少年の悩み事
「僕のことを少年とよぶおねえさん」というツイッタータグから、考えてみましたのお話です。極掌編のおバカな話です。
僕の姉は変わっている。そう自覚したのは、クラスメイトのお姉さんという存在にふれた時かも知れない。
武田の家に遊びに行ったとき、インターホンで受け答えをしてくれたお姉さんは
「俊輔ーお友達来たよー」
と自分の弟のことを名前で呼んで応対した。
街中で麻生さんとお姉さんに遭遇した時、僕にきつく当たる麻生に対してお姉さんは
「ひなちゃんの彼氏?」
だなんて、ちゃん付けで呼んでからかった。
その人、その家庭で呼び方はそれぞれだということはわかっているつもりだ。けれど、どこで聞いても僕の姉と同じ呼び方をしている人は見かけない。
「少年。どうしたのそんな難しい顔して」
考え事をしていることを見抜かれてしまったらしく、問いかけられる。
「ねーちゃんってさ、変だよね?」
これはチャンスだと思って疑問を投げかける。
「あら、どうして?」
僕の疑問に対して、意外なのか理解していないのか不思議な顔で答える。まあ、具体性に欠けた問いかけだからよくわからなくて当然なんだろうけど。
「ねーちゃんは僕のことを少年って呼ぶでしょ? そういうのって他で聞いた事ないよ?」
簡潔に質問をまとめると、姉は一瞬固まった後にくすくすと笑い始めた。
「何を言い出すと思ったら……」
随分と気に入ってしまったのか笑い続ける姉を、僕は見続けることしかできない。
「何がおかしいのさ」
なんだかバカにされている気持ちになって気分が悪い。そんな気持ちを見透かされたのか「ごめんごめん」なんて、言葉では謝っているけれど顔はまだ笑っている。そろそろ膨れるよ。
「ごめんってば。でも……少年は少年でしょ?」
意地悪そうに言う姉は、きっとまだそんなに自分の行いを悪いと思っていなさそうだ。
「僕には豊って名前があるんだよ?」
「じゃあ、少年じゃないの?」
「まあ、14歳は少年って呼ばれる歳だけど……」
「でしょ? だから、少年で良いの」
仕方なく納得した僕の言葉を嬉しそうな表情で受け取り、完結させてしまう。釈然としない。
「もー、仕方ないからもっとぎゅっとしてあげるから。ね?」
わがままな子どもをなだめるかのように、僕の背中に回された腕を少し締め付けられ身体が密着する。
「少年がもっと大人になったら、ちゃんと名前で呼んであげようね」
「ん……」
姉のぬくもりに免じて、許すことにする。
ところでこの30分ほどの時間を僕と姉は抱き合っているわけだけど、こういう事は他所のお姉さんもしているんだろうか……。
了
こういうお話が苦手という方もいらっしゃるようですね。忘れてください。