荒廃した現実。繁茂する空想。
思いつき短編小説です。
これは、ただの私の物語。
私は電車に乗っている。
行き着く先は、希望であると信じて。
私は、きっと地獄行き。
終着駅は地獄なんだろうな。
一人旅かぁ、さびしいなぁ……そんなことを、目を瞑りながら考えている。
……あれ?そもそも私は何で電車に乗ってるんだろう。
ふと、目を瞑っていたらそんな疑問が頭をよぎった。
ってか、あれ?ここどこだろう。目を開けたら、世界が灰色に見える。深夜だからか、人も乗ってないし、……そういえばいつ電車に乗ったんだっけ?
窓から景色は見えない。真っ暗。トンネルかな。それにしては静かだけど。
……それより寒い。なんか濡れてるし。ビシャビシャだ。
でもなぜか、ここに来た記憶がない。
そう言えば、何か大事なことを忘れているような気がする。
「寒いね」
「そうだねぇ、寒いな……って……」
あ、良かった。隣の席に私の大切な人がいた。
安堵で涙がでそう。
「なんだよ、泣くなよ……」
「だってぇ……」
「いつまでも子どもだな」
ポンと、彼は私の頭に手を乗せる。それが嬉しくて。また泣いちゃうんだ。
「寒そうだな」
「でも大丈夫だよ……島川君がいるから……」
「はは、照れるな、この野郎」
「やんっ」
島川君は私を闇から救いだしてくれた人。
引きこもりのダメ人間な私を救いだしてくれた。
そんな素晴らしい私の彼氏。自慢できる私の彼氏。
あぁ、そうだった。私達は二人で逃げようとしたんだ。あんな現実から。
そしてどこか遠くで、結婚して、幸せに暮らそうとしていたんだ。良かった。夢じゃなかった。
『終点~終点~お降りの際は足元に……』
「とりあえず、降りようか。さぁ、手を握って」
「うん!」
--同日。桜町警察署
「……さん……梶……さん」
「あぁ…………?」
「起きてくださいよ!梶原警部!」
「んぉ、川上か……寝てたんか俺……」
「そっすよ。つーか連日連夜働き詰めで家にも帰ってないんでしょ。体壊すし、奥さんに愛想尽かされますよ」
「あぁ……そうだな。とりあえず悪いが、コーヒー買ってきてくれ」
「うっす!」
川上はダッシュで刑事部屋を出た。時刻は深夜1時。確かに仮眠時間にはまだ早いな。
確かに働き詰めなところがあるから少し休みをとらなきゃならん。しかし……
現在追いかけている、ある女子高生の行方。
彼女の彼氏だと思われる『島川』が惨殺死体となってを発見されたあと、彼女はいなくなってしまった。手掛かりはほぼないし、両親も心当たりはないという。
彼女はいわゆる引きこもり。中学、高校といじめを受けていたせいで外に出ることを拒んだ。
そんな彼女が唯一心を許した相手が島川。
しかし、その島川も亡くなった今、彼女に救いの手を差しのべる人間はいなくなった。
両親も心底疲れており、とても娘に声を掛けられるような状態ではなかったのだ。
「……どこいったんだ……頼むから死んでるなよ……」
彼女はきっと何か知っている。
俺は彼女が恐らく犯人であるとも考えている。
俺は真実を知ると同時に彼女も救ってやりたい。
だから、頼むから、死んでるなよ……。
--30分前 ???
「ふへ……ふへはは」
その少女は深夜の砂浜をぶらぶらと歩く。
音楽プレイヤーに差し込んだイヤホンを方耳に。
もう一個はぶら下がっていた。
「良い……音楽だね……」
(そうだね)
「やっと……あの部屋から……出れたね……」
(そうだね)
「ふひは……一緒……だね……」
(そうだね)
「もうこれで……浮気なんか……しないよね……へひ」
(そうだね)
「浮気なんてするから……だよ……ふは……」
(そうだね)
自宅裏を歩いて20分の海。
彼女は血塗れのワンピースで、片手に血塗れの包丁を持って
、歩いてきたのだ。
行方不明から約3日目の深夜。
3日前に、彼女は彼氏の浮気に気付いてしまい、肝試しと称し、誰も行かない山奥の廃屋で、彼氏を刺し殺した。
そして3日後の今日。付き合って1年目の今日まで、彼女は彼氏と過ごしていたのだ。
0時00分になり、彼女は廃屋を飛び出し、なるべく人通りのない道を走りながら海へとたどり着く。
すでに重さのない彼氏を、バッグに詰めて。
「ほら……二人で来た……私が初めてプロポーズした……海……」
(そうだね)
「キレイ……だね」
(そうだね)
「島川君……一緒だよ……」
その後、付近を回っていた警察が音楽プレイヤーを見つけたこと、また海にバッグが浮いていたことから、なんとか彼女の発見に成功する。
しかし、すでに心肺停止状態であり、回復も難しいとみられた。
だが、死亡確認の直前に彼女は一言
「これで一緒」
と呟いた。
これもう少し膨らまなかったかなと後悔しています。
途中まで楽しく書けました。
内容に矛盾が生じるかもしれませんが、気にしないであげてください……
ありがとうございました。
ラブライブよりアイマス派です。