表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/56

第24話 湖畔の港町ストラス

「おい、起きろ

交代だ、アキラ」


僕を揺さぶりながらかけられた声に、僕は目を覚ます


「あ、交代の時間ですか

マーガンさん」


僕は背筋を伸ばし、両手で頬を叩いて眠気を飛ばした


外に出ると、意外なほど明るい

2つの月のおかげだろう

1つは西に沈みかけていて、もう1つもあと2時間ほどで沈むだろうが


「アキラ君は夜の見張りは初めてかい?」


僕がやぐらのような見張り台に登ると、先に登っていたベイクさんが話しかけてきた


「はい、そうです

今日は運が良かったですよ」


「そうだね、こんなに明るい夜はあまり無いからね


暗い夜にブラックウルフなんて出て来たら

本当に見えないからね」


「ブラックウルフだと柵は越えて来ませんよね

むしろ山賊なんかが嫌ですが」


「山賊はこの辺りにはいないよ

住む場所がないからね」


…などのような会話をしながら見張りをしていると、時間も過ぎ、出発の時間になった


「ご苦労様です

今日もよろしくお願いしますよ」


依頼主の言葉に、僕ら冒険者は返事をする


食事の後、早速出発し、ストラスを目指す

今日の昼あたりに到着する予定だそうだ




■□■□■□■□




昨日と同じ配置でストラスへと進む僕たちだったが

異変は1時間後にやって来た

どうやら、ベイクさんの台詞がフラグだったらしい


「御主人様、何かいます」

頭上からのシーナちゃんの声に、僕は気を引き締める


「何かって?」


「わかりません

ですが、さっきから茂みが風もないのに揺れたりしています

何かが馬車に並走しているみたいです」


「まずいな、オレも確認した

多分ブラックウルフだ

もう少し進むと岩場に出る

そこで襲うつもりだ」


ベイクさんも気付いたようだ


「…馬車を止めて

隠れる場所が多い岩場ではこちらが不利

ここで迎え打つ」


僕が、馬車の中の依頼主に状況とファーラさんの言葉を伝えると、同意して前の馬車を止めた


「駄目です

前進して前の馬車と並んで下さい」


「…アキラの言う通り

進んで」


前の馬車に合わせて止まる後ろの馬車に、僕が指示を出し、ファーラさんが同意する


御者は言われるまま前進させ、2台の馬車が並び、4頭の馬が横1列になる



「マーガンさん、馬を守るので前に出て下さい」


「おう、任せろ

いい判断だアキラ」


後ろからバトルアックスを持ったマーガンさんが合流し

ファーラさんが風魔法『フライ』で馬車の屋根に昇る

これでフォーメーションは完成した


「じゃあ、戦闘開始といこうか」


ベイクさんが、合図をして矢を放つ

矢は茂みの中に消え、獣の悲鳴があがる


こちらが気付いていることに気付いたのだろう

30頭を超える黒い狼が姿を現す


「やっぱりブラックウルフか

夜行性のくせにご苦労なこった」


「多分昨夜から狙っていたんでしょう

意外と賢いですね」


野営地には柵もあるし、馬は馬小屋で休んでいた

この状態では襲うことが難しいので、わざわざ有利な場所に移動するのを待っていたのだろう


「アキラ、ジョージ!

俺たちの仕事は防衛だ

攻撃は上の連中に任せて、馬には一匹たりとも近付けんじゃねえぞ」


「「はい!」」


「…私は右前を担当する

ベイクは左前をお願い」


「任せてくれ」


「…シーナは後ろ

当てることより、牽制重視

射ちまくって動きを止めて」


「わかりました」


下ではマーガンさんの、上ではファーラさんの指示が出る


ブラックウルフとの戦いの始まりである



■□■□■□■□




「オラァ!」


マーガンさんのバトルアックスが、飛びかかってきたブラックウルフを両断する


「はっ!」


僕の鋼の剣が、ブラックウルフの喉を突く


「来るなっ!」


ジョージさんが、槍を左右に振ってブラックウルフを牽制し、動きが止まったところを上からベイクさんが狙い射ちにする


ファーラさんは、目視しづらい風魔法『エアスラッシュ』で離れたところのブラックウルフを攻撃し、10匹近くを戦闘不能にしている


意外と活躍しているのはシーナちゃんで、5匹以上を既に仕留めている

レベルとステータスは低いが、『弓術』レベル10は伊達ではない



「いい調子ですね」


「油断は禁物だぞジョージ」


「うわあっ!?」


ジョージさんの台詞がフラグだったのか、ジョージさんは2匹同時に飛びかかられ、1匹は防いだものの、左腕にもう1匹が噛みついたのだ


「ちっ!?

アキラ、フォロー頼む」


「わかりました」


僕は、剣を正眼に構えつつ詠唱を始める


その間にマーガンさんはジョージさんに噛みついているブラックウルフを、斧で横薙ぎにしてジョージさんを救出する


ジョージさんが解放されたところを、『気配察知』で感じとり、僕は『サークルヒール』を発動する


『ヒール』や『メガヒール』では、対象にとる必要がある

すなわち、この状況で後ろを向く必要があるため、範囲内の味方全てを回復する『サークルヒール』を使ったのだ


「すまない、助かった」


さらに、両手にナイフを持ったベイクさんが屋根から飛び降りて参戦し

ブラックウルフの群れは、その後あっさりと全滅した


「いやあ、お見事でしたね」


戦闘終了を確認して依頼主が馬車から出てきた


「ブラックウルフの群れを、こうも見事に倒すとは

評価は期待しておいて下さいね」


僕は、ブラックウルフの死体をアイテムボックスに回収すると

僕たちは再びストラスを目指して出発した


そして件の岩場に着いたところで


「見えたぞ、あれがストラスだ」


屋根の上のベイクさんが指差した方を見ると

そこには湖のほとりにある大きな港町が見えた


一瞬湾かと思ったが、細い海峡で海と区切られている

いわゆるラグーンというやつだろう


波の穏やかな湖沿いに町を造り、貿易船を浮かべる


そして海峡を越えて外洋に出る仕組みだ


「よーし、見えはしたが、まだ遠い

油断はするなよ」


御者の言葉に気を引き締め、僕らはストラスに向かって行った

次回予告

タイトル予告

刀と侍


次回は用語解説をお休みし、とある企画を行います


ただし、前のようなリクエストはありません



用語解説

ブラックウルフ


その名の通りの黒い狼で、少し小型

1匹ではチャージボアにも劣る程度の強さだが、20〜50匹にもなる群れを作り、襲ってくるため、大変危険な獣である


黒い毛皮と身の小ささは夜の闇で真価を発揮し、夜に平原を歩くことは自殺行為とも言われている


肉は臭みがあるが、燻製にして食べることもあり

毛皮は防具にはならないが、防寒具としての需要はある


討伐には最低Dランクが必要とされている

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ