第48話 意外な再会
ツッコミどころ満載だとおもいますが
勘弁してください
僕は、シーナちゃんをイーヴァまで送った後、再び自宅に戻って台所へと向かい、前々から仕込んでいた瓶の蓋を開け、匂いを嗅いでみる
仄かな酒の匂いと泡が、実用可能だということを知らせてくれる
「さてと、始めるか」
僕は小麦粉に水と塩を加えて捏ね、まとまったところで、瓶の中身を少し加えてさらに捏ね、1次発酵のためにしばらくおいておく
瓶の中身は、レーズンを水に浸け、小麦粉やすり下ろしたジャガイモや希少品の砂糖などを加えてしばらくおいておいたもの、いわゆる『天然酵母』だ
この世界のパンは正直言ってあまりおいしくない
そのためにわざわざ酵母を作ったのだ
「そろそろかな」
温度が低いと発酵しにくいので、温泉の熱が伝わる場所においていたパン種をまな板に叩きつけ、ガス抜きをした後、形を整えて2次発酵させ、石窯に入れて焼き上げる
とりあえず、コッペパン、バターロール、レーズンパンを作ってみた
「うーん、全粒粉だからかな、あまりおいしくないや」
全粒粉には、ブラン(ふすま)が混じっているため、雑味もあるし食感も悪い
「篩掛けをすればある程度は白くなるはずだから、あとで買ってこよう
コッペパンは…パン粉にしてフライを作ろうかな」
ちなみにバターロールとレーズンパンはそこそこの味だった
「酵母ができたから、ピッツァも作れるな
パーティーの料理の予定としては…ピッツァ、魚のフライ、唐揚げ、フライドポテトにポテトチップス、ハンバーグ…よりはミートボールの方がいいかな、それに焼鳥でも作ってみよう
…ハイカロリーな料理ばかりだから、野菜料理もいくつか作った方がいいかな」
僕は、コッペパンをスライスしてまだ熱い石窯の中に入れて乾燥させる
あとで砕いてパン粉にするのだ、砂糖を入れていないので、いいパン粉になるだろう
「フライを作るのなら、これも必須だよね」
今度は酢と卵黄を混ぜ、オリーブオイルを少しずつ加えながらかき混ぜ、マヨネーズを作る
パーティーの日に茹で玉子とピクルスを刻んで加え、タルタルソースも作るつもりだ
「こんなものかな
よし、次は買い物に行こう」
僕は、『ワープ』でストラスへ向かう
ストラスは人が集まるので、いいものを多く売っているからだ
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「そろそろシーナちゃんも終わるころかな」
ストラスでの買い物を終わらせ、イーヴァに飛んで酒を買うと、時刻も午後3時くらいになった
いつものシーナちゃんならそろそろ達成していると思う
(シーナちゃん、聞こえる? 今どこ?)
僕は、『テレトーク』でシーナちゃんに話しかける
『パーティナイズ』で覚えたスキルで、比較的近距離にいる仲間とテレパシーのようなもので会話できるスキルだ
(御主人様、わたしは今冒険者ギルドに向かっています)
(うん、わかった。じゃあ僕も今から向かうから、ギルドで合流しよう)
(わかりました)
冒険者ギルドが見えたところ、丁度反対側からシーナちゃんが走って来た
「御主人様ー」
シーナちゃんは両手にグリーンバードを下げている
相変わらずいい弓の腕をしているみたいだ
「本当にグリーンバードを獲ってきたんだね」
「はいっ、1羽をギルドに納品すれば今日のお仕事は終わりです」
今日は依頼人でなく、ギルドに渡す依頼だったようだ
「じゃあ急いで納品しないとね」
僕たちは、ギルドの扉を開け、中に入る
まだ少し早い時間のため、中には数えるほどしか人はいない
しかし、受付のティアさんと談笑している見覚えある人?に、僕たちの目は釘付けになる
「「ロマリーさん?」」
「ん? おお、アキラ殿、シーナ殿、待ちかねたぞ」
先日出会ったエルフのロマリーさんが、そこにいたのだ
「あら、アキラ君とシーナちゃん、ロマリーさんと知り合いなの?」
「はい、先日知り合いまして、ティアさんこそ知り合いだったんですか?」
「ええ、ロマリーさんも、うちで登録した冒険者だもの。エルフにも冒険者として活動する人は多いのよ」
エルフは魔法や弓の技術が高く、優秀な冒険者になれる素質があるそうだ
「ロマリーさんは、『待ちかねた』と言っていましたよね? 御主人様になにかご用ですか?」
シーナちゃんの質問に、ロマリーさんは胸を張ると
「うむ、先日アキラ殿には多大な迷惑をかけてしまった。だから…」
ロマリーさんは続けて信じられないことを口にした
「アキラ殿の奴隷になりに来たのだ」
その言葉に、僕とシーナちゃんは絶句し、ティアさんは混乱する
「ちょ、ちょっと首輪なしは違法よ!? じ、じゃなくてアキラ君っ、エルフを奴隷にするなんて何を考えているのよ!? 下手すればエルフと戦争よっ!?」
テンパるティアさんだが、一番わけがわからないのは僕の方だった
次回タイトル予告
押し掛け奴隷のエルフさん
用語解説
宝石
高圧下等で結晶化した鉱物の中で、輝く性質を持つものを指す
ユピトアースでの宝石は、特殊な魔力を持つことも多く、宝飾品だけでなく加工されて武具に使われることも多い
例えばロッドやワンドに組み込むと魔法の威力が上がるし、防具に組み込むと魔法防御が上がる
もちろん光を反射して目立つため、防具に組み込む場合は目立たない場所に付けるのが普通
持っている魔力の性質は色によって決まっていることが多く、エメラルドのような緑の宝石は風の、アクアマリンのような青の宝石は水の魔力を持つことが多い
中でもダイヤモンドは複数の魔力を持ち、特にレインボーダイヤは全ての属性を持つため重宝されるが、一つ一つの魔力は弱くなる
ちなみにユピトアースには誕生石や宝石言葉はないが、特別な異性に宝飾品を贈る風習はある




