表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/56

第46話 ドラゴンフライとの死闘

ミイデラゴミムシという虫がいる

へっぴり虫という間抜けな別名があるが、実際には体内で過酸化水素とハイドロキノンという物質を合成し、反応させて100℃を超える高温のガスを作り出し、外敵に吹き付ける恐ろしい能力を持っている


ドラゴンフライも同様の能力を持っているようで、マーガンさんとファーラさんに向けて火炎放射機のように炎を吐き出した


「ぐっ!?」


マーガンさんは盾で自分の顔を、身体全体でファーラさんを庇い、全身に炎を受ける


「生命の力よ、我が仲間たちに祝福を、失われし力と傷つきし身体を癒し、再び立ち上がる活力を与えよ『サークルヒール』」


僕のサークルヒールが2人を回復する

ファーラさんは、咳き込みながらふらついた身体を立て直す、どうやら詠唱中だったことが災いし、熱気を吸い込んでしまっていたらしい


(せめて『鑑定』で弱点がわかれば…)


鑑定ではパラメーターはわかるが、スキル等の特殊能力はわからない

そのパラメーターもAgi(素早さ)と、DEF(防御力)が高いことくらいしかわからない

ただ、火炎放射は自分にもダメージが入るらしく、僅かにHPが下がっている


「くそっ、マジでジリ貧だぜ」


ドラゴンフライは、執拗にファーラさんを狙っている

おそらく、自分を倒せるのが彼女だけだとわかっているのだ

だからといって盾役を増やすと火炎放射を受けてしまう


「こうなったら、シーナちゃんベイクさん、同時に攻撃します

タイミングを合わせてください」


「わかりました」

「それしかないか」


シーナちゃんが『スパイラルショット』を、ベイクさんが『ダブルショット』を同時に放つ

僕はその攻撃にタイミングを合わせて、侍のスキル『紫電』を使う


しかし、ドラゴンフライはこの同時攻撃すらも空中で複雑な軌道を描いて飛び、かわしきったのだ


「これすらもかわすのか」

「やはりファーラに頼るしかねぇ」


この後に放ったファーラさんの炎の魔法と2人の同時攻撃も、あっさりとドラゴンフライはかわしてしまう


「ならば4人で同時に攻撃すれば…いやダメだ」


ベイクさんが作戦を立てるが、すぐに自ら却下する


マーガンさんが攻撃するとファーラさんが無防備になり、僕が攻撃すると魔法が僕に当たる危険がある

回復役の僕が倒れると、それこそ勝ち目がなくなってしまう


「あの複眼がいけない、死角がないからどんな攻撃も察知されてかわされてしまうんだ」


「だからといって複眼とやらを潰そうにも、攻撃が当たらないんじゃどうしようもない」


(ん、待てよ…攻撃が当たらないのは察知されるからだ、ならば察知されない攻撃をすればいい

いや…それだけじゃダメだ、同じ攻撃が何度も通用する相手じゃない)


僕は必死に考える、ようやく見えた可能性に


(おそらく一発は当たる、その一発で動きか視覚を封じるにはどうすれば…

同田貫で羽根を切り落とせるか? いや、おそらく無理だ、ならば眼を潰すしかない、だったら…)


「ファーラさん、エアハンマーをお願いします、それで叩き落としてください

あとは僕がなんとかします」


「おい、エアハンマーは攻撃力がないんだぞ、わかってんのか?」


「マーガン、待って。

アキラ…考えがあるのね?」


ファーラさんは、無言で頷く僕を信じてくれたようだ

「よし、だったらオレたちは牽制だ、行くよ、シーナちゃん」


ベイクさんとシーナちゃんは『ダブルショット』を放つ、ドラゴンフライは4本の矢を今まで通りあっさりとかわすが、僅かに空中で体勢が崩れる


「…大気の鎚となれ『エアハンマー』」


その隙を逃さず、ファーラさんのエアハンマーが、ドラゴンフライの頭に直撃する

さすがのドラゴンフライも、見えない攻撃はかわせなかったようだ、ダメージこそないもののこの戦いで初めて大きく体勢を崩した


「今だ、『オープン』!」

僕はアイテムボックスを開き、中から瓶を取り出し、ドラゴンフライの頭に投げつける


狙い通りに直撃して瓶が割れ、中の液体が複眼にかかって白い煙が上がる


アーミーアントがドロップした酸入りの瓶だ。蟻が落としたアイテムなのに蟻酸ではなく、硫酸に近い強酸が入っていたのだ


再び飛び上がったドラゴンフライだが、目に見えてバランスを崩している


「よくやったぜ、アキラ」

「…『炎の嵐』」


酸で視覚を封じられたドラゴンフライに炎の魔法が直撃して羽根が炎に包まれ、そのまま落下する


「これで…終わりだっ!!」

僕は落下したドラゴンフライの頭部と胸部の境目に同田貫を突き立て、頭部を切り落とす


長時間の死闘の末、ようやくドラゴンフライは光の粒子となって消えていった




■□■□■□■□




「…疲れたわね」


「そうですね」


「アキラ君がいてくれて本当に良かったよ」


僕たちはさすがに疲れて座り込んでいる


「いくらなんでもこれ以上は進みませんよね?」


「…当然。異論はないわよね?」


僕とベイクさんとマーガンさんが頷く


シーナちゃんはドラゴンフライが消えた場所を調べていて、ドロップアイテムを拾って来てくれた


「御主人様、拾って来ましたよ」


シーナちゃんは、鑑定が使える僕の前にアイテムを並べる

ちなみにボスモンスターは複数のアイテムを落とすのだが、今回は魔核1つ、アイテム3つのようだ


「1つ目は…サングラスですね、特殊能力はありません。

単に強い光から目を守るだけです」


「…ハズレね」


「2つ目は…おっ、『炎のタリスマン』ですね

炎の魔法の攻撃力が上昇します。ただし、水魔法の攻撃力が下がりますね」


「これは当たりだな、ファーラは水魔法は使えないからな」


3つ目は武器のようだ

トンボの羽根のように透明で薄い刀身に黒い筋が入っているショートソードだ


『インビジブルスラッシャー

レアリティ レア

攻撃力 40


スロット① インビジブル

(MPを10消費することで、刀身が不可視となる)

消去不可

② 不和2


限界値 3』


…かなりの当たり武器のようだ

次回タイトル予告

パーティの準備


用語解説

透明


光をよく通し、透き通っていること


よく勘違いされているが、透明には『見えない』という意味はない

ただ、光の透過が高ければ結果見えなくなるということはある


英訳すると一目瞭然で、

透明=transparent

見えない=invisibleとなる


透明が見えないと勘違いされているのは、H・G・ウェルズの小説『The Invisible Man(見えない人間)』を、『透明人間』と訳したからであると言われている


ユピトアースには、インビジブルというスキルがあり、光魔法と武器のスキル、そしてユニークスキルに同名のスキルがある


全て他者の目から見えなくなる効果である

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ