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第5話 新装備と指名依頼

僕がこの依頼を受けてから2日がたった


最初の日は夕方からだったので、最終日の今日は夕方まで働けば、丁度2日分の仕事になるという契約だったのだが、せっかくだから夜まで手伝うことにした


只働きになるが、寝室を貸して貰えるので、結果的には得になる


そして、武具屋に注文していた装備が完成する日でもある


「鶏を3羽、それにチャージボアのバラ肉を塊で2つお願い」


「毎度、320G…いや、300でいいよ」


「あら、ありがとうおじさん」


僕とユーリさんは朝市に来ている

保存技術が発達していないこの世界では、毎朝の買い物は食堂において、絶対に欠かせない行為だ


「アキラ君、悪いけど…」

「荷物持ちですよね?

任せてください」


「アキラ君が来てくれて

本当に助かったわ

お父さんの腰もあまりひどくなかったそうだし

明日から働けるそうよ」


ギックリ腰だったのに大丈夫なのかな?

とも思ったが、普通に回復魔法のある世界だ、地球の常識で判断しないほうがいいだろう


そして僕らは、『大地の恵み亭』に戻り、昼からの営業に備えて準備を始めた




■□■□■□■□




「おぅ、待っていたぞ小僧

注文品はこいつだ、引き換え券を渡せ」


「わかりました」


僕は昼の仕事を終え、僅かな休憩の間に武具屋に来ていた


装備品を受け取るためだ


「確かに受け取った、じゃあ装備してみろ

調整がいるなら今のうちに言っておけ」


僕はBBブレードベアジャケットを身に着けてみた

思ったよりも軽く、動き易い

しかも耐刃性が意外と高いそうだ


「良いようだな、次はこいつだ、腰の後ろに着けろ」


そう言うと、店主のオレーグさんは、変わった形の1本の鞘に入った2本のナイフを渡してくれた


普通の鞘付きナイフと違い、なんと両側から抜けるようになっていて、特殊なバネでナイフを固定して落ちないようになっているようだ


抜く時は、柄を持って軽く下げると簡単に抜ける


「凄いですね、便利です」

「気に入ったようだな、そいつを使って早く一流になれよ、新人」


「はい、ありがとうございます」


僕は受け取った後、装備せずに『大地の恵み亭』に帰る、さすがにナイフとはいえ、武器を持って接客するわけにはいかないだろう




■□■□■□■□




3回目ともなれば慣れたもので、スープの具の調理、料理の下ごしらえ、薪の準備を終え、賄いを食べて開店した


「おーい、アキラ

今日のおすすめはなんだ?」

「いいバラ肉があるので

串焼きがおすすめです」


「…じゃあそれを5本と蜂蜜酒を1杯」

「俺には3本、エールもジョッキで1杯だ」


顔見知りになった『トライエッジ』の皆さんの注文を受ける


ファーラさんは意外と大食いで、どこに入っているのか本当に疑問だ


「…アキラ君とも今日でお別れね」


「え?確かに依頼は今日までですけど

お別れと言うのは…」


「ああ、言ってなかったな

俺達は武具の補充に来ただけでな

明日にはアワインを出るんだよ」


「そうだよ、オレーグ氏の武具は優秀だからね

矢1本取っても他とは違うんだよ」


「『武具を買うは命を買う』ですか」


「お、わかってんじゃねぇか」


昔やったゲーム内の格言だが、この世界でも通用するらしい


それに彼らがこの町にいる理由もわかった

考えてみれば、はぐれブレードベアを除けば、危険な獣がほとんどいないこの辺りに、Cランク冒険者がいるはずがないのだ



そんな話をしながら仕事をし、営業時間が終わり、掃除をして1日が終わる



■□■□■□■□



「お疲れ様、アキラ君」


翌朝、ユーリさんから労いの言葉をかけられた


「いえ、僕のほうこそお世話になりました」


「アキラ君は料理もできるし、接客も丁寧だし、本当に助かったわ

指名依頼をしたいくらいよ」


「あはは、それは言い過ぎですよ」


「本気なんだけどね

依頼料はギルドのほうに渡してあるから

これを持っていってね」


ユーリさんは、依頼達成と書かれた紙を渡してくれた

これを冒険者ギルドの受付に持って行けば、依頼達成と見なされ、依頼料を貰えるのだ


よく見ると評価Aと書かれている


「ありがとうございました、ユーリさん

今度は客で来ますね」


「はい、お待ちしております

お客様」


そのセリフにお互い笑い合うと、僕は『大地の恵み亭』を後にした





■□■□■□■□



「ちちちょっとアキラ君、君一体なにしたの?」


「ティナさん、落ち着いてください

何があったんですか?」


達成書を持って来た僕に、ティナさんがテンパりながら話しかけてきた


「今君に指名依頼が来たのよ

しかもあのストライヴァ家から、Fランクの君に

確かにジェイス様と一緒に登録に来たけど

どういうことなのよ」


「よくわかりません

とりあえず依頼書を見せて貰えませんか?」


「え?ああ、そうよね」


そう言って、ティナさんは僕に依頼書を見せてくれた


そこには…


『指名依頼

依頼相手 Fランク冒険者アキラ

依頼主 ジェイス・J・ストライヴァ


依頼内容 スターハ村への道案内

購入済みの保存食の納品等


依頼料 300G』


「なるほど、そういうことですか」


確かにあの時、保存食を残したままだった

それを取りに行くのに、元住人(という設定)の僕を連れて行くのだろう


当然僕はこの依頼を受けることにした


村長の遺言もあって渡りに舟の依頼だからだ

次回タイトル予告 スターハ村の遺産



用語解説

アイテムボックス


生活魔法L10で修得できるスキルで、異空間にアイテムを収納できる


生活魔法の特徴として、詠唱が要らず、MP消費も少ない


「オープン」と言いながら念じ、MPを1消費することで、術者のそばの任意の場所の空間に穴が空き、アイテムを収納でき、入れたアイテムを取り出すこともできる

「クローズ」と言うことで穴を消すことができ、こちらはMPを消費しない


容量は自分のレベルの数だけの種類と数を入れることができる

つまりレベル10の時は、10種類のアイテムを10個まで収納できる


ただし、武具だけは1種類につき1個のみである



蛇足だが、空間魔法にも同じ名前のスキルがあり、こちらはレベルに関係なく100×100収納できる


またギフトスキルには、ほぼ上位互換の「ディメンションストレイジ」も存在する

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