第6話 スターハ村の遺産
予定にはなかったのですが
なぜか説明回
なぜこうなった
「うーん…
どうしようかな?」
僕は指名依頼を受けた後、ヒースクリフさんと再会し、明日の朝スターハ村に行く予定になっていることを聞いた
時間が余ったので、他の依頼を受けようかと思ったのだが、実は指名依頼を受けてしまうと、終わるまで他の依頼を受けられなくなる決まりになっているそうだ
仕方がないので、僕は暇な時間を利用して、あてがわれた宿の部屋で余っているスキルポイントを、どう消費してどのスキルを修得しようか考えている
スターハ村で生活魔法L10を修得して以来、久しぶりにポイントを確認したところ、何故かさらに24ポイントも増えていたのだ
一瞬ユーリさんの依頼を達成したのが理由かとも思ったのだが、それでもランクFの依頼だし一桁が妥当だろう
疑問に思っても、答えてくれる神様はいない
ならば理由は後で考えるとして、今はスキル修得を優先することにした
「やはり癒し手をまずL6にしよう、インデュアは重要だろうし
それと、Agi(敏捷)上昇かな、まだレベル1だし、『当たらなければどうということはない』と言うからなぁ」
実は、ステータスはともかく、単純なスキルの数とレベルでは、その辺のレベル1を遥かにぶっちぎっているのだが
今の僕はまだ気付いていない
「そうかレベル1か…
ならば、パッシブスキルを優先した方が良さそうだ
そのためには……」
アクティブスキルが基本的にMPを消費し、さらに基本的に複数同時使用ができないのに対し
パッシブスキルはMP消費がなく、条件を満たせば効果が重複する
しかし、その分アクティブスキルに比べて、地味で効果が低い欠点もあるのだが
MPを万が一のために回復に使いたい、という事情もあるので
パッシブスキルとステータス上昇を優先して修得することにし
さらに探査をL5まで上げて『気配察知』を修得し、Sen(知覚)上昇もついでに上げて、不意打ちに備えた
ちなみに1つ面白い組み合わせを見つけた
既に修得している戦士の『ウエポンディフェンス』(相手の物理攻撃を、武器でガードしたり、受け流したり、弾いたりして防御するスキル)
と格闘術L4のスキル
『カウンター』(相手の白兵攻撃をガードしたりかわしたりした時に、白兵攻撃で反撃できる
その場合、命中、攻撃力、クリティカル発生率が上昇する
ただし反撃時、アクティブスキルは使用できない)
の組み合わせである
どちらも発動に意思が必要なので一見アクティブスキルに思えるが、実際はパッシブだった
発動条件を満たした時に
発動を任意で行う、がアクティブスキル
自動で発動する、または発動するかしないかを選択する、がパッシブスキルなのだろう
しかもカウンターの説明をよく見ると、白兵攻撃で反撃とあるので、拳や格闘武器でなくても使える
Agi上昇などと合わせてかなり戦闘力が上がっただろう
「これでよし、じゃあ訓練でもしようかな」
僕は部屋から出て、町の外に向かい、剣を振ったり、シャドーボクシングをしたり、瞑想して周りの気配を探ったり、ランニングをしたりして修得したスキルの感覚を掴んだ
気配察知や格闘術は案外あっさり感覚を掴めたが、Agi上昇は意外と難しく、何度も躓いたりしたのだが
暗くなる前にはなんとか全てのスキルの感覚を掴むことができた
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翌朝
「お待ちしていましたよ
アキラ君、早速ですが向かうとしましょう」
「わかりました」
宿のロビーでヒースクリフさんたちは、僕を待っていた
一応約束の15分前には来たのだが、彼らは更に早かったようだ
ヒースクリフさんの他に3人、僕を合わせて5人でスターハ村に向かう
スターハ村への道は狭いため、馬車では行けない
そのため馬で向かうことになっている
もっとも、僕は馬を操れないため、またヒースクリフさんの馬に一緒に乗せてもらったが
そして、別にイベントが発生することもなく
僕らはスターハ村にたどり着いた
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「では食料品を運び出しましょう」
「イエス、サーッ!」
彼ら3人は、アイテムボックスが使える従者たちで、訓練も兼ねているそうだ
僕もアイテムボックスは使えるのだが、まだレベル1なので1種類のアイテムを1個しか入れられないため人数には入らない
「ここが、岩塩採掘場で貯蔵庫も兼ねています」
「なるほど、岩塩が湿気を吸うので乾燥が保たれるのですね」
「そうです、塩と干し肉、燻製肉の他、大豆や胡桃なども保存されています」
「では、ドーハ
あなたのアイテムボックスには入りますか?」
「はい、大丈夫だと思います」
「では任せました、次は…」
次は畑に行き、鍬を使ってジャガイモと人参を掘り出した
大豆などの土の上にできる作物は、短い期間だったにも関わらず鳥に食われてしまっていた
「思ったよりはありませんでしたね」
「植える日を少しずつずらすことで
収穫日を変えていましたから」
「なるほど、そういう植え方もあるのですか」
あとは、鉄製の農具や蔓で作った篭などの民芸品、布団や服などを回収した
汚れているものも、生活魔法の『清浄』を使えば綺麗になる
このまま朽ち果てて行くよりは、リサイクルされたほうが良いだろう
「こんなものでしょう
思ったより早く終わりましたね」
「あ、ヒースクリフさん
思い出したことがあるんです」
「思い出したこと、ですか?」
「はい、実は……」
僕は村長から聞いたことを多少脚色して話した
「ふむ、アキラくんのお祖父様が残したもの、ですか
なるほど、興味があります
ドーハ、テムス、ボグル
手伝ってあげなさい」
「イエス、サー!」
そして僕らは、村長の家の裏へ向かった
「ここです」
村長に聞いた場所にあった大きな石を、4人がかりでどかし、さらに掘ってみると、木製の箱が出てきた
「おや、本当に出てきましたね」
長い間、土の中にあったため、かなり傷んでいた箱を開けてみると、布に包まれた小さなものが出てきた
その布を開いてみると…
「これはミスリルではありませんか!」
なんと、ファンタジーの定番、ミスリル製の腕輪が入っていた
次回タイトル予告 初戦闘と昇格試験
用語解説
依頼
冒険者ギルドに依頼人が依頼書を出し、ギルドが斡旋することで、ギルドに属する冒険者に与えられる仕事
基本的に4種類に別れ
選択依頼 単に依頼とも言われる最も一般的な依頼
冒険者が依頼書をギルド受付に持ってくるだけで契約が成立する
採取、討伐、調査、雑用、運搬、入手など様々なものがある
常時依頼 依頼書の必要ない依頼
人に危害を加える獣や魔物の討伐、薬草や食材となる獣の肉を納品するなど
常に需要があるので、事後報告、納品のみで達成できる
緊急依頼 非常事態が発生した時にギルド自体から依頼されるもの
近くにいる冒険者にカードを使って連絡が行く
基本的に依頼を拒否できない
指名依頼 特定の冒険者を指名して出される依頼
個人だけでなく、特定のクラスやスキル持ちをギルドが指名することもある
依頼拒否はできるが、一度受けてしまうと、終わるまで他の依頼は受けられなくなる
Fランクが指名されることは稀




