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プロローグ

 「畜生、こんな所で……」

 「おのれ、ここで倒れるとは……っ!」

 「動け、動いてくれ!ここで体が動かなけりゃ…!」


 地獄絵図。

 そうとしか言いようのない光景が大地に広がっていた。

 それにしても不思議な光景だった。

 多数の屍が転がり、負傷者が呻いている。それはいい。戦場にはおなじみの光景だ。

 だが、この世界にしては異質な光景と言えるのは巨体を誇る竜が、獣人が、森人が、地人が、そして人が共に肩を並べて戦場に立っているという事実。互いに助け合い、切り裂かれ呻く竜に懸命に人族の治癒術師が治癒魔法を施し、軽装の弓兵と思われる森人が重装鎧で身を固めた地人の戦士を何とか三人がかりで運ぼうとしている。


 竜は恐れられていた。

 数こそ少なかったが、圧倒的な力を誇り、時に気まぐれに他者を蹂躙する存在だった。

 竜自身もまた他者との協調など考えもしないような傲慢な存在だった。


 人はその数によって世界の過半に広がっていた。

 魔力こそ森人に劣り、技術で地人に劣り、敏捷性や生存能力で獣人に劣るも逆にいずれも一定レベルでこなせる安定性と何より数によって世界へと広がり、他種族との壁もその過程で広がっていた。

 当然の話だ。数が増えれば当然ながらより広大な領域を必要とする。自分達が抑えていた森だけでは足りず、森人の領域であった森の恵みを奪おうとし、森を切り開いて新たな農耕地や木材を得ようとした結果、森人との対立は深刻なものとなっていたはずだった。

 地人、獣人とも内容は異なれどまた問題が起きていたはずだった。


 森人は森に生きる民だった。

 人に属する種族としては一際長い時を生き、高い魔力を持ち、だからこそ他者より自分達が優れているという選民思想に何時しか染まっていた。

 

 地人は偏屈で頑固。

 地の底にて鉱脈の掘削技術や各種の加工技術など技術は優れていたが、交流においてとにかく融通が利かなかった。

 それ故に次第に他種族との溝が広がり、商売こそ他種族としていたものの、要塞でもある山の中の都市に閉じ籠り、自ら外部に出ようとはしなかった。


 そして、獣人は自由に過ぎた。

 彼らは同じ獣人同士でさえまとまりがなく、漂白の民であり、それ故に最も弱い立場にあった。

 そうでありながら、彼らはどの種族とも交わる事が出来た為に、いや、だからこそ他種族に厭われた。

 そんな在り様に不満を抱く獣人はおり、それでもそうであってさえ彼らはまとまろうとしなかった。


 『ドラゴン、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、それにビースト……』


 そんな彼らが今、連合軍を組み、立ち向かっている。

 かつての彼らの祖先がこの光景を目にしたら、それこそ自らの目を疑っただろう。

 と、同時に連合軍が立ち向かっている相手を見ても、また彼らは己の目を疑う事だろう。


 一人。

 

 連合軍数十万。

 あらゆるこの世界の戦える者を掻き集めたとも思える大軍の前に立つのはたった一人。

 姿は異装。

 その全身は銀線の走る漆黒のローブに包まれている。

 ただの黒いローブではない。そのローブは常に揺らぎ、揺れている。まるで陽炎に包まれているように。顔に当たる部分は完全に、そして不自然な闇に覆われている。まるでローブの中にはただ闇があるのみで、肉体などないかのように。

 武器はなく、しかし、その手そのものが武器と言えるだろう。

 異様なまでに大きな形状の掌、他の縮尺が人体と同じ比率であるのにただその手のみが膝下を超える程に大きな金属の輝きを宿す鉤爪にも思える。

 或いは武器状の手甲を手に嵌めているのかと思えなくもないが、それは通常の指同様に曲がり、そして何よりそのような大きさなど扱いづらい。それならまだ棒を持って殴った方が使いやすいだろう。

 背には矢張り漆黒の翼にも闇が噴き出しているようにも見えるそれが二対四枚生えている。これも或いは本当の所はもっと多いのかもしれない。何せ、この戦いが始まった当初は一対二枚のみが生えていたが、連合軍が切り札を切り、痛打を与えた、と思った時新たに翼が一対生えて、形成は逆転したからだ。

 そう、このたった一体に対して、連合軍は今正に敗北を喫しようとしていた。

 

 『死にたくないから、今更ながらに協力するか』


 その相手はどこかつまらなそうに呟く。

 魔神と呼ばれるそれはどこか冷ややかな目で連合軍を見ていた。

 

詰まって気分転換に書いてたはずが、そういう時こそ筆が進む

何故だろう?

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