第42話 魔物と宝
投稿が遅れて申し訳ありません
東京出張があったり足を捻挫したり風邪を引いたりといろいろありましたもので
「意外と明るいんですね」
「ああ、壁自体が光ってるんだ、どういう仕組みかはわからんがな」
「…ここの迷宮は比較的楽、真っ暗で松明やランタンが必須の迷宮もある
私達もまだ入ったことはないけど」
僕たち5人は、地下に続く階段を下り、迷宮に入る
通路の高さは約4メートル、幅は約5メートルといったところだろう
壁自体が発光しているのだが、光は弱く、視界はせいぜい7〜8メートルくらいか
「上の階はいいけど、下に行くと暗闇から矢を射って来たりする奴もいるから
油断しないことだね」
僕たちは、ベイクさんの先導のもと、階段そばの扉を無視して通路を進んで行く
その扉の中は、1種の安全地帯で、階段そばに必ず設置されているらしい
(マーカーを設置するのはあの部屋かな)
地図で予習しておいたルートを進み、大きめの扉の前に立つ
「さあ、戦闘の準備はいいかな?」
ベイクさんが声をかけてくる
扉の先、部屋の中のような密室では、よくモンスターが発生するのだそうだ
「シーナちゃん、中の様子はわかる?」
「…わかりません、音がしないので」
「なるほど、じゃあボールワームではなさそうだね」
「便利なやつだな、おい」
ベイクさんは扉の横に、マーガンさんが扉の前に立ち、カウントダウンを初める
「3、2、1、ゼロ!」
ベイクさんが扉を開け、マーガンさんが部屋に飛び込む、そしてベイクさん、僕、ファーラさん、シーナちゃんの順に入っていく
部屋の中にいたのは…
全長2メートルほどもある巨大な緑色の芋虫だった
「Gキャタピラーか、雑魚で良かったぜ」
「キシャーッ!」
芋虫が威嚇音を出す
「オレが引き付けるから
マーガンさんとアキラ君は横から攻撃してくれ
こんな雑魚に魔法や矢を使わせるなよ!」
「まかせな!」
「わかりました」
僕は芋虫の右に、マーガンさんが左に行く
「はっ!!」
僕は同田貫を抜刀し、芋虫を逆袈裟に斬り上げる
胴体に斜めに線が走り、緑色の体液が飛び散るが、不思議なことに体液は虚空に消えていく
「ほう、やるじゃねえかアキラ! 俺も負けちゃいられねえな!」
マーガンさんがバトルアックスをふるい、芋虫の頭を叩き潰す
その一撃で芋虫は絶命し、死体が消滅して何かが残る
「…コアとシルクね、まあこんなものかしら」
芋虫のモンスターだけに絹糸を落とすみたいだ
ちなみに地下に行けば行くほど珍しいものを落とす確率が上がるそうだ
強い者が倒しても珍しいものを落とすという噂もあるが、それは迷信らしい
「…じゃあアキラ、持っていて」
ファーラさんが僕に戦利品を渡してきた
アイテムボックスに仕舞えということだろう
「わかりました」
僕は受け取ってアイテムボックスに入れる
「よし、じゃあ進もうか」
ベイクさんの言葉に、僕たちは再び迷宮を進む
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「さてと、そろそろ階段だぜ」
マーガンさんの言葉に、緩みかけていた気を引き締める
これまではGキャタピラーが3匹、ボールワームが2匹、ポイズンバタフライが1匹(1頭?)出てきて、全てに苦戦せずに勝つことができた
ボールワームは助走をつけて、丸まって転がって来る攻撃しかないので、1度かわすと後が続かない
マーガンさんが床と腹の間にバトルアックスを差し込み、梃子の原理でひっくり返すと、柔らかい腹に攻撃してあっさり終わる
ポイズンバタフライは、ファーラさんの風魔法で毒鱗粉を吹き飛ばし、シーナちゃんの矢が羽を貫いて落下したところをマーガンさんが仕留めていた
「下に降りると、モンスターが増えるんですよね?」
「そうだ、魔物が複数出てくるようになるし、連携してくることもある」
話の間に階段にたどり着き、降りて行く
やはり階段そばにあった安全地帯の扉を無視して、別の扉の方へと進む
「…シーナちゃん?」
「…虫がいます、多分3匹…、種類まではわかりませんが、甲虫のようです」
「本当に便利だな」
「さあ、これからが本番だ
行くよ」
カウントダウンの後、再びさっきのように扉を開けて、マーガンさんを先頭に部屋に飛び込む
そこには1メートル半ほどのクワガタ、【ソースタッグ】が2匹と、それと同じくらいの大きさの、まるで宝石のように輝く外殻を持つ虫が1匹いた
「おっ、【ジュエルインセクト】だ
こいつは絶対に倒すぞ!!」
後で知ったが【ジュエルインセクト】は、宝石を落とす文字通りのお宝モンスターだった
次回タイトル予告
レアアイテムの入手
用語解説
ドロップアイテム
迷宮内での魔物を倒すと、コアと共に落とすアイテムのこと
魔物のレベルが上がるほど、そして倒した者のLuc(幸運)が高いほど希少なものを落とす
何を落とすかは魔物によって決まっていて、見た目や性質に合ったものになることが多い
例えばボールワームは硬化薬や接着剤などを落とし、ソースタッグはソー(鋸)やソードブレイカーという特殊な剣を落とす
ポイズンバタフライに至っては毒薬の他にバタフライナイフを落とすことすらある
これは探索者たちの収入源になっている
また、迷宮内にはいつの間にか宝箱が出現することもあり、ドロップトレジャーと呼ばれることもある
(一般的には単に宝箱と呼ぶことが多い)




