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第13話 騎士の実力

「どうしてこんなことに……」


僕は依頼品の蜂蜜や果実酒、燻製肉などを台所横の食料庫に収納した後、鍛練場に向かっている


貴族様と試合をして勝つわけにもいかないし、かといって負けるのも嫌である


まあ、『鑑定』を使ってみたところ、レベルはジェイス様が上で、ステータスは僕が上だ(タレントスキルの影響で)

ただ、鑑定ではどんなスキルを持っているかまではわからない

ジェイス様のメインクラス『騎士』が、どれ程の強さなのかは闘ってみるまでわからないのだ


「そう不安そうな顔をするな

その年でアイテムボックスを持っているし、こんなに早くDランクにまでなったのだ

お前には才能があるんだ」

「…そうでしょうか?

(そりゃ才能はありますよ

タレントって才能って意味ですから)」


どうやらこの世界の人たちにスキルポイントという概念はないらしい

ポイント自体は存在するが、「こんなスキルを取りたい」と無意識に思うことでポイントを消費し、修行と実践をすることで修得するのだ


そのため、『祝福』直後はスキルレベルが上がり易く、伸び悩みと言われる時期まで修行するのが一般的らしい


僕に言わせれば単にポイントを使い切ったから、スキルレベルが上がらなくなっただけなのだが


「着いたぞ、ここが鍛練場だ」


鍛練場は土床の広い場所で、数人の兵士が訓練をしていた


真ん中はならされて平らだったが、周りは敢えて凹凸をつけられている

実戦では足場の悪い場所で戦う場合があるからだろう

ジェイス様は壁に向かい、片手用のブロードソードとカイトシールドというそこそこの大きさの盾を手に取った

もちろん訓練用だから刃引いてあるが、当たりどころによっては命に関わるだろう


「………」


僕も普段使っている鋼の剣に近い剣を選んだ

少し短い感じがするが、仕方ないだろう


「よし、中央に来い

エルミアもいるから怪我をしてもすぐに治してもらえる

安心して全力を出せ、私も全力で行く」


呼び捨てにされたことでエルミアさんの頬が赤く染まる

おそらくそういう関係なのだろう


僕はますます塞がれていく逃げ道に気落ちして行く一方だが



「わかっているとは思うが

試合や決闘において手加減をすることは、相手に対する侮辱でしかない

そんなことはするな」


どうやらこれから試合が始まることに気づいたのだろう

兵士たちが訓練を中断して集まって来た


「小僧ー頑張れよー

あの人は本当に手加減しないからなー」

「勝てねーとは思うが

せめて一太刀浴びせてやれー」

「なーに怪我してもエルミア様が治してくれるさ

だから死ぬ気でやれー」


「………」

(まったく他人事だと思って好き放題…

こうなったらやけだ)


僕は剣先を地面に突き刺し、自分の頬を両手の平で叩き、気合いを入れた


「行きますよ!ジェイス様!」


「ようやくやる気になったか

よし!来い!」


その言葉が合図となり、ジェイス様との試合が始まった




■□■□■□■□



僕は小走りで接近し、剣を上段に構えた

ジェイス様は僕の斬り下ろしを防ごうとして、盾を上に向ける


僕はその動きを見た瞬間、一気に右前に踏み込み、剣を右から左に振るう

ジェイス様は盾が目隠しとなり、僕の動きが見えないはずだ


ガキィン!という金属音が響き、2人が間合いを離す

見えないはずの攻撃をジェイス様はあっさり盾で防いだのだ


「いきなりフェイントか

悪くはないが、素直過ぎるぞ」


「くっ!?」


おそらく斬り下ろしが来ないことで、横に移動してから盾の死角からの攻めが来ることを読まれたのだろう

僕は当たるとは思っていなかったが、驚かせて焦らせる目的で放った一撃を簡単に防がれてしまった


「…やはり隙はない

ならば攻めまくって作るしかないな」


右前に踏み込みながらの斬り下ろし、横薙ぎ、袈裟斬り、逆袈裟、突き、斬り上げとあらゆる攻めを繰り出すが、ジェイス様は全てを盾で防ぎきる


ならばと威力に勝るバスタードソードでの攻撃で、ジェイス様の左手を疲れさせる作戦に出るが、盾の角度を巧みに変えられて力を受け流される


「ならば一か八かだっ!」

今まではジェイス様の剣の前に身を晒さないように、常に右に動いていたが、次は敢えて左に動いてみる


「はっ!!」


ジェイス様の放った突きを右に払い、『カウンター』を発動させてそのまま左袈裟斬りを放つ


「はあっ!!」


「くっ!?」


この攻撃も盾で防がれてしまった

『カウンター』は命中率が上がるだけで、必中なわけではないのだ


「やるなアキラ、想像以上だ」


「…ありがとうございます」


「ならば今度は…

こちらから行くぞ!!」


ジェイス様のその言葉に大気が震え、物凄いプレッシャーが襲ってくる


後で知ったのだが、騎士のスキル、『鼓舞』だ


気合いを入れて叫ぶことで、自分を含めた味方の攻守力を上げ、さらに敵に『威圧』を与える強力スキルだ

もっとも、『インデュア』のおかげで今回は『威圧』は受けなかったが



ジェイス様は盾を構えたまま歩いて近づいて来る

ただそれだけなのにまるで山が向かって来るような感じがする


「はっ!!」


間合いに入ったジェイス様は剣を横薙ぎに払う

僕は剣で受け止めたが、受け流せずに吹き飛ばされる

「うわあっ!?」

(強い!?これが全力か

長期戦は不利だ)


吹き飛ばされながらも、なんとか倒れずに着地し、作戦を練る


(僕の攻撃は全て盾で防がれる

しかも片手剣なのに攻撃力は僕より上だ


ならば…両方封じるしか僕に勝ち目はない)


「ジェイス様!次で終わりにしましょう!」


「最後の一撃か?

よし、勝負だ!」


「うおおっ!!」


僕は再び右前に踏み込みながら剣を振りかぶり、斬り下ろす

ジェイス様はやはり盾で受け止める


(ここだっ

盾は防御には有利だが攻撃には不利だ

受け流すか押し返すか…

どっちだ?)


ここで僕は盾の下に見えるジェイス様の左足を見る


(左足を…引いた

受け流しだっ!)


僕は剣を身体に引き寄せながらさらに踏み込み、右に受け流そうとする盾の動きに合わせて懐に入り、右肩と右肘でジェイス様の盾を押さえた

そして斬りかかってくるジェイス様の剣を僕の剣で受け止めた

これで盾と剣両方を封じた


「もらったっ!」


僕は右足を引き、その勢いを利用して剣を左袈裟に斬り下ろす


しかし僕が勝利を確信した瞬間、僕の右側頭部に衝撃を受け、僕の意識は闇に沈んだ

次回タイトル予告

敗北と再起



用語解説

中級職


完全修得コンプリートまで100ポイント必要な下級職と200ポイント必要な上級職の間の特殊なクラス


完全修得には下級職のように100ポイントでよいが、上級職のようにクラスチェンジするのに条件があるので、便宜上中級職と呼ばれる


例えば騎士は

戦士レベルを6以上にする

剣、槍、盾の合計レベルを8以上にする

高貴な者(貴族、王族など)から叙勲を受けることで転職可能になる


他にも、侍祭アコライトやレンジャー、賢者セージなどがあり、それぞれ条件が違う

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