶えの女が首を振ろうとし、言葉の最中に口元を押さえた。

指の隙間から流れる血に、幼いこの身では女を抱えられないのでは、人を呼ぶしかないか……と考えた。



「だい……じょ、ぶ、です……から」



震える手で袖から出した何かを飲み干した女は、安心させるように頷いて見せた。




……その時飲んだものが、傷を癒す代わりに負担が大きすぎて命を削る代物だと知っていれば、私はきっとここまで彼女に惹かれていなかったかもしれない。

妖や暗殺から私を守るために何度も死にかけ、それを飲んで命を繋いでいた彼女が、ただ私のためだけに無理を通していたと知った時、私が信じる世界は彼女だけになったから。


幸せだった。ただ、彼女がいるだけで世界は色付いた。

だが、桜の季節に出会った彼女は、『あの日』いなくなった。

彼女を失った『あの日』から、私の世界は色を失ったまま。









「う……ん、もう、のめまひぇーん……」


「のみすぎだといっただろうがぁ。こら、れんげー……ひっく」



話の途中から、もはや判断力が残っていなさそうな蓮華と、恋人と帝を二人きりにはすまい!と使命感だけで、さっさと逃げていった仲間のいなくなった広間に残った蒼蘭を酔い潰した帝はご満悦そうだった。



「ふはは、もう皆べろんべろんだのぉ」



愉快愉快、と笑う帝に、様子を見にきた屋敷の主人であり蓮華の父は、案の定な惨状に苦笑する。



「あなた様と違い、皆は底なしの酒飲みではございませんので……。

明日の稽古にも触りますし、その辺りでどうぞご容赦を」


「なんだ、硬い奴め。だが、芸人が稽古出来ぬ有様なのはまずかろうなぁ。

まあよい、今日はここらで勘弁してやろう」



感謝いたします、と頭を下げる。

そして娘を抱き抱える蒼蘭から娘を剥がすと、容赦なく蹴り飛ばした親馬鹿を尻目にゆっくりと酒をあおる。












『彼女』が守ろうとした己に、どうしても価値が見出せなかった。

『彼女』が居なくなってから、『彼女』の行動には意味があるのだと示したいという、その一心で生きてきた。

母の身分が低かったゆえに、いかに優秀であろうと帝位継承権が末席だった自分が兄達を追い落として、今若くして帝位についているのも、たったそれだけの理由だった。

でも、誰に何を言われようとそれだけがこの下らない世界で生きている意味だ。

悪い治世にしたいとは思わないが、帝位についたのはただの自己満足でしかなく、別段良い政治を行おうとも思わない。

ある日ふらりと立ち寄った見世物で、蓮華の舞を見た時に『彼女』に似ていた気がしたから、時折ここへ来るようになった。

あの排他的で帝位継承権に興味がなく自陣へ引き込んだ又従兄が、蓮華に横恋慕していると気付いたのも、多少は信頼できるかと時折訪れるようになった一因ではあるが。



「───もう、5年か」



出会ったのは桜の季節。

別れも、また。

ならば再び相見えることが叶うとしたら、それは───と、毎年毎年、桜を見るたび懲りずに考える。








目線の先には夜桜があった。

はらはらと、桜の花びらが散っている。

今年の桜も、もうじきに終えるだろう。

今年は無理かもしれない、だが来年の今頃はきっと……だなんて、あるはずもない未来を思い描きながら、この色褪せた世界を生きている。







熱烈なリクエストがあったら本編も書くかもしれない。

設定だけ出したり、誰か書いてーとなるかもしれない。


以下、説明補足↓

帝が屋敷の中にまで押しかけて居座るのはこの時期だけです。

帝になってから、おいそれと都どころか宮中を出られなくなり、別荘へ行けなくなって不満たらたらでした。

そこで、桜の見える庭といい、別荘に似た場所があり、かつ帝らしさを求める鬱陶しい周囲の邪魔なく『彼女』と出会った思い出に浸るのには絶好の場所として白羽の矢が立ちました。

しかし勿論よく脱走するようにもなるので、先帝の従兄弟の子で皇族にあたり、帝に面と向かってものを言える立場にある又従兄が回収係として屋敷へ向かいます。

何だかんだと粘られ無駄に終わることがほとんどですが、お堅い又従兄は律儀なので。

なにより愛しの蓮華に会えるのは嬉しいので。

その辺りも含めて帝は色々確信犯です。

というより、頻度が下がるだけで他の季節も色々な場所に出没し、いつだろうと脱走することはする帝に又従兄は目が離せません。

帝も表の護衛は連れ出さずとも、裏は何も言わず黙っていてくれるならついているのは許容するので、一応護衛はいます。


『彼女』がいなくなっても妖の方の対処が出来ているのは、自衛用にとみっちり仕込まれたからです。

元々の霊力が高いので、未熟でも力でごり押します。

霊力が高い=妖の美味しい餌みたいなものだと思っていただければ。

この帝のように頻繁に喰われそうになるのは非常に稀なことです。


帝は初恋拗らせてます。

身分が高すぎる上に幼い頃から頭が非常に良かったので、素直に甘えられる対象であった『彼女』がいなくなってからちょっと壊れた感じになりました。




※深夜テンションで、更には「途中で書くのやめたら絶対続きが書けなくなる!」と3時間かけて書いたので、色々おかしくても目をつぶってください。

妖が当然のように存在するエセ平安風です。

何の資料も読んでないので、名称違ったりは普通にすると思います。

言葉遣いも安定しません。

アドバイスは大歓迎。


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