煙
何かを忘れてきた気がする。
何だったかさえ忘れてしまった。
でもそれが無いのに違和感が無い。
それさえも忘れてしまったのかもしれない。
お利口さんを目指して、
優等生を目指して、
遊ぶ時間は少なくなっていった。
死んでしまおうかと初めて思ったのもこのあたりだっただろう。
何か忘れた。
それだけを、忘れずに覚えている。
頭の中で警告灯が光ってる。
永遠の痛みを訴えている。
離脱できないフラットスピンに入った。
いくらエレベータを下げても、
いくらラダーを踏み込んでも。
もう戻れない。
何処で、僕は間違ってしまった?
何処で、道を間違えた?
引き戻せない。
巻き戻せない。
教科書の美談は、ここには存在しないファンタジー。
もう抜け出せない。
もう永遠に、お利口さん。
もう永遠に、優等生。
駅には、ホームドア。
僕みたいな馬鹿が飛び出さないようにだ。
少なくとも死体は残したくないな。
残った連中は僕を見て笑うだろう。
弾けた炭酸の泡のように、
吐き出した煙のように、
消えてなくなってしまいたい。
此処から、この世界から。
※作者は劣等生です。