第14話 敗北からの再起
サブタイトルを前回の予告から少し変えました
予告は予定、予定は未定ということで大目にみて下さい
「………あれ?
ここは………」
僕はベッドの上で目を覚ました
「そうだ、確かジェイス様と試合をして……」
「目が覚めたのですね
調子はどうですか?」
「エルミア様?」
エルミア様の言葉に、僕は身体の状態をチェックする
「大丈夫のようです
頭に衝撃を受けた記憶があるのですが」
「ジェイス様の『シールドストライク』ですね
アキラさんは盾での一撃を受けて気絶したのですよ」
「なるほど、わかりました」
シールドストライクは、文字通り盾で殴るスキルで、盾技能の数少ない攻撃スキルらしい
僕が勝利を確信して油断した瞬間に食らってしまったようだ
「ジェイス様は…
いえ、あの場にいた皆さん全てが驚いていましたよ
まだ若いのにジェイス様と互角に戦えることに」
「互角ではありませんよ
結局一発も入れられませんでしたから」
それどころか一発でKOされたのだ
僕の完敗である
「頭に打撃を受けたにしては
妙に頭がすっきりしているんですが
これはエルミア様が?」
「はい、私はアコライトですから
回復には自信があるんですよ」
「癒し手とはどう違うんでしょうか?」
「アコライトになるには
癒し手として修行をするだけでなく
神の声を聞く必要があるのです
こればかりは修行ではどうにもなりませんが
私はたまたま、愛と美の神『ティアレイ』様のお声を聞くことができましたので
アコライトとして隣の教会で働いています」
「そうなのですね」
(ん?神の声を聞く?)
と、そこまで言ったところで部屋の扉が開き、ジェイス様とテムスさんが入って来た
「アキラ、目が覚めたそうだな」
「はい、ご心配をおかけしました」
「うむ、想像以上の強さだった
私も思わず殺す気で戦ってしまった。許してくれ」
「いいえ、むしろ光栄です
僕みたいな者に全力を出して頂いたのですから」
ジェイス様は急に真面目な顔になると
「だが、アキラ
お前が何故負けたかわかるか?」
「はい、実力不足です」
「違う、実力自体は互角だった
敗因は心の問題だ」
「心の問題…ですか?」
「そうだ、お前には絶対に勝つという気迫
相手を殺してでも倒すという覚悟が足りなかったのだ」
「………」
それはそうだろう
試合で相手を殺すというのはおかしいし
なによりジェイス様は恩人で、敵だとは思えない
「わかっている、試合だったのだからな
ましてお前は冒険者だ
勝つことよりも死なないことが求められることもわかっている」
「でしたら…」
「冒険者の任務には護衛もあるはずだ
その時はどうする?
油断して護衛も含めて死ぬのか?」
「あ…」
僕はようやく気付いた
平和な日本とアワインにいたことで忘れていたが
ここイーヴァには人が集まり、大金が動く
ならば犯罪者も集まるということであり、町の外には山賊もいる
冒険者を続けるならば、いずれ人を殺すことになるかもしれないのだ
「わかったようだな」
「はい、覚悟が足りませんでした」
「そうだ、心構えがあれば最後の油断もなかった
シールドストライクを右腕で防いでいたら
負けていたのは私のほうだ」
「ありがとうございました」
ジェイス様は表情を緩めると
「一番簡単に覚悟を決めることは
大切な人をつくることだ」
「えっ?」
「大切な人がいれば油断することはない
守るために全力を尽くすようになる
今すぐとは言わないが、なるべく早くつくったほうがいい」
ジェイス様は、どうやら家族を亡くした僕のためにこの試合を用意したようだ
本当にいい人だ
「それはそうと、最後のあの動きはなんだ?
私の受け流しを読んでいたのだろう?
どうすればそんなことができる?」
「ああ、あれはジェイス様の左足を見ていました
僕の攻撃を防いでも、盾自体が邪魔をしてあのままでは僕に攻撃できませんでした
ですから盾で受け流すか押し返すかを左足の動きで判断しました」
「なるほど、左足か
確かにあの時は左足を引いた
押し返す場合は引かずに力を入れるな」
そんな話をした後依頼書にサインをもらい、僕は冒険者ギルドに帰っていった
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「あらアキラ君お帰りなさい
意外と時間がかかったわね」
「あ、ティ…アさん
いろいろありまして」
間違ってティナさんと言いそうになった
「今妹と間違えそうになったでしょ?
いろいろって?」
「ジェイス様と試合をすることになりまして
負けちゃいましたけど」
「当たり前よ
あの人はBランクでもあっさり倒しちゃうんだから
うちのギルドでも勝てるのはドレイクさんとフレッドさんくらいよ」
フレッドさんというのは槍を使うBランクの冒険者らしい
ティアさんと話をしながら依頼達成の手続きをし
お金を振り込んでもらう
「この辺りの地形はどうなってますか?」
「アキラ君は東門から入ったのよね?
ならば南は穀倉地帯になっていて田畑が広がっているわ
柵があってその外は草原でブラックウルフやトライデントディアーなんかが出るわ」
ちなみに草原に出るトライデントディアーは群れをつくるそうだ
「北は見ればわかるけど山ね
ブレードベアやラピッドラビットがいるわよ」
ラピッドラビットというのは逃げ足に特化した兎だそうで、弓でも仕止めるのが難しいそうだ
ただし、罠には弱いらしいが
「西は王都やストラスに続く街道になってるわ
街道から少し北に行くと湿地帯になってて、いろんな薬草が採取できるわよ」
ストラスというのはストライヴァ子爵家の本拠で海沿いの町だそうだ
「なるほど、よくわかりました
では薬草採取の依頼を受けることにします」
「あら、いいの?
そこにはグリーンアナコンダがいるのよ
毒はないけど大きな蛇よ」
「大丈夫です
ジェイス様曰く、今の僕ならブレードベアにも勝てるそうですから」
僕は、薬草の種類をチェックし、色と形を頭に叩き込んでから湿地帯に向かう
そこで運命の出会いをすることを、僕はまだ知らない
次回予告
タイトル ブレードベアの群れ
用語解説はやらず、プロローグ1の後書きに書いた、企画を行います
用語解説
名前
この世界では、一般人には姓がないのが普通だが
区別のために出身を表す『ダ』を出身地の前に付けて姓のように使うことがある
具体例としてスターハ村出身(という設定)の明の場合
アキラ・ダ・スターハ となる
姓を持つ貴族の場合は
個人名・姓と名乗るのが一般的で、ミドルネームは名乗らない
ジェイスの場合は
ジェイス・ストライヴァと名乗るのが普通
ちなみにミドルネームは、教会から付けてもらう『洗礼名』や先祖や英雄にあやかって付けるもので、王族や代々続く貴族が付ける
また、貴族を表す『フォン』というものはこの世界には存在しない
洗礼名を持ち、かつ教会で名乗る場合のみ
個人名・ミドルネーム・姓と名乗る
(ジェイスのミドルネーム『ジャック』は祖先の名前なので、彼は教会でもジェイス・ストライヴァと名乗る)
王族も貴族と同じように名乗るが、姓は無く国名を姓の代わりとする
例として、現在明がいるプライムガルド王国の王族の場合
アリシア・グレース・プライムガルド
ルーファス・クロード・プライムガルド
となる
ちなみに王族のミドルネームは全て洗礼名である




