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第35話 山賊たちの終焉

再び殺人があります

「馬鹿かこのガキは

アイテムボックス持ちなら隠しておけばいいものを」とでも思っているんだろうな


山賊たちの顔を見れば、既に勝利を確信しているのだろう

僕を侮っていることが感じ取れる


だから、腰の後ろに装備しているナイフを外していないことにすら気づいていない

もっとも、さっき死んだ頭も気づかなかったのだが、武器でなくて生活必需品とでも思っていたのかもしれない


「よし、そこでいい

アイテムボックス持ちのお前には、できれば仲間になって欲しかったが、お頭を殺したお前を生かしておいたら山賊団として示しがつかない

悪いが、死んでもらうぞ」


山賊たちは、僕を囲もうと移動を始めた

シーナちゃんを人質にしている1人を除いて


囲いが完成し、山賊たちが武器を構えるが、やはり僕を侮っているので、僕の口が動いていたことにすら気づいていない


「…1つとなれ、『ワープ』」


詠唱が完成し、僕とシーナちゃんが消え、先ほど武器を置いた場所に移動する

山賊の頭を倒したことでレベルが20になり、マーカーが増えたので、さっきの場所に設置しておいたのだ


『ワープ』は便利だが、制約も多い

MP消費が激しく、特定場所にしか移動できない

マーカー設置も解除もその場所に行かなければならない

そして、敵に身体を掴まれていると転移できないのだ

つまり、シーナちゃんを担ぎ上げたままだったらお手上げだったのだが、地面に下ろしてくれたので、ワープで転移可能になったのだ


「消えた? 」

「馬鹿な、どこに行った? 」

「兎娘も消えたぞ、どうなってやがる」

「あそこだ、いつの間に移動しやがった」


転移した僕は、ナイフでシーナちゃんを縛ったロープを切りながら、回復魔法の詠唱をする


「汝の身体を蝕む毒を消し去れ、『ディテクトポイズン』」


『ディテクトポイズン』は、ほぼ全ての状態異常を治療できる『キュア』の下位互換で、毒による異常にのみ効果があるのだが、『ディテクトポイズン』にもメリットはある

消費MPが少ない、詠唱が短い、そして精神集中が要らず別の行動ができるのだ

「…よし、シーナちゃん、動ける? 」


「はい、大丈夫です」


僕は目の前の剣を拾って装備し、シーナちゃんは矢筒を右肩に掛け、左手に弓を持つ


「こっちは風上だ、もう毒は流せない

さあ反撃開始だ」


「はいっ! 」




■□■□■□■□



自分たちに絶対有利だったはずの状況を、あっさり覆された山賊たちは呆けている


アイテムボックスだけでなく、回復魔法まで使用し

しかもどうやって移動したのかすらわからないこともあるのだろう


だが、戦場での混乱は致命的だ

僕は、単独でいる山賊、さっきシーナちゃんを人質にしていた男に突撃し、袈裟懸けにする

シーナちゃんは、僕を囲んでいた山賊たちに向けて矢を放つ

矢は正確に眉間を捉え、山賊は一撃で絶命する

いわゆるヘッドショットというやつだ


「あと7人だね」


「兎に2人向かえ、弓は接近戦に弱い

俺らはガキに向かうぞ、囲んじまえば兎も弓は使い難くなる」


頭のいい山賊もいるようだ、本来なら完璧な作戦だろう


しかし、シーナちゃんは足を曲げ、一気に伸ばして跳躍する

兎獣人の種族スキル『ハイジャンプ』だ

一気に2メートル近くも跳び、上から矢を2本同時に放つ

弓術スキル『ダブルショット』で放たれた矢は、1人にはかわされたが、もう1人に命中し、腹部に刺さる

致命傷ではないが、戦闘続行は不可能だろう


「御主人様にあんなひどいことをしたあなたたちを

わたしは絶対に許しません! 」



一方、5人で僕を囲もうとした山賊だが、当然たった5人では1人1人の間隔はかなり開いてしまう


ならば、と僕は囲みが完成する前に突撃し山賊の1人に突きをくり出す

剣先は正確に山賊の喉に突き刺さり、一撃で絶命する


さらに、囲みが完成した瞬間に『ワープ』を再び使用し、囲みから脱出するとともに、転移場所近くにいた山賊に背後から突きを決める


「こ、こいつ瞬間移動のスキルを持ってやが…があっ! 」


セリフが終わる前に、山賊が倒れる

いつの間にかシーナちゃんは、向かって来た山賊を撃退し、サポートをしてくれたようだ


「これで2対2かな」


「くそっ、こいつをくらいやがれ! 」


山賊は、勇者の弓を構えて矢を放つが、10メートル以上離れた僕らには届かない


「その弓は御主人様に頂いた大切なものです

返してください」


シーナちゃんの『スパイラルショット』が、山賊を正確に捉え一撃で絶命させる

「ひっ、ひいっ」


最後に残った山賊が、恐怖のあまり逃げ出す


「逃がしません」


「待って、シーナちゃん、殺さないで」


「えっ? 」


戸惑うシーナちゃんだったが


「山賊がたった11人とは思えない

アジトに案内させよう」


という言葉に納得してくれた


マーカーを解除し、僕たちの武器を回収して

逃げた山賊を追いかける


山道を1時間ほど走ると、丸太を立てて壁にした砦のような場所があり、山賊はそこに入って行った


「どうやらあそこがアジトみたいだね」


「はい、御主人様、どうしますか? 」


「さすがに2人では無理だろうから

ギルドとジェイス様に報告しよう

きっとなんとかしてくれるよ」


「ジェイス様? 」


そういえばシーナちゃんは知らないんだった


「ストライヴァ家の御子息だよ

今はイーヴァに居られるはずだけど」


「……」


シーナちゃんが呆けている

まあ、一冒険者が貴族と知り合いなのも珍しいのだろうが





■□■□■□■□




「なんだと!?

山賊のアジトを発見しただと!? 」


『ワープ』でイーヴァに飛んだ僕たちは、ドレークさんに報告する


「よくやった、その山賊は人数こそ少ないが、厄介なスキルを持つやつがいて

被害が大きかったんだよ」

なるほど、山の中でのハイドボディは、地味だが凶悪なスキルだ

だが、もう頭は倒したし

防衛戦では盗賊のスキルはさほど役には立たない

山賊もこれで終わりだろう


「よし、ティア

お前はストライヴァ家に伝えてこい

それとアキラ、俺をストラスに連れて行け」


「はい、ってストラスにですか? 」


えっ? なんでストラス?

次回タイトル予告

ギルドマスターの実力


次回の用語解説は休みます



用語解説

回復魔法の適用範囲


回復魔法には同じような効果でも、効く効かないがある


具体例


ディテクトポイズン

毒による状態異常にのみ有効


キュア

ほぼ全ての状態異常を治療できるが、呪いや石化は治せない




ヒール系

怪我や体力を回復させる

傷痕は残る


リザレクション

身体の欠損も治療できる

体力は回復しない

傷痕も残らない


また、消費MPが決まっておらず、欠損部位が多ければ多いほど、時間が経てば経つほど消費が多くなる

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