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無能狩人の事件記録~境界に生きる者~  作者: くろかた
第三章 影にひそむもの
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第十一話 

第三章 エピローグです。

 アラン・クラーリオは心臓発作で死亡したと言うことで、今回の事件は幕を終えた。

 表向きは、エグゼ・クラーリオの殺人事件は犯人が見つかることはなかったし、犯人の犯行に怪物が関わってはいないということになった。

 クラーリオ家、ただ一人の当主となってしまったエレナではあるが、意外にも元婚約者であったグエルが彼女を助けてくれているという。

 事件もあり婚約を解消しはしたものの、あのライルからして良識のある人物と評価された彼はそれでも一人で家督を継がなくてはならないエレナを助けずにはいられなかったらしい。

 それでも、エレナは一人ではあったが、シャテルという姿なき妖精がいる限り、彼女は決して孤独にはならないだろう。

 その一方で、ライル達はというと――、


「おい、この小娘。テメェ、なんだこれは」

「え? なんのことですか? さっさと食べましょうよ」


 いつもの屋敷で食事を取ろうとしていた。

 今回も、料理が異様に得意なローラにより作られた料理ではあるが、その内容はライルにとっては憤慨ものであった。


「トマトだらけじゃねぇか……ッ!」


 勝手に声をシャテルに貸し出した腹いせか、料理のほぼ全てがトマト料理なのだ。

 トマトソースのチキンソテーから、トマトスープ、トマトのサラダ、トマトジュース。

 もう見える景色全てがトマトに見えるほどの、圧倒的な赤色にライルは目を血走らせながらドヤ顔のローラを睨みつけた。


「私の雇い主がまさか、まさかのトマト嫌いなのはいけないと思いましてねっ! 多少無理やりにでも治してあげようと思い、作ったんですよ! 安心してください! 味は保証しますよ!!」

「ぐ、こ、この野郎……ッ!」


 たしかに料理としては美味くできているのだろう。

 ライルとしては認めたくないが、ローラの料理の腕前は相当なものだ。

 しかし、それを含めても大人しくこのトマト料理を口にすることは彼のプライドとか諸々含めて認められることではない。


「あの私、調べもののお礼として食事に招待させてもらったのですが……」


 そんな中、ローラとライルの対面の席に気まずそうに座っているミラがおずおずと手を挙げる。

 これから彼女の情報収集能力を頼ることが多くなると、聞いたローラが屋敷の場所を教えるついでと―――ライルの狼狽える姿を見せてやろうと画策し、招待したのだ。


「あ、どうぞどうぞ。遠慮なくいただいちゃってください!」

「そ、それじゃ、遠慮なく……」


 ローラに勧められ、ミラは最初に目についたスープを一口食べて、素で驚く。

 トマトの酸味ばかりが目立つばかりと思っていたが、それだけではない。塩や香辛料の味付けがしっかりと効いており、トマト本来の旨味と非常に噛み合っている。

 実のところ、料理関係は全て幼馴染のフェリカに任せっきりだったが、もしかしたら彼女よりも料理が巧いかもしれない。

 今日、フェリを連れてこなくてよかった……! これは自信を失いかねない……! と、心の中で思いながら、一心不乱に目の前の料理を口にしていく。

 その様子を見てニヤリと笑みを深めたローラは、フォークとナイフを握ったままぷるぷると肩を震わせているライルを横目で見る。


「さーさー、ライルさん。トマト、冷えちゃいますよ?」

「……あまり俺を嘗めるなよ。ローラ」

「お?」

「俺は大人だぞ。このくれぇ、我慢して食べれる」


 我慢して食べれる、という言葉が子供っぽいんだよなぁ、とローラは思う。

 並々ならない決意を固め、フォークとナイフでトマトソースのかかったチキンソテーを切り、口へと運ぶ。

 ライルが苦手とするトマトの酸味と、特有の風味が口の中を駆け回ら―――ない?


「あ、そのソース、トマトの酸味を抜くためにはちみつをいれたんですよー。いやぁ、お店の方がおすすめしてくれましてねぇ。って、ライルさん?」

「……」


 トマトとか関係なしに普通に美味しかった。

 トマトを食って見返してやろうと思った次の瞬間には、ローラの工夫により普通に美味しくトマト料理を食べれてしまったことに、彼はかつてないほどの敗北感を抱く。


「どうですか? 美味しいでしょう? なにせ私が作ったんですからね」

「いいや、まずい」

「そんなそんな、だって普通に食べてるじゃないですか」

「まずいっつったらまずい」


 完全に意地になりながら食事を食べ始めるライルは完全に子供であった。

 そんな彼の様子にローラもミラも「この人にもシャテルが必要なのでは?」と思いながら、自分達も食事を続けるのであった。



 妖精と人は、本来交わることのない存在同士である。

 そのどちらもが完璧ではない存在であることから、取り返しのつかない過ちを犯してしまうこともある。

 音食らいのシャテルは、一人の人間が子供であることを是としてしてしまった。それにより、精神が子供のまま大人になり、肉親を手に掛けるという罪を犯した。

 しかし、シャテルは人と関わることをやめることはないだろう。

 シャテルにはまだ、守らなくてはならない少女がいるからだ。

 同じ過ちは繰り返さない、そう彼は心に誓いながら、影の中から少女の成長と幸せを見守っていくことだろう。

ローラからのトマト地獄攻撃……!


第三章はこれにて終了となります。


土日はお休みなので、次の更新は月曜となります。

次回から第四章が始まります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 繰り出されるト マ ト 地 獄 [気になる点] ライルは何でトマトが嫌いなんですか? [一言] トマトはリコピンなどを始め、多種多様な人体に有益な成分を含む野菜です。ドイツの諺に、「トマト…
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