第33話 最大の危機
日刊ランキング最高7位
月刊ランキング最高10位
10日前はランキング外だったはずですが
嬉しい反面プレッシャーを感じてます
気楽に書けなくなりそうで
パーティーの翌朝、僕は朝食を作っている
麦で作る粥、オートミールだ
昨夜は豪華な料理だったので、今朝はシンプルな料理が良いだろう
と言っても、とある目的で多めに購入していたレーズンで甘味を付け、余った昨夜の富貴鳥を軽く炙って添えている
シーナちゃんに言わせれば、こんな料理を食べられる奴隷はいないそうだ
2人で朝食を食べた後、僕らはストラスに向かう
酒瓶と手紙をギルドに提出すれば、晴れて僕はCランクだ
「じゃあ、行こうか
シーナちゃん」
「はいっ」
■□■□■□■□
「すいません、Cランク試験の荷物を持って来ました」
ストラスに到着した僕らは、冒険者ギルドの窓口に酒瓶を提出する
「えっ? Cランク試験ですか?
試験官が同行しているはずですが… 」
「そのことですが、これをギルドマスターに提出しろと言われています」
僕は、ドレークさんからの手紙を窓口の人に渡す
「…なるほど、移動スキル持ちですか」
この試験は、乗り物は使用できないが、自身のスキルでの移動は認められている
風魔法の『フライ』を使用して合格する人もいるそうだし、その場合は当然試験官と離れることになるので、窓口の人も慣れているのだろう
少し待つと、窓口にいた受付嬢が戻って来た
「ギルドマスターがお会いになるそうです」
受付嬢に案内された部屋に行くと、そこにはクールビューティと言うにふさわしい女性が待っていた
見た目は30歳くらいの美人なのだが、雰囲気が歴戦の戦士を彷彿とさせている
短めの髪に化粧気のない顔もあって、まるで抜き身の刃のような印象がある
壁に複数の弓が掛かっているところをみると、シーナちゃんと同じ弓使いのようだ
しかし…どこかで見た顔のような気がする
「君がアキラ君か、ドレークからの手紙は読ませてもらった
その若さでアイテムボックス持ちで、移動スキルも持っている
おまけに癒し手だとは…
正直信じられないが、わざわざ手紙で伝えるくらいだから、事実なのだろうな」
「はい、間違いありません」
「そうか、ならば昇格試験は文句なしに合格だ
ストラス冒険者ギルドのギルドマスター、ナディアの名において
冒険者アキラのCへのランクアップを認める
後で手続きをしておいてくれ」
「ありがとうございます」
「しかし、ストラスとイーヴァを一瞬で移動可能
しかも自分だけでなく、他人も連れて行けるとはな
娘たちが言っていた通り…
いや、それ以上の規格外の新人だな、君は」
この人はナディアさんというらしいが、今の一言が気になって尋ねてみる
「娘ですか? 」
「ん? ああ、知らなかったのか?
ティアとティナの母親だぞ、私は」
「……は? 」
母親? 30歳くらいにしか見えないこの女性が?
若づくりにも程がある
ある意味ファーラさんよりも年齢不詳だ
「そうか、冒険者を引退してからもう20年にもなるのだな
月日が経つのは早いものだ」
義理の母かとも思ったのだが、顔も似ているからティアさんたちの実母で間違いないだろう
20年前に引退し、現在でも現役のギルドマスターを勤めるほどの実力を持っている
一体年齢はいくつなのだろう?
エルフの血でも混ざっているのだろうか
「と、そうだ
すまないが、1つ指名依頼を受けてくれないか? 」
「…え? 指名依頼ですか? 」
呆けていた僕に、ナディアさんが話しかけてくる
「うむ、知っての通り
ここストラスには迷宮がある
だから、ポーションなどの回復アイテムが常に不足しているのだ
君に頼みたいのは、イーヴァ近くの山に生えている
ヒールグラスの納品だ」
ヒールグラスというのは、その名の通り回復作用のある草で
薬の材料になり、山へ行けば珍しくはないものだが、傷みが早い上になぜか栽培できないため、需要の割りには値段の安い草である
しかし、この辺りでは採れないので、当然値段は高くなる
本来ならば大変な仕事だが、アイテムボックス持ちでワープ持ちの僕ならむしろ容易な仕事だ
「わかりました、受けますよ」
「そうか、感謝する
では依頼書を準備しておくから
ギルドカードの更新後に受け取ってくれ」
「はい、わかりました」
■□■□■□■□
僕たちは、モルドさんたちドワーフの職人と、1人の魔法使いを家に『ワープ』で届けると、そのままイーヴァに飛んだ
その魔法使いは、ジョンさんといって一見冴えない中年男性に見えるが、地属性魔法の使い手で、さらにアイテムボックス持ちなので、建設業に欠かせない人だそうだ
その凄腕の魔法使いも、僕の『ワープ』には驚いていたが
僕は、ドレークさんとティアさんに合格を伝え、山へ向かう
ブレードベアも、例の事件の後しばらくは狂暴化していたが、現在では落ち着いているそうだ
それどころか冒険者たちに多く狩られたため、むしろ被害が減っているらしい
「じゃあシーナちゃん
危険が減っているのならば、新しい武器に慣れておこうか」
アイテムボックスから勇者の弓をシーナちゃんに渡し、僕は同田貫を装備する
スキルレベルをいくら上げても、練習を繰り返さなければ真価は発揮されない
スキルレベルが下の敵相手でも、経験不足から不覚を取るのは珍しくないのだ
「あ、御主人様、蛇がいます」
「うん、わかってる
そこの枝だよね? 」
木の枝の上から飛びかかってきた茶色の毒蛇を、僕は同田貫で迎撃する
間合いが鋼の剣よりも少し短いため、切っ先がかする感じになったが、それでも同田貫は蛇の頭を身体から斬り落とした
「うーん、まだ間合いの感覚が掴めないなあ」
そう言えば、姉さんが
「日本刀は引き斬るもの
そのためには刃の根元を相手に当てる必要がある
踏み出す勇気を持て」
と、言っていた
「それでも斬れるこの刀は凄いんだろうけど、まだまだ修行が足りないな」
「では、今度はわたしが練習しますね」
シーナちゃんが、見つけた野兎に矢を放つ
命中すると思った瞬間、急に矢の速度が落ち、地面に転がる
「…この弓も間合いが掴めません
ショートボウなので使いやすいのですが、デメリットが大きいですね」
「そうだね、だけど迷宮ではメリットの方が大きいと思うから、頑張って慣れようか」
「はい、わかりま…し…た…」
「シーナちゃん? どうしたの!? 」
急に呂律が回らなくなり、倒れるシーナちゃんを抱き止める
「!?」
僕も、一瞬だが不調を感じる、スキル『インデュア』により無効化されたが、どうやら麻痺のステータス異常を受けたようだ
「ぐっ、『鑑定』」
目の前の空気を鑑定してみると、無味無臭無色の麻痺毒が混ざっている
どうやら風上から流されたようだ
「おいおい、なんでお前は平気なんだよ、小僧」
そんな僕たちの前に現れたのは…
布で鼻と口を覆った10人もの山賊たちだった
次回タイトル予告
憤怒の封印
用語解説
エルフ
ファンタジーでは定番の森の住人
長く尖った耳とややつり上がった目が特徴
白い肌に金髪のエルフ(ライトエルフ)
褐色の肌に銀髪のダークエルフ
そして謎に包まれたハイエルフ(エンシェントエルフ)がいる
非力だが、魔法の才能に恵まれ、亜人種の中で最も長い寿命を持つ
森の中に集落を築いているが、人との交流があり、冒険者となるエルフもいる
性格は誇り高く、嘘偽りを嫌う
また、ファンタジー作品ではドワーフとの仲が悪いことが多いが、ユピトアースではそんなことはなく、むしろショーティとの仲が悪い
ちなみにハーフエルフも存在し、寿命は母親に依存する
(母親がエルフならばエルフの寿命、人間ならば人間の寿命)
イーヴァの近くの山の森にも集落がある




