人?初コンタクト?ってちょっと待ってぃ!!
初めての子育て(?)体験をした日の翌日でかなり精神的にも肉体的にもグッタリの如月 悠です。今朝も張り切ってお手伝いされましたが正直見てるだけで怖いです。料理教室とか家庭科とかの授業があるといいのですがここでは期待はできませんね・・・その前に人にすら会ってないですね。会話はできても何にも進展してない。
俺、このまま天寿を全うって事にはならないよねっ!?
不安はあるけど食料や周辺の魔物や動物には対応できるしなんとかなるはずなんだけどこれってやっぱり・・・楽観し過ぎなのかなぁ~?
いつものように何気なく決めた予定でやって来たのは湖。ここではあのただの豚とか言えない例の豚がいた場所だが今日は姿を見せては来なかった。周囲にも気を配ってみたが大丈夫そうだったのでシュカと芽愛をお弁当を持たせて遠足みたいな感じで行かせた。芽愛は人の姿で走り回っていたが森の中に入ってなんかよく分からない物を拾って集めていた。
・森の奥に行かない事
・湖の中には入らない事
・俺の作った簡易結界から出ない事
を約束させたのでとりあえず放置しても危険はなさそうという判断で釣りをするために湖の向かった。
湖は海と間違えそうな位大きく広い。湖の端から端が肉眼で確認が出来ないほどであるがじゃあどのくらいなの?って聞かれても俺に正確に伝える器量はないっ!!
湖は底まで見えるくらいに透き通っているがちゃんと魚はいる。だが魚は透き通った場所ではなく湖の中心の方にいる。この湖は外側から中心に向かって深くなり中心から50mくらいの距離からグンッと深くなり中心は真っ暗で底がどのくらいの深さか分からない。ゆっくりと湖の中に足を踏み入れるたが土が舞い上がって濁る事も無く澄んだ色で歩きやすかった。
透き通った場所は水の高さがあまり変わらず深くても80cm位の高さで歩くこともできるがたまに気を付けないと底の土ズブッと沈む。あのテレビとかで蓮根畑とか田んぼとかで足を取られてわたわたするあの光景が近い。
水の深さが変わる手前の所で特製の釣竿に特製の餌をつけてチャポンと沈める。錘でザァーと糸が出ていくがある程度の所で止まりゆっくりと巻き上げる。すると直ぐに魚が食い付く。それの繰り返しでやっていたのだが・・・・・・
『大漁だね?しかも良いサイズばかりだ』
「ありがとうございま・・・すぅ~?」
いきなり声をかけられたが気配も人とかの対象物に設定している結界や索敵にもなんの反応もなかったのに直ぐ近くで声をかけられるまで気が付かなかった。ドクン、ドクンと心臓が大きく脈打ち緊張が体をピリッと駆け巡る。
『そういえば不思議だったのだが・・・こんなところで釣りをしてる者は珍しいな・・・それに見慣れない物を使っているな』
俺の動揺をガン無視で会話をしてくる人物に視線を向けた後俺の思考は完全に停止させられる。いや正確にいうと思考できる状態が継続できないが正しいだろうか。
『それで君の名前は何て言うのかな?』
「・・・あの失礼ですが・・・貴方は魚ですよね?」
水面からフグに似た顔を真上に向けたままプカ~っと浮かんでパクパクと口を動かしながら話しかけてきたが、大きさは約1mくらいありい色が真っ青のフグが普通に話しかけてくる状況を、直ぐに理解できる人ってどのくらい居んのっ?しかも魚に名前を聞かれたけどこれって答えて大丈夫なのっ!?それになんか網持ってるけどヒレで網って持てるんだね?絡まってるわけじゃないよね?
『ふむ。たしかに魚だな。ただの魚ではないがまぁそれはいいだろう』
そりゃ~喋る魚なんて人面魚よりも珍しーわ。そういえば数年前にそういうゲームあったよね?人面魚のおっさんがけっこうリアルだって話題になって・・・っと今はそれどころではないな
「えっとはじめまして。ラギといいますよろしくお願いします」
とりあえずあだ名ではあるが名乗ったら魚が跳ねた。
『ほぅ。ラギか・・・私はポイルだ。人と話したのは何十年ぶりだろうか懐かしいな』
「ポイルさんですね。人と話すのは久しぶりってことはここにはあまり人が来ないのですか?」
『そうだ。ここらは魔物が多くてなかなか人は来ないのだ』
「人は来ない?じゃあこの近くには町はないのか?」
魚に聞くのはどうかという情報を訊ねる。さっきまで魚と話すなんてとか得体の知れないものへの警戒とかどこへやら情報が聞きたくて必死だった。
『可笑しな事を聞くのだな?この近くには町はないぞ?あるのは小さな村か名もない集落くらいだろう?そこから来たのではないのか?』
「いや・・・いつの間にかこの森にいて恥ずかしながら今帰り道が分からなくて迷子なんだよ」
思わずポイルから視線を背け段々と声が小さくなりながら答えるとポイルが一旦ブクブク泡を出して沈んでいくとガボッと大量の泡が出てきたかと思うと水中で小刻みに震えているポイルの姿があった。具合でも悪くなったのかと心配しているとバシャンと音をたてて水面に顔を出してきた。
『久しぶりに腹が痛くなるまで笑った。その年で迷子とは、ククッ愉快な奴だ』
笑われているだけだったようだ。心配した俺の気配りとか優しさとかを返して欲しい。しかも魚でも腹が痛くなるくらい笑えるのかと新事実にちょっとだけ感動したのは言わないでおこう。
「笑いがとれて何よりだが教えてくれないか?村はどっちの方向にあるんだ?」
『村か・・・そうだな・・・確かあの山の麓に1つと・・・あの崖の下に山小屋が建っていてそれの直ぐ近くにある崖の下に洞窟があってその洞窟を抜けた先に集落があったかな?』
「山の麓・・・結構距離があるな・・・洞窟はあったかな?山の麓にある村ってどんな感じか分かる?」
『そうだな・・・確かゴブリンが住んでいたかな?』
「なっ!」
『あぁ~違ったな、確かオークだったな』
ちょっと待てっ!誰が魔物の住んでる村の場所を聞いたよっ!?
お前ほんとふざけんなっ!!
しかもゴブリンもオークも俺にとってはどっちもどっちで変わらねぇんだよ!!あぁ~?見た目と強さが全然違う?
ああ、そうか!って、どっちみち魔物の分類じゃねぇ-か!!ちゃんと聞いてなかったらオークの村に普通に行ってたぞっ!!
「オークの村ってなんだよっ!!洞窟も魔物の村なのかっ!?」
『はっはっはっ、何を言っている洞窟を抜けた所にあるのは人が住んでいる小さな名もない集落だよ』
何を言ってるはこっちの台詞だっ!!お前がなに言ってるんだよ!?
「はぁ~・・・なんか会話だけで凄い疲れた・・・集落か近いうちに行ってみるか」
『そうかそうか。家に帰れると良いな』
「まぁそれはどうかな・・・所でさっきから気になってるんだが」
『ふむ。どうした?』
「ポイルの網の中に俺の釣った魚が入れられていくのはどういうつもりなんだ?」
『・・・・・・旨そうで・・・つい・・・』
「そうか・・・ついか・・・出来心ってあるもんなって・・・ざっけんなっ!!お前はいい加減にしろ!!」
なんか色々腹立ったからフグに向けてポケットに入れてあった石を投げつけたら顔面にクリーンヒット。なんで石がポケットに入ってるかって?ゴブリンとかと戦うときに投げつけただけで死ぬ奴が居るから楽するために何個か持ってるんだよね~まさかここで役立つなんて思わなかったけど。
『あぼっ!!』
「誰がアホじゃ!!」
なんか悪口が聞こえたからもう一発投げといたらフガッて声出して腹を上に向けてプカプカ浮いてた。直ぐに魚は回収して釣竿でツンツンと突っついてみたら反応はなかった。
「ポイル?ポイル?・・・返事はないただの屍のようだ」
『勝手に殺すな!!花畑が見えたぞ!!』
「なんだ生きてたか・・・返事がないから心配(する気持ちが皆無)だったよ。魚でも花畑が見れるんだな」
『なんか・・・誠意が感じられないのだが?それと魚は余計だ』
誠意?なにそれ?お前に誠意?笑える~!!最高~!!オークの村案内した挙げ句俺の釣果をパクろうとしていたのに?人としていや魚としてどうよそれ?ってなんか可笑しな事言ってるな、俺。
「さて・・・そろそろ釣りは止めて飯にでもするか」
『メシ?メシとはなんだ?』
「はぁ~?飯は飯だろ?ご飯とか食事って言えばいいのか?」
『なるほど食事か・・・それなら私も食べてやるぞ』
・・・・・・こいつを食材にしても俺は許される気がすんだよなぁ~いや絶対に大丈夫な感じだよね?あぁ~でもフグって毒あったけどこっちでもあるのかな?フグの毒を喜んで食べる人も居るって聞いた事あったな、なんかニュースとかになってたような?うろ覚えだけど。
「さて・・・なにか聞こえた気がするが空耳だろうし森の方で涼みながら食べることにしよう」
ポイルも言葉はスルッとマルッとスルーして道具と魚、ポイルじゃないからな?俺の釣った魚ね?分かってるって?いやちょっと気になってね。だってこいつをお持ち帰りとか思われたくないしさ。・・・想像したら気持ち悪くなってきた。・・・うっぷ。
「シュカは絶対に時間じゃないと帰ってこないだろうし芽愛はどうしてるかな?」
意識を集中して芽愛を探すと5キロ先にいたが動いていない。さっきまで楽しそうによく分からない物の収集をしていたいのにシュカは自由に動き回っているみたいだが芽愛が動いていない。直ぐに回収するために芽愛の所まで走り出す。芽愛の所にたどり着くと大きな大木に背中を預けて息苦しそうに短い呼吸をしていた。
「芽愛っ!どうしたっ!?」
駆け寄ると膝の上からコロンと何かが転がる。なんだ?と思い視線を向けると歯形がついたキノコ・・・真っ赤な色に黄色と青の水玉がはいったキノコが転がっていた。
「・・・・・・はぁ~・・・。毒キノコだな・・・」
確かに項目としては拾い食いって入れてなかったな・・・でもさ?俺よりも森の住民歴が長そうなのに拾って手当たり次第に食べるなんて想像できるわけないでしょ?予想外もいいとこだよっ!!
「解毒薬持てって良かったけど・・・こんな事に使うとは思わなかったな・・・ホントに・・・」
俺はバックから解毒薬を取り出して飲ませた後に苦味で苦しんでもがいている芽愛にある果実を渡して食べさせた。よく噛んで食べるようにと言い聞かせて。
ーーーカリッ、じゅわ、シュワワワ~ーーー
『うぶっ。げほっげほっ』
食べた時は感じなかったであろう刺激に困惑し、慣れないために気管支にいれて咳き込んでいた。俺が芽愛に渡したのは【便利箱】で作った炭酸飲料で出来た果実だ。だから食べると炭酸のジュースになっているが噛めば噛むほど味が出てくるってスルメみたいだな。今芽愛が食べてるのは真っ黒な果実に赤い線。
さて問題です・・・・・・真っ黒い炭酸ってな~んだ??
ピンポンピンポン!!正解~!!
あの有名なメーカーさんのコーラでしたぁ~!!
『なっ何ですかっ?!これは!?』
「炭酸っていうジュースが楽しめる果実だよ」
『タン、サン?って何ですか?』
「口の中でシュワシュワ弾ける飲み物だ」
『へぇ~初めて知りました。そんなのがあるんですね』
この世界にあるかどうかは知らないけどな。さて・・・芽愛も回復したことだし?大切なことを始めようかな?
「なぁ芽愛?」
『はい。なんです・・・か・・・?』
芽愛は最初は美味しそうに果実を頬張っていたのに俺の笑顔なのに目が笑っていない表情に言葉が段々と小さくなりながら目が合った瞬間にピシッと固まってしまった。あと一瞬ラギって誰だっけ?って思って本名は言わずにあだ名を名乗っていたのも忘れて名前呼ばれて反応出来なかったよ。あだ名はダメだな・・・
俺の怒りが伝わったようだね?
じゃあ始めようね?お説教を・・・ね?
ーーーーーー1時間後
『うぅ~。ごっべん、なざい。ぼう、じばっぜん』
泣きじゃくった芽愛が嗚咽混じりに謝罪したことでお説教は終わりにしたが一応罰として夕飯抜きを伝えると絶望したような顔をして落ち込んでいた。
『ほぅ。随分と変わった食べ物だな?私にも分けてくれないか?』
「うぉっ、ビックリした。ってお前魚なのに何で陸に居るんだよっ!」
後ろから急に話しかけられて過剰反応で横に飛びながらナイフまで抜いちまったよ。
『で?どうだい?分けてくれるかい?』
とこっちの事はお構いなしに自分のペースで話を進めてくるがなんてマイペースな奴なんだ。(多分悠とそう変わらないと思うが同族嫌悪か?)
「まぁ、分けても良いが・・・魚なのに食べるのか?」
『さっきから失礼だな!魚、魚と!食べれるに決まっているだろう』
「はぁ。食べれるなら良いが・・・あげるだけで俺のメリットがなくない?」
『ふぅむ。ならば・・・この貝貨でどうだ?』
「貝貨か・・・ただの貝殻に見えるんだが?」
『何っ!?これは歴とした海底魚島の金だぞっ!』
「何だってっ!海底魚島のお金?!」
『そうだ!』
「そうかそうか、海底魚島の・・・って、お前いい加減にしろよ?何で海底の、しかも魚の島の金なんだよっ!どうやって行くんだよっ!俺にエラ呼吸しろってか?亀にでも乗せてくれんのか?俺にはエラも無ければ助けた亀も知り合いの亀もいねぇーよ」
『むむむ。亀とかはよく分からないが貝貨ではダメなのか。うーむではなにならいいのだ?』
俺の話をまるっと無視して考え込んだあとにヒレとヒレを合わせてパンと叩き閃いた!という顔で得意気に話しかけてきた。
『海底でしかとれない海底石はどうだ?』
「海底石?あぁ・・・あったなそんな感じの名前の石。確か滅多に見れないとかじゃなかったか?」
『そうだ。だが我々にとってはそんな価値はないのだが人間には好まれている石だな』
「うーんまぁいっかそれで。この果実何個いるんだ?」
『そうだな・・・家族全員分だと1人1個で30個だな』
「なっ!30?」
家族全員分だとして1人1個で30って随分な大家族だな?って待てよ?よく考えたらこいつは魚だよな?ということは卵の可能性が高い。となると1回に産み落とす数が多ければ?・・・普通なのか?
『30個は無いのか?』
「いや余裕であるけどさ・・・でもどうやって持って帰るんだ?この果実はかじる以外の外側から傷をつけると中の果汁が一気吹き出して萎んで食べられなくなるぞ?」
『それなら大丈夫だ!ちゃんと持って帰れるからな』
「・・・あぁ、そうですか」
『だたここではなくさっきの湖で渡して欲しいのだが』
「そうですね。それは構いませんよ?ただ交換してもらう物を揃えてもらってからですね」
『そうだなそれも採ってこよう。先に行っているので先程の所で待っていてくれ』
それだけ言うとピョーンピョーンという擬音が聞こえそうな跳躍で飛びながら進んでいくポイルを見送っていた。カエルもビックリするだろうな、なんてどうでも良いことを考えながら膝を抱えてどんよりとした空気を纏わせた芽愛を抱き上げてゆっくりと湖へと歩き出した。
『やぁ!待ってたぞ。ちゃんと採ってきたぞ?確認してくれ』
そう言ってゴロゴロと深い青の色に淡い緑が混じった男の握り拳くらいの大きさの石が足元に広がった。
「確かに海底石だな」
『では交換してくれるのだな?』
「あぁ。どうやって持って帰るんだ?」
『ちゃんと持ってきたから心配ない!』
ポイルが出してきたのは籠だった。その籠に果実を30個入れた。だた普通に魚のヒレでは持てないと思うのだが・・・
『おぉ~助かったぞ!これで今日の夜は変わった物が食せる』
ポイルの言葉に芽愛がピクンと反応していた・・・お前はそんなに夕飯が楽しみだったのか?
『では有りがたく貰っていくぞ?確かラギといったか?また会えたら話をしよう!では失礼する』
ポイルが籠に触れながらそういって話しかけたときにポイルの体が光輝き光が消えた時には見慣れない姿があった。
「なっ!」
ポイルは人の形をして体は魚の鱗のような物があり、顔は普通が人と同じようになっているが顔の横に人のように耳はないがその代わりにヒレが着いていた。籠を持つ手は鋭い爪と水掻きがあった。もしかしてポイルってマーマンとかなんじゃ?なんて疑問に思っていたがさっさと湖にちゃぷんと入って深い水底まで潜っていってしまった。
ちょ、ちょっと待って!!
説明してくれ!!
なんで人形?人になれるの?
しかも普通に今気がついたんだけど
なんで湖なのに海底石があるだ?!
俺の疑問に答えは返ってこない。答えてくれる人(?)がいない。
チッ、魚つかえねぇ~・・・
あの後シュカを回収して家に戻り遅くなった昼食を食べながら、芽愛に本当に反省してるか、これからは勝手な行動はしないか、拾い食いや危険なものは食べないこと等の確認をして本当に反省して落ち込んでいたのでこのくらいで良いだろうと今回は夕飯を食べても良いと許したが次は本当に食事を1食抜くからと強調して言い聞かせるとブンブンと首を縦に振っていた。完全なる餌付け効果な気がしてならない。
変な人や知らない人から物や特に食べ物や飲み物は絶対に貰わないようにとキツく言い聞かせたのは当然の流れだった。
・・・・・・泣いた後に涙をいっぱい溜めた状態の芽愛に悠が心を乱されしかも悲しそうに見上げられ陥落しおやつまで出してしまったのはかなり甘い悠だったが・・・・・・嬉しそうに食べる姿に癒されてしまったのだった。