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第41話 迷宮の中へ

「「マーガンの旦那」」


「たしかゴイラのとこのやつらだったか? 何があったんだ? 」


ゴリラの取り巻きABが、マーガンさんに泣きつく


「あのガキがゴイラさんを…」


「あのガキ?

…って、アキラじゃねぇか

お前も来ていたのか」


マーガンさんのセリフに、ファーラさんとベイクさんも出てくる


「本当にアキラ君か、シーナちゃんも」


「…また会ったわね」


「知り合いだったんすか?」


取り巻きの言葉に頷く『トライエッジ』の3人


「で、一体何があったんだ? ゴイラのやつは苦しんでるみたいだが…

まさかアキラにやられたのか? 」


「そうなんです

あのガキはゴイラさんのアドバイスを受けたのに、礼の1つも言わないどころかゴイラさんにあんなことをしたんです」


「…アキラがそんなことを? 」

「あり得ないね」

「あり得んだろ」


僕も前に出て説明する


ゴリラたちに絡まれて、意味のないアドバイスを押し付けられたこと


金銭を要求されたこと


拒否したら殴りかかられたことを


「そりゃあゴイラが悪いじゃねぇか

怪我も自業自得だわ」


「しかも鎧を着けていたのに、素手のアキラ君に負けたのかい? 」


「…それ以前に規約違反

ギルド内で武器を抜いてはならないというのは、ギルドメンバー同士の争いを避けるため

ギルド内で喧嘩を売ったのがゴイラである以上、非がゴイラにあるのは明白」


「そっ、そのガキは嘘をついてるんですよ

どうすればゴイラさんみたいに強くなれるかって、前から相談されてたんですよ


で、今日たまたま会ったからアドバイスしたんですよ、先輩にアドバイスを受けたんだから、お礼をするのは当たり前でしょう? 」


よくもまあ息を吐くように嘘が出てくるものだ


「それこそあり得ないな

アキラ君は癒し手だよ

ディフェンダータイプのゴイラにアドバイスを求めるなんて、絶対にないね」


ベイクさんのセリフにギルド内が騒然となる

癒し手は教会に所属していることが多く、冒険者や探索者になることは珍しいのだ


そしてディフェンダーことタンクは、味方の癒し手や魔法使いを守るのが仕事で

癒し手は状況を把握しながら味方を回復させたり、指示を出したり、場合によっては雑魚を攻撃したりすることもあるポジションであり

それぞれ役割が大きく違い、取り巻きの言葉から説得力を奪うのには十分だった


「嘘だろ? あのガキが癒し手? 」

「いや、トライエッジがそう言ってるんだ、本当なんだろう」

「癒し手がいれば、どれだけ楽になるかわからんからな」

「あいつは今フリーなのか? 」


ギャラリーが騒いでいる

これもまた当然で、癒し手がいれば、回復アイテムの持ち込みが最小限ですみ、迷宮内での行動時間も伸びる

その分多くの戦利品を持ち帰られるので、戦利品で暮らす探索者にとって癒し手は是非とも欲しいクラスなのだ


「嘘だっ! そんなガキが癒し手のはずがない

新人のガキと常連の俺たちのどっちを信じるんですか? 」


「周りの反応で明らかだと思いますけどね

僕が癒し手である証明は簡単ですよ」


僕は、ゴリラに『メガヒール』をかける

実は、『メガヒール』でも骨折は治る


ただし、痕は残るしリハビリも必要だ。そして…


「ぐあっ! いでっ、いででででっ!? 」


魔法で骨、筋肉、腱、神経を繋げるため、物凄く痛いのだ

戦闘時ならば気が張っているので、また『復活』ならば高速で元の状態に戻るため、痛みはあまりないのだが


「あれ? な、治った? 」

驚いているゴリラに、僕は声をかける


「骨折は治しましたけど、組織が変な風に癒着している可能性があります

痛み止めと回復のポーションを飲みながらリハビリしてください」


「あ、ああ、わかった」


素直に頷くゴリラ

さすがに状況はわかったのだろう


「相変わらず規格外のやつだな、アキラは」


「全くだよ

で、探索者ギルドにいるってことは、迷宮に挑戦しに来たってことでいいのかな? 」


「はい、そうですよ

それと『トライエッジ』の皆さんを探していました」

「…私達を? 」


疑問を浮かべた3人に説明する

ファーラさんには家購入の時にお世話になったこと

そして、予定よりも余ったお金であるものを作ったこと

だから、我が家で開く祝いのパーティーに招きたいことを


「…あるもの? 」


「はい、今はまだ秘密ですが、期待してもらっていいですよ」


「そう言えばファーラが言ってたね、アキラ君が大きな家を買ったって」


「そうか、しかし俺はパスだ、でかい家に入るとケツが痒くなるんだよ」


「…マーガンはでかいくせに細かい男」


「うるせえよ」


ファーラさんとマーガンさんの掛け合いも、恒例になってきたな


「面白そうだね、オレとファーラは参加するよ、楽しみだな」


「…で、アキラたちはこれからどうするの? 」


「とりあえず2人で1階層を回って見ようと思ってました」


「…そう、だったら私達と迷宮に入らない? 」


「いいんですか? 」


「…かまわない、私達もメンバーを探していた

アキラ達なら文句はない」


迷宮内は狭いため、大人数だと互いの動きを阻害してしまう

もちろん少なすぎても危険なため、パーティは6人が理想と言われている

ボス部屋は何故か6人までしか入れないのも理由の1つである


そのため、少人数のチームだと、他のチームと組んで攻略することもよくあるのだそうだ


ちなみにその場合、5人パーティが普通らしい

理由は、5はともかく6の割り算が出来る人が少ないので、分配で混乱するからだそうだ


「戦利品の分配は、売却金を人数分で割った金額になるのが、うちのルールだよ

どうしても欲しいものがあったら要相談ね」


「…端数が出た場合は、多数決で一番活躍した人を決めてその人に渡す

…異論はある? 」


「ありません、よろしくお願いします」


臨時の5人パーティができてしまった




■□■□■□■□




僕たちは、迷宮入り口にある門に並んでいる


中でかち合うのを防ぐため、前のパーティが入ってから5分後に次が入る決まりになっている


「アキラ君たちは迷宮は初めてなんだろう?

何か質問はあるかい? 」

「そうですね、やはりモンスターの強さでしょうか」


「なるほどね、迷宮内の魔物は、魔法で作られた存在なんだ。だから恐れを知らないし、瀕死になっても戦意を失わない

そこが一番の注意点だね

上の階層ならば、強さ自体はさほどじゃないけどね」


「…同じ魔物でも、下に行くほど強くなる

見た目で油断は禁物」


「厄介な特殊能力をもつやつもいる、1階ならポイズンバタフライがヤバい

麻痺させられたら、俺たちでも全滅の可能性がある

ま、ファーラとシーナがいるし、癒し手もいるからな、期待してるぜ」


「次のパーティ、来ていいぞ」


門の前の2人の戦士が声をかけてきた

彼らは門番ゲートキーパーといい、迷宮内に入る探索者たちをチェックしている

また、迷宮内からモンスターが出てきた場合、命懸けで止める義務があるそうだ


「カードを見せろ

…よし、問題なし」


「あの砂時計の砂が落ちきったら入っていいぞ」


僕たちは、用意されていた6脚の椅子に座る

まだ4分ほど余裕があるようだ


「…アキラだったら、どういう隊列で行く? 」


「え? そうですね

まず前衛に盗賊のベイクさんとシーナちゃんで罠探知

次が僕とマーガンさんで、モンスターが出たら前衛に移動

殿しんがりはファーラさんで…」


「…却下」


「少しは考えているようだが、まだまだだな」


「後ろから魔物が来たら、どうするつもりだったのかな? 」


僕は言葉に詰まる

確かにそうだ


「前衛の罠探知は1人、この場合はベイクが適任

万一があっても被害は1人ですむ」


「その通り、アキラ君とマーガンとファーラが中衛

回復魔法が飛ばせるアキラ君の位置は確定、前後どちらから魔物が出たとしても、マーガンさんが対応できる」


「で、後衛にシーナだ、兎獣人だから耳がいいんだろう?

後ろの敵にいち早く反応できる」


「…なるほど、勉強になります」


メンバーの能力を把握し、最善を尽くす

これはまだ僕にはできないことだ


「…時間」


ファーラさんの言葉に砂時計を見ると、砂が落ちきるところだった


僕たちは立ち上がり、迷宮入り口へ進む


地下へ続く階段の先には、一体何が待っているのだろうか

次回タイトル予告

魔物と宝



スタイルクラス


職業ではなく、特定の状況に置いて、どのような役割を持つかの俗称

戦争時や迷宮内で使われることが多い


回復役はそのままヒーラーと呼ばれる

例え癒し手の上位の侍祭アコライト司祭ビショップ聖騎士パラディンであってもヒーラーと呼ばれる


他にも、味方を守りながら魔法を使うフォローをする戦士をディフェンダーと呼び

攻撃を主体とする戦士をたアタッカーと呼ぶなど

誰が聞いてもわかりやすいのが特徴である


魔法使いは、攻撃魔法主体ならばキャスターと呼び

支援主体ならばバファーと呼び

両方できる場合は賢者セージと呼ぶ

ちなみにセージは、かつては万能オールラウンダーと呼ばれていたが、長く呼びにくいためにセージと呼ばれるようになった


このように時とともに変化することもあるため、ディフェンダーをタンクと呼ぶことになる可能性もある


また、アイテムボックス持ちは呼び方が変わり

迷宮内では運びキャリー

戦争時は箱持ち(ボクサー)と呼ぶ(この世界にはボクシングが存在しない)


主人公のように複数のスタイルをこなせる者であっても、呼び方は1つが普通である

(主人公は専らヒーラーと呼ばれる)

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