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第43話 レアアイテムの入手

かなり時間が空いてしまいました

待っていた読者の皆さまにはご迷惑をおかけしました

迷宮内のモンスターは、基本的に全て肉食か吸血性である

目の前にいるソースタッグも、クワガタのくせに樹液ではなく血を吸うし、草食の芋虫やダンゴムシも迷宮内では肉食に変わる

まあ、地球には肉食の芋虫もいるらしいが


その中でも数少ない例外がジュエルインセクトであり、タマムシのように輝く甲殻を持ち、ホタルのように何も食べず、黒光りする『G』のように素早い

そして必ず他のモンスターと共に現れ、自身を囮として探索者たちを引き寄せながら仲間のモンスターに襲わせる習性がある

しかも性質の悪いことに、魔力を感じると即逃げ出すため、非常に倒し難いのだ


「ベイク、アキラ、ジュエルインセクトは任せたぞ」

「任された」

「わかりました」


「…シーナは私を守りながらマーガンのフォロー」


「はい」


やはり彼らは凄い、一瞬で最良の判断をする

素早く硬いジュエルインセクトには矢が有効ではないので、僕とベイクさんが向かい、2匹のソースタッグはマーガンさんが引き寄せ、シーナちゃんが牽制する

そして僕たちがジュエルインセクトを倒したらファーラさんが魔法でソースタッグを攻撃する


安全面を考えたら、ジュエルインセクトは無視してソースタッグを倒すのがベストなのだろうが、一攫千金を狙う探索者にとってジュエルインセクトは決して見逃せない獲物なのだろう


某国民的RPGで、危険なモンスターを無視して金属系スライムを攻撃するのと同じようなものか



「くそっ! 速いな」


僕とベイクさんは、ジュエルインセクトを挟み撃ちにしたが、まさに『G』のように素早く動いて攻撃をかわしまくる


体高が低いので、攻撃が突きか斬り下ろしかの2パターンに限られ、それもまたかわされる理由になっている


「こうなったら…一か八かだ」


僕は同田貫を鞘に収め、両手にBBナイフを持つ

リーチを捨てて手数を増やすのがベターだろう


ベイクさんも両手にショートソードを持っているので、2人同時に攻撃すれば有効打を与えられるはずだ


しかし僕の考えは非常に甘かった

攻撃が当たるようにはなったが、甲虫の硬く滑らかでしかも微妙なカーブの外骨殻にはナイフでは効き目が薄いのだ



「ぐはっ、しまった!? 」

「マーガンっ! 」


苦痛の声につい振り向くと、マーガンさんの左足に噛みつくソースタッグの姿があった。脚甲をあっさりと貫き、溢れ出す血を吸っているようだ


「今、治します」

「要らねえ、お前らは急いでそいつを倒せ」


回復魔法を使おうとする僕を、マーガンさんが制止する


「大丈夫、マーガンさんは殺しても死なないよ。それよりオレたちは…」


「ですが、こいつには僕らの攻撃が…

ん、そういえば…」


僕はついさっきのことを思い出した

全く攻撃が通用しなかったゴリラのことを


攻撃が通用しなければ、通用するようにすればいい


「はっ!!」


僕はナイフを鞘に仕舞い、素手になって様子を見る

そしてベイクさんの攻撃を横に跳んでかわし、僅かに動きが鈍ったジュエルインセクトに飛びつき、片方の触角を左手で掴みに行った


「……」


触角に付いた棘が掌に食い込むが、気にせずに勢いを利用してスライディングの要領で下に潜り込み、巴投げを決めてやった


「ベイクさん、今です!

脚を潰して下さい」

「なるほど、わかった!」

ベイクさんは、ひっくり返ったジュエルインセクトの脚の関節に2本のショートソードをそれぞれ突き刺し、中の腱を斬り裂いたようだ


ジュエルインセクトは、反転してなんとか元の体勢に戻ったが、6本中2本の脚を潰されて明らかにスピードが鈍っている


「もらったっ!!」


僕は起き上がると、右足を前に踏み出し、腰を捻りながら抜刀し、その勢いのまま水平に斬りつける


侍のスキル、『居合い』である

納刀状態でしか出せないが、攻撃力、命中、クリティカル率が上昇する


僕の同田貫はジュエルインセクトの殻を斬り裂き、光の粒子に変える


「…風よ集まりて大気の鎚となれ、『エアハンマー』!」


ファーラさんの魔法が、ソースタッグの1匹を吹き飛ばした

ジュエルインセクトが倒れたことで、魔法を気にせず使えるようになったのだ


不可視の鎚に直撃され、吹き飛ばされたソースタッグは、羽根を開いて立て直そうとするが、普段は外羽根に覆われていた柔らかい背中に矢が突き刺さる


「シーナちゃん、ナイス」

シーナちゃんが放った矢のおかげで、羽根が閉じられなくなったソースタッグの背中に突きを決め、そのまま同田貫を上下左右に抉るように動かすと、光の粒子になって消えて行った



「噛みついてるってことは…

逃げられねえってことだろ!!」


マーガンさんは、左足に噛みつくソースタッグを盾で押さえ、バトルアックスを何度も頭部に叩きつける


フォローに行こうとしたがその前に終わり、やはり光の粒子になって消えて行った



■□■□■□■□



「…『ヒール』

大丈夫ですか? マーガンさん」


僕は掌の負傷を治すと、マーガンさんの元へ駆け寄る

「おう、少し痛いが大丈夫だ。だが、こいつがな」


マーガンさんは、壊れた脚甲を僕らに見せた


「…『ヒール』っと、無茶はしないでくださいよ」


「無茶しなかったらジュエルインセクトは倒せねえよ。

おい、なんかいいものを落としたか?」



「…シックルソー(鋸鎌)とソードブレイカーみたいね。…こんなものかしら」

「こっちは凄いぞ! 初めて見たけど、多分レインボーダイヤだ」


「!?」

「マジか!?」


宝石は魔力を秘めているため、アクセサリーだけでなく武具に組み込むこともできる。そのため常に高値で売れるのだが、その中でもレインボーダイヤはかなり高く売れるらしい


「これだけでも来た甲斐があったぜ」


「…それだけじゃないみたいね」


ファーラさんが指差す先を見ると、そこにはいつの間にか宝箱が出現していた


「ドロップトレジャー…

こんな階層で…」


次回タイトル予告

ボスの待つ部屋


用語解説

トライエッジ


アワイン出身の冒険者であり、探索者でもある3人組


風と火の魔法使いのファーラ、弓と短剣を使う盗賊のベイク、斧を使う戦士のマーガンで構成されたチームで、チームワークの優秀さと相手によってスタイルを変える器用さもあり、同ランクではかなりの実力を持っている


もともとは最年長のマーガンがリーダーだったが、ランクが上がるとともに戦局の判断だけでなく、交渉も重要になるためファーラがリーダーを勤めるようになった

マーガン曰く

「でかい家と偉い人は苦手なんだよ」

だそうである



初期設定では、一発キャラであり再登場の予定はなかったが、使いやすい先輩冒険者なので準レギュラー化し、これからもちょくちょく登場する予定

ちなみに名前はαβγが由来である

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