第3話 ギルドと武具屋
「冒険者ギルドアワイン支部へようこ…ってジェジェジェジェイス様っ、どどどどうしてここここんなところにっ」
ジェイス様に続き、僕が冒険者ギルドの扉をくぐったところ
物凄くテンパった女性の声に思わず足を止めた
「……」
ジェイス様は何も言わず、片手を上げると
ただそれだけで女性は落ち着いたようだ
「……失礼しました
あらためて冒険者ギルドアワイン支部へようこそいらっしゃいまひた」
(噛んだ)
「ししし失礼ひまひたっ」
(また)
「ああ、挨拶はもういい
それより仕事を頼む」
再びテンパりだしたお姉さんに
さすがのジェイス様も呆れているようだ
「ひ、ひごとれすかっ」
「この少年の登録を頼む」
「え、あ、はいっ、とうりょくれすねっ」
僕は駄目だと思い
仕方なく口出しすることにした
「すいませんお姉さん
目を瞑って深呼吸」
「えっ?」
「はい、どうぞ」
「え、あ、はい」
何度か深呼吸をしたことで
ようやくお姉さんも落ち着いたようだ
「ほう、やるものだなアキラ」
「ジェイス様、彼の新規登録でよろしいのですね?」
「ああ、頼む
私はスターハ村のことを町長に報告せねばならない
カードが完成したら、武具屋に案内してやってくれ」
「報告、ですか?」
「そうだ
アキラ、私はこれで失礼する
あとは彼女がやってくれるだろう」
そう言ってジェイス様は去って行った
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「あらためてようこそ冒険者ギルドへ
わたしは受け付けをしているティナといいます」
お姉さん…ティナさんは
営業スマイルで接客を始めてくれた
二十歳前後くらいの茶髪のショートで人懐っこい笑顔の女性だ
「僕は明です」
「ではアキラ君
この板に名前を書いて下さい
あ、念のために聞きますが『祝福』は?」
「はい、先日に
と、これでいいですか?」
僕は渡された金属板に名前のみを書いた
この世界では平民に姓はないらしいからだ
しかし、墓標を作った時も思ったが
見たこともないはずの文字を、書くことも読むこともできるのは、なにか不思議な感じがする
「はい、結構です
次はこの部分に血を1滴垂らして下さい」
そう言ってティナさんは、板の真ん中を指差しながら
反対の手で針を渡してきた
僕はその針で指先を刺すと
出てきた血を板に垂らした
「ありがとうございます」
ティナさんは、板を受け取り、部屋の奥に移動し、そしてすぐに戻ってきた
「ギルドカードが完成するまでしばらくかかります
それまで、当ギルドについて説明させていただきます」
「お願いします」
ティナさんから受けた説明は、だいたい次のようなものだった
①冒険者は最初Fランクから始まる
②基本的に自分のランク以下の依頼しか受けられないが、パーティを組めば、メンバーの最低ランクの1つ上までを受けられる
③ランクアップには、現ランクと同ランクの依頼を規定回数達成し、かつ試験を受け、合格しなければならない
④依頼に失敗すると違約金を支払わなければならない
連続で失敗するとランクダウンもあり得る
⑤最低でも月に1つは依頼を受け、達成しなければならない
ただし長期依頼を受けている場合はその限りではない
冒険者の基本的なルールはこんなもので
他にも成人している必要があるとか、犯罪行為の禁止などの当然のルールもあった
そしてギルドカードだが
テンプレ通りのもの凄いオーバーテクノロジーな代物だった
具体的には
①「カード」と言いながら念じるだけで出したり消したりが可能
(つまりなくすことがない)
②名前、クラス、レベル、冒険者ランク、現在受けている依頼等を表示でき、自動更新される
③倒した相手のことが記録される
(モンスターだけでなく人間も)
ちなみに犯罪者は悪漢と表示されるらしい
④預金ができ、カードのみで支払いができる
⑤通信機能がある
(ただし受信のみ、昔流行ったポケベルみたいなもの)
緊急事態の時に使うらしい・
・
・
などと、これだけの機能がありながら
スマホ以下のサイズと、誰がどうやって作ったのか非常に気になる
「完成したようですね」
奥から別の職員が持ってきたカードを、ティナさんが受け取り、僕に渡してくれた
先ほどの金属板がカードになったようだ
「ありがとうございます」
「ではまず、出し消しの確認をお願いします」
「はい、『カード』、『カード』」
僕が念じると、本当にカードが消えたり出現したりした
「うわっ、凄い」
「先ほど説明した通り、出現は手のひらの上に出ますが、消すことは離れた場所でもできます
カードは身分証であり、現金代わりにも使えますので
普段は常に消しておき、身体から離れたらすぐに消す癖をつけておいて下さい」
「わかりました」
「それでは登録料の50Gはどうなさいますか?
後払いもできますが」
「今払います」
僕は銀貨を1枚取り出し、ティナさんに渡した
神様とジェイス様からもらったお金があるので、余裕で払うことができる
「はい、ではお釣りの50Gです」
そしてティナさんはコホンと咳払いをすると
「冒険者登録おめでとうございます
これでアキラ君はFランク冒険者です
依頼を3件達成する事でEランク昇格への試験を受けることができます
あちらに依頼書がありますが、どうなさいますか?」
「約束がありますので、まず武具屋に向かいます」
「そうでしたね、武具屋は2件隣のハンマーが看板の店です」
「ありがとうございます
後でまた来ます、失礼します」
そう言って僕はギルドを後にした
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「おや、アキラ君
待っていましたよ」
「すいません、お待たせしました」
「いえ、仕方のないことです」
武具屋にはヒースクリフさんが僕を待っていた
武具を買うのには、身分証が必要なので早急にカードを作る必要があったのだ
「その小僧がお客さんかい?
一応規則なんでカードを見せてくれ」
「わかりました、『カード』」
僕はカードを出し、店主に見せた
よく見ると彼は、小柄で髭のある典型的なドワーフだった
「アキラ、Fランクで
メインクラスは戦士か
じゃあブレードベアの毛皮でジャケットを作って
爪でナイフを2本作る、でいいか?」
「はい、それでお願いします」
まだ冒険者どころか、武装にすら慣れていない僕には
軽い防具と剣、そして予備武器兼雑用に使うナイフを2本持つのが良いだろうと移動中に決めておいたのだ
「交渉した結果、素材の余りを全てお渡しすることで
無料で加工してくれるそうです
さらに、武器も1つだけ割り引いてくれるそうです」
「えっ?いいんですか?」
「おう、気にするな
この辺じゃブレードベアなんてめったに見ないから
俺としてもありがたいくらいだ
サービスで特製の鞘もつけとくから2日後に取りにこい」
「わかりました、ありがとうございます」
「じゃあメイン武器も選んどけ
自慢じゃないが、業物揃いだぞ」
(自慢してるじゃん)
思わず心の中でツッコミつつ、僕は武器を『鑑定』しながら手に合うものを探した
「お、これは…」
『鋼の剣 攻撃力40
レアリティ アンコモン
スロット1 限界値3
マジックアイテムではないが、優秀な鍛冶職人に作られたため一般より強力な剣』
僕は1振りの剣を手に取った
スロットと限界値というのはよくわからないが
重さも丁度いいし、グリップも手に吸い付くようにしっくりくる
さらに攻撃力も他の武器より上だった
「なかなか目利きじゃねぇか
それはうちの最高の武器だよ
気に入ったぜ、4千Gだが3千にまけてやる」
僕は店主にお金を渡すと、鋼の剣を受け取った
(いいのかなぁ、序盤にこんな武器を手に入れても)
「アキラ君、私たちは町長氏に報告をし、明日の朝にはこの町を発ちます
これでお別れですが、君の冒険者としての成功を願っておきます」
「はい、ありがとうございました、ヒースクリフさん
ジェイス様にもよろしくお伝え下さい」
「はい、それではまたお会いしましょう」
そう言って、ヒースクリフさんは去って行った
僕は店主から引換券を貰って武具屋を後にし
再び冒険者ギルドに入った
そして依頼書を探して
ティナさんのところに持って行った
僕の冒険者としての初仕事である
次回タイトル予告 明の初仕事
用語解説
ドワーフ
ファンタジーでは定番の亜人種
人族より低い身長だが、平均体重は変わらず、男は髭が、女は髪が伸びやすいという特徴もある
手先が器用で頑丈な身体を持ち、酒と仕事(鍛冶、細工など)をこよなく愛する種族
争いは好まないが非常に仲間意識が強いため
同胞のためならどんな相手も恐れず立ち向かう
種族固有スキル
ハードボディ
暗視
クリエイトセンスなど