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アレリアの勇仁譚 序編  作者: チクチマ・F・テレフタラート
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第1章 道具屋の旅路(1)

初めまして。チクチマ・F・テレフタラートと申します。

初投稿なので見苦しい所もあると思いますが、寛容な心で閲覧して頂ければ幸いです。




道具屋の朝は早い。

まだ日が昇りきらないうちに、アレリア王国城下町、北大通り四丁目に位置する道具屋の裏手で、ひとりの青年が忙しなく動いている。


彼の名はアルム。道具屋の一人息子である。


彼は道具屋のちっぽけな倉庫の鍵を開けると、直ぐに中に入ったかと思うとたちまち薬草の束を持って倉庫から出てきた。慣れた手つきで鍵を掛け直すと、すぐさま店の中に戻る。そうかと思うと今度は箒を持って出てきて、店前の掃除を始めた。

向いの鉱石屋の女将が店の暖簾(のれん)を付けながら話しかける。


「おはようアルム、今日も朝から早いね」

「おはようございます、コリスおばさん、しかし今日は寒いですね。」

「確かにねえ、まだ太陽さんが昇られてないにしてもちょっといつもより冷えるね、この分だとそろそろ冬がやってきそうだよ」

「ですね、そうとなると早いうちに融氷水(ゆうひょうすい)を仕入れとかなきゃ」

「うちもそろそろ紅炭(べにずみ)をたくさん用意しとかなきゃね。おや、エルバーさんが呼んでるよ」


耳を澄ませると、確かに道具屋の中からアルムを呼ぶ声が聞こえる。


「本当だ、おばさんは本当に耳がいいですね。若い証拠です。それでは」


そう言ったか否やアルムは道具屋の中に入っていった。


「嬉しいことを言うねえ。さて、私もそろそろ店中のことをしなきゃ」


コリスも鼻唄を歌いながら鉱石屋の中に姿を消した。


アルムは道具屋であり自宅である木造家屋の2階、家族の団欒場に姿を現した。エルバーは椅子に腰掛けて新聞を読んでいた。


「おお、アルム、おはよう」

「おはよう、父さん、呼び出して何のようだい?」


まあまあ落ち着け、とエルバーはアルムにマグカップを渡した。

アルムは椅子に座ってマグカップの中のホットミルクを一気に飲み干した。


「実はな、来週予定してたクーレルの町での仕入れ、商売会の集まりで私は行けなくなったんだ」

「えっ…それじゃあ在庫が足りなくなってしまうよ、どうするんだよ父さん」

「そこでお前に仕入れを任せたい」

「えっ…?」


アルムは驚愕した。王都アレリアからクーレルの町までは片道でも半日以上かかる。さらにその道中は決して安全ではない。魔物が出る危険性もある。そもそもアルムはクーレルにはエルバーの付き添いで1回行っただけなのだ。


「そんな、無理だよ、一人で行くのは」

「いや、お前なら出来る。魔法養成所で幾らか魔法も覚えたらしいし、道具屋としての護身術も一通り教えた。お前なら道中は心配ないだろうし、何よりお前の商才は私がよく理解している」

「そう…かなあ?確かに僕は幾らか魔法を覚えたけど、それも生活の為のものだし、戦うのには…」

「幸いまだ1週間ある。養成所の老師様には私が話を通しておいたから、魔法の応用を学ぶといい。アルム、やってくれるか?」


少し間を置いて、分かった、とアルムは小さく呟いた。

流石は私の息子だ、とエルバーは微笑み、再び新聞に目を落とした。


一週間後、アルムはいつものように朝からせっせと働いていた。倉庫から硬化薬の材料の鋼薬草を1束抱え、店に戻る。倉庫から物を店に運ぶのはアルムの仕事だった。朝食の用意をしていたマーラが心配そうに尋ねる。


「いいのかいアルム?仕入れの準備をしなくて。それに硬化薬はまだ残ってるよ」

「大丈夫だよ母さん、準備は昨日の夜に終えておいたし。それに硬化薬はクーレルで取引先に少し渡すつもりだから、その分を今から作ろうと思って」


そう言いながらアルムは慣れた手つきで調合台で鋼薬草をすり潰し、沸騰した湯の中に入れる。


「アルムは本当に調合が上手いねえ、安心して店が任せられるよ」

「そんなことないさ母さん、母さんの調合術には敵わないよ」

「そうかねえ?私が若い時には今のアルムほど上手くなかったから、アルムはその内私を越す立派な調合師になると思うよ」


話をしながらアルムは鋼色になった液体をガラス瓶の中に入れて硬化薬を作り上げる。4本用意したガラス瓶に全て蓋をしたときマーラが食卓にチキンサンドを持ってきた。アルムはすぐさま手を洗い席につくと熱々のチキンサンドに頬張りついた。食べ物に目がないところはまだ子供だねえ、とマーラは苦笑した。

閲覧ありがとうございました。この後も読みたい!という方が居られましたら嬉しい限りです。今後とも何卒宜しくお願い致します。


続きます。

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