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第38話 チェトナの里のエルフ

「シーナちゃん、脱いで」

「ええええっ!? 」


僕たちがこんな会話をしているのには、当然の理由がある

数分前に起こったトラブルのせいだ


この役目を今の僕がするわけにはいかない





■□■□■□■□




「よし、これで8匹目だ」


「御主人様、凄いです

わたしはまだ2匹なのに」


僕らは釣りをしている

イーヴァ近くの森を横切って流れるチェトナ川に棲む、リバーレディという魚を釣ってくるのが今回受けた依頼だ


リバーレディは、鮎とヤマメを合わせたような魚で、警戒心が強いのだが、雑食性のため、虫を餌にすることで釣ることができる


友釣りは魚体が傷み、味が落ちるので、虫で釣れるのはありがたい


「これで10匹になりましたね

依頼達成になりますけど、どうなさいますか? 」


「せっかくだから、もう少し釣っていこうか

塩焼きにして食べよう」


「はい、わかりました」


僕はさらに1匹を釣り上げる

警戒心の強いリバーレディをあっさり釣る僕に、シーナちゃんが驚いているが、実は種がある


スキル『気配探知』だ

アクティブスキルなので、MPは消費するものの、探知できる範囲は水中にも及び、どこに獲物がいるのかがわかるので

あとはそこの上流に餌付きの釣り針を投げ込み、獲物の場所に流すだけの簡単なお仕事だ


ただし、魚の種類まではわからないので、外道(目当ての魚以外を表す釣り用語)も多く釣っている



「結構釣れましたね

2人では食べきれませんが、どうしましょうか? 」


「3匹ずつ塩焼きにして

あとは干物にしようか」


保存食はいくらあっても困らない

出汁用に焼き干しにしてもいいかもしれない


「そうですね

では『ワープ』をお願いします」


「いや、せっかくだから

ここで食べよう

自然の中で食べるのもいいものだよ」


僕たちは枯れ木を集め、『着火ティンダー』の魔法で焚き火をおこす


そしてはらわたをとり、串に刺して塩をまぶしたリバーレディを、火の周りに刺して焼く


魚の焼ける香ばしい香りが漂い、十分火が通ったところで食事にする


「御主人様、美味しいです」


「そうだね、こういうのもいいね」


釣りたての魚をその場で塩焼きにして食べる

日本では贅沢な行為だったが、この世界でも珍しい行為だろう


「ご馳走様でした

美味しかったです、御主人様」


「はい、お粗末様でした

じゃあそろそろ帰ろうか」

「はい、わかりま…!?

御主人様、何かが…

いえ、誰かが流されてきています」


「なんだって!? 」


僕は、再び『気配探知』を発動させる


確かに誰かが流されてきている

それも小さい生命反応

子供が流されているようだ


「いけない、シーナちゃん

子供みたいだ」



僕は、そう言うやいなや上着を脱ぎ、川に飛び込む

そして流されてきた子供の背後から近づき、左手を子供の左脇を通して胸を抱えるようにつかむ


前からつかむと、抱きつかれて2人とも危険だからだ

そのまま引っ張るように泳いで岸までたどり着く


「御主人様、大丈夫ですか? 」


「わからない、水を飲んでいるみたいだ

危険かもしれない」


僕はそう言うと、子供を横向きに寝せる

そして胸に手を当てて心音を、顔の前に手をかざして呼吸を確かめる


「心臓は動いてる、息も止まってない

ならば…」


僕は『ヒール』をかける

子供の体力が回復し、口から水を吐き出した


「よし、水を吐いた

助かるよ」


「良かったです」


「だけど、体温が下がってるな

シーナちゃん、脱いで」

「ええええっ!? 」


僕はアイテムボックスからマントを取り出して、シーナちゃんに渡す


「その子はこのままじゃ危ない

体温で温めないといけないんだ

僕は薪を探して来るから」

「…えっ?

あ、そういう意味でしたか

わたしてっきり…」


シーナちゃんは何か勘違いしていたらしいが、時間が惜しいので

僕は上着を着ながら森の中へと急ぐ

濡れた下半身が気持ち悪いが、仕方がない




■□■□■□■□




「シーナちゃん、その子の様子はどう? 」


「大丈夫だと思います

寝息も安定していますし」

僕のマントにくるまり、頭だけを出したシーナちゃんが答える


「それならよかった」


念のため、鑑定してみたのだが


【レニーナ 16歳

エルフ レベル 0

HP 9/10 睡眠中


チェトナの里に住むエルフの少女

・】


と出たので、直に目を覚ますだろう

しかし、いろいろ突っ込みたいこともある


一見7〜8歳の幼女に見えるが、16歳

まあ、エルフは長生きする分成長が遅いそうだから、妥当かもしれないが


というより、何よりも突っ込みたいのはエルフだということだろう


「どうしてエルフが流されて来たのでしょうか? 」


「多分、夕立だね」


僕が上流側の空、山の方を指差すと、積乱雲がある


急に降った雨で川が溢れ、流されて来たのだろう


「この子も不運でしたね」


「そうでもないよ

川が溢れたおかげで、川底にぶつからなくてすんだんだと思うよ

怪我一つなかったのは、不幸中の幸いだったよ」


「あ、御主人様

この子が…」


シーナちゃんの懐がもぞもぞと動き、マントの合わせ目からエルフ幼女が顔を出す

周りをきょろきょろと見回しているところをみると、現状を理解していないようだ


「おはよう、お嬢ちゃん

お名前は? 」


「…レニはレニだよ

お姉ちゃんはレニーナって言ってるけど」


「そう、じゃあレニちゃん

川に落ちたのは覚えてる?

僕たちのところに流されて来たんだよ」


その言葉に、恐怖を思い出したのだろう

僕に背を向けてシーナちゃんに抱きついた


「大丈夫よ、御主人様が助けてくださったから

ここは川じゃないでしょ? 」


シーナちゃんの言葉に、ようやく落ち着いてくれたらしい


「お兄ちゃん、お姉ちゃん

助けてくれてありがとう」


「どういたしまして」


「とりあえず家に連れて行こう

僕がお粥を作るから、シーナちゃんはその子を温泉に入れてあげて」


回復魔法で体力は一時的に回復したが、あくまでも応急処置に過ぎない

体力を本当に回復させるには、食事と休息の必要があるのだ


「実は僕とシーナちゃん…そこのお姉ちゃんは仲間同士なんだ

レニちゃんも仲間になってくれるかな? 」


傍目から見ると、かどわかしているように見えるが、仕方がない

パーティに加わらないと『ワープ』が効かないのだ


「うん、レニも仲間になるよ! 」


「よし、じゃあいくよ

…2つの点よ、時間と空間を超えて1つとなれ、『ワープ』」


次の瞬間、僕ら3人の姿がその場所から消えた

次回タイトル予告

誤解の果て


用語解説

職人クラフトマン


材料を加工して、別の物を造り出す者

この世界では、戦士や魔法使いとおなじ職業であり、メインクラスまたはサポートクラスに設定する


鍛冶師や細工師、料理人などが存在する


特徴は、自動修得スキルの『経験値変換』であり、戦闘を行わなくても経験値を得ることができ、レベルも上昇する


この作品では、鍛冶師のオレーグ、料理人のユーリ、大工のモルドなどが登場している


職人 (肉体的技能)


自動修得スキル 経験値変換(物造りをするだけで経験値がもらえる)



L1 Dex上昇


L2 素材知識


L3 Str上昇


L4 職人技能修得ポイント−1


L5 素材の目利き


L6 Min上昇


L7 Dex大幅上昇


L8 HP上昇


L9 メインクラスが職人時、修得経験値2倍


L10 職人技能修得ポイント−2


以上のように、全てのスキルがパッシブスキルである

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