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第10話 初めての野営

「魔法…か」


アワインの町へと帰って行く僕は、歩きながら魔法について考えていた


さっきの戦いで初めて戦闘中に魔法を使ったが、正直MPを100も消費して実質ダメージ0というのは、かなり無駄な気がする


下級魔法の『火炎球ファイヤーボール』や『弾丸石ストーンバレット』なら4、5発ほど撃てるからだ


タレントスキルの効果で、MPもInt(知力)もかなり上がっているし、スキルポイントも余っているので、今すぐ修得してもいいのだが、僕は敢えて修得していない


理由は2つあり、1つは『詠唱』である。

ソロの僕にとって詠唱時間は完全な隙であり、ホーンラビットやトライデントディアー戦で使おうものなら詠唱中に僕は攻撃されていただろう

さっきの戦いでは、詠唱が必要なくキーワードのみで発動できる生活魔法だったからこそ使えたのだ


かといって、『無詠唱』は僕が修得できるスキルにはない

魔法使いレベル8のスキルに『詠唱短縮』があるくらいだ



もう1つはイメージの問題がある

剣などの肉体的なスキルなら、だいたいの効果はわかるし

回復魔法なら治る、つまり『全快状態に戻る』というイメージで使うことも可能だが、『火炎球』ならどのくらいの火球が出てどのくらいの攻撃力なのかがわからないのだ


下手に使って山火事にでもなったりしたら洒落にならない


もちろん何度か使えばわかるのだろうが、そこまでして実験はしたくない



「…やっぱり仲間ができてからかな」


僕はそんなことを考えながら、歩いていた



■□■□■□■□




「あ、アキラ君戻ったんですね

サウザントソーンはどうなりました?」


「倒しましたよ

確認お願いします」


僕がカードを渡すと、ティナさんはチェックをし


「確認できました

依頼料は現金と振り込みどちらがいいですか?」


「振り込みでお願いします」


「わかりました

…これでアキラ君もDランク試験を受けることができるようになりました

料金は100Gですがどうしますか?」


「もちろん受けますよ

何時からが……!?」



僕がそこまで言ったところで、いきなり奥の部屋に人の気配が現れたのが、僕の『気配察知』に感知された


急に表情を変えた僕にティナさんは


「あら、気づいたの?

心配いらないわよ、もう少しすれば出て来るから」


「出て来る…ですか?」


そんな会話をしていると、さっき気配を感じた部屋のドアが開き、1人の戦士風の男が出て来た


「おぅ、今帰ったぜ

ん?見ない顔だな…

あぁ噂の期待の新人だな、アキラだったか」


(帰った?部屋から出て来たのに?)


「あ、はい僕が明です」


「俺はドレイクだ、大剣のドレイクという2つ名もある

此処アワインとイーヴァの冒険者ギルドのギルドマスターもやっている」


「えっ?2つの町のギルドマスターですか?」


僕の疑問にティナさんは、何故か心底嫌そうな顔をしながら


「ドレイクさんのユニークスキルの効果よ」


「俺のユニークスキルは『テレポート』だ

町から町に瞬間移動できるから、掛け持ちも可能なんだ」


なるほど、だからいきなり気配が現れたのか


「此処にはあまり危険な生き物がいないのも理由の1つね

ギルドマスターに会わないのを不思議に思わなかった?」


「おいティナ、今は仕事が先だ

街道にサウザントソーンが出たんだろ?

『トライエッジ』はイーヴァに帰って来てたから、此処にはE以下しかいないはずだ

場合によっては俺がでる」


「サウザントソーンなら、もうアキラ君が倒したわよ

今その報告を受けたところよ」


「そうなのか?

無駄足だったが早く解決するのに越したことはない

よくやったな、新人」


「ありがとうございます」

僕はお礼を言いながら、改めてドレイクさんを見る

確かに強そうな人だが、武装しているわけでもないのが引っかかる


「どうした?アキラ」


「あ、いえ

『大剣の』ドレイクさんなのに丸腰なのが気になって」


「…セクハラユニークスキルのせいよ」


「おいおいセクハラはないだろうが」


「???」


話が見えない僕にドレイクさんたちが説明する


「俺の『テレポート』で移動できるのは

俺自身だけなんだ」


「そうよ、服や装備品は移動できないのよ」


「そういうことですか」


つまり瞬間移動すると、移動先に全裸のオヤジが現れることになる

確かにセクハラスキルだ

ティナさんの嫌そうな顔の理由もわかる


気配が現れた後、しばらく出てこなかったのは、着替えていたのだろう


つーか、僕のワープの下位互換な気もするが



「さっきの続きだけど、試験はどうするの?」


「…なんかやる気が削がれました

説明だけお願いします」


「はい、Dランク昇格試験の内容は『野営』です

冒険者はどうしても野外で夜を明かすことがあります


アキラ君は二泊三日山で野営をしてもらうのが試験となります」


「ほぅ、もうDランクへの試験か

本当に期待の新人だな」


詳しく条件を聞くと、テントやロープなどは自分で用意する必要があり

薪や飲食物のような消耗品は、薬以外持ち込み不可だそうだ


「……以上です

飲み水の作り方、食料の確保、野生動物からの身の守り方など

かなり難しい試験です」


「わかりました、準備があるので、2日後からでお願いします」


「はい、では2日後の正午までに此処に来てください」


そう言って僕はギルドを後にした



「あれがアキラか、噂以上のようだな」


「そうですね、もうすぐお別れかと思うと寂しいですよ」


「仕方ないだろう

アワインでは、な」


次回タイトル予告

アワインからの旅立ち



用語解説

ユニークスキル


個人が1つだけ持っている特殊なスキル

誰が、どのような効果を持つか、修得条件は何かなどは、神ですらわからない


特徴はポイントが必要なく、条件を満たせば即修得できる

誰でも必ず1つ持っているが、一生修得できない者も多い


最大の特徴は『成長すること』であり、本人の成長や使用回数に合わせて

効果が強力になったり、使い易くなったりする



作品中に出て来た『テレポート』も、移動距離が増える、再使用までの時間いわゆるクールタイムが短くなるなど、パワーアップしている

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