閑話 その頃のアリシア
【ユニークスキル
誰もが1つだけ持っている特殊スキル
覚醒条件は個人で違い、発現せずに一生を終える者も少なくない】
「……」
私、アリシア・プライムガルドは、セントラルキャッスルの地下にある書庫で、スキルについて調べている
未だ祝福を受けていず、スキルを使用できない私だが、調べることはできる
まして私は王族なので、極秘クラスの書物も閲覧できるのだ
「…やはり、間違いないようですね」
ユニークスキルの定義は、かつて『知恵と知識の神オルテス』に仕える巫女が、神から直接授かった知識なので、間違いないはずだが
現実には複数のユニークスキルを持つ者がいて
定義内容と矛盾するのだ
それに対する仮説は、
『1つのユニークスキルに複数の効果がある』
『実は定義自体が間違っている』
の2つがあり、未だに結論は出ていない
しかし、先日出会った少年の言葉により、その疑問は解決する
神に気に入られた者が修得可能になる『ギフトスキル』、彼はそう言っていた
確かに、複数のユニークスキルを持つとされる者は、記録上聖職者が多かった
また、ユニークスキルの最大の特徴は、スキル自体が成長することだが、成長しないユニークスキルを持つ者も少なくなかった
これは、ユニークスキルではなく、ギフトスキルだったと仮定すれば説明がつく
「あの人は…アキラさんは一体何者なのでしょうか…? 」
見習いとはいえ、近衛騎士候補だった者たちを倒したブレードベアの群れをも倒す剣技を持ち
上級回復魔法を使いこなし
アイテムボックスどころか『ワープ』という便利すぎる移動スキルまで持っていた上に、件の知識まである
勇者を目指しているという目標が、大言壮語に聞こえなかったほどの才能の持ち主だった
「…うふふっ」
そんな少年が、私の騎士になってくれると約束してくれた
お姉様やお兄様はもちろん
国王であるお父様ですら、彼に匹敵する騎士は持っていないだろう
嬉しさが込み上げ、思わず笑みがこぼれる
しかし本当に何者なのか?
という疑問に思考がループする
彼は、神に聞いたと言っていた
これは、神の声を聞いたということであり、『侍祭』のクラスチェンジ条件を満たしたということでもある
どんなに優れた才能を持っていても、神の声を聞けずに侍祭になれなかった者も少なくない
「…まさか
『神々に愛されし者』?
いえ、それこそあり得ません」
『神々に愛されし者』
複数の神の加護を受け、世界を変えるほどの知恵と力を持つという
伝説どころか神話クラスの存在
「あり得ませんが…
もし本当ならば…
アキラさんは神々にも愛されているのですね」
この時の私は、自分の思考でありながら
『にも』の意味に気づいていなかった
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「あら、アリシア
また調べものですか? 」
「はい、リリアお姉様
スキルについて調べたいことがありましたので」
書庫から出て自分の部屋に向かう私に
姉にして、この国の王位継承権第1位を持つ
『リリアーナ・ミリア・プライムガルド』様が声をかける
ただし、クラスが巫女なので、王位は継がずにセントキャッスル内にある神殿に入ることが決まっている
この場合、名前が洗礼名であるミリアで呼ばれるため、リリアーナと呼べるのは今だけである
「そうですか
焦らないことです、私もルーファスも祝福を受けたのは17歳でした
あなたはまだ16歳、ディランが特別なのですよ」
ディランというのは私たちの腹違いの弟である
私よりも一月ほど年下だが、15歳になってすぐに祝福を受けたので、既に騎士となっている
だからこそお義母様が暴走したのだろう
ディランを王位につけるため、私たちを暗殺しようとしたのだ
もっとも、アキラさんのおかげで阻止されて、計画がお父様に知られ
侯爵家出身だったお義母様は、死刑こそ免れたものの庶民扱いとなり、実家に還されて事実上の幽閉生活
ディランは庶子扱いとなって王位継承権を無くした
お義母様にとって、これ程の罰はないだろう
ディラン本人は継承権が無くなったことで、騎士として生きていけることになり、逆に喜んでいたことも皮肉である
「ご心配なく、お姉様
私はディラン以上の規格外を知っていますから」
私は微笑んで礼をし、呆気にとられたお姉様を置いて自分の部屋に向かう
ディランは確かに凄く、おそらくブレードベアとの一騎打ちにも勝てるだろう
しかし、回復魔法も使えないし、アイテムボックスも持っていない
アキラさんとは比べものにならないだろう
(そんな人が私の騎士…
早くもう一度会いたい)
自分の頬が紅く染まっていることに、私は気づかない
次回タイトル予告
温泉の完成
おまけショート
シーナ「御主人様、今日はゆっくりお休みください」
明「いや、もう治ってるから僕も働くよ」
シーナ「いけません、あんなひどい怪我をなさっていたのですから
今日明日は休んでいただきます」
明「いや、『復活』は完全治療なんだから…」
シーナ「駄目です、御自愛ください」
明「…シーナちゃんって、僕の奴隷じゃなかったっけ? 」
シーナ「御主人様、お食事ができました
はい、あーん」
明「…」
シーナ「御主人様、お湯を持って来ました
お体をお拭きしますので、お脱ぎください」
明「……」
シーナ「御主人様、ベッドを…」
明「…もう勘弁してくれー! 」
その頃のアリシア
アリシア「…あら?
なんでしょうか、今の殺意は…」
リリアーナ「アリシア、怖いですよ」




