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第十七話

 部誌への寄稿をすることになったが、あまり時間がないようだった。二週間あればいい方、と言っていたがその通りだ。もう四月は二週目の金曜日、来週は三週目だ。五月の頭に入稿と言っていたので締め切りはそれよりも前、ぶっちゃけ来週の金曜だった。

 そして追い込むように月例会も重なる。いや、分かっていたことだ。

 さて、ネタはどうするか。月例会は「嘘」、文芸部は「出会いと別れ」。少しも重ならないテーマだけに、強引に重ねるよりは素直に二つ出したほうがいいだろう。

 ヘッドフォンの音量を気持ち上げ、紙に向かう。中心に「出会いと別れ」と書いて丸で囲む。ここから連想ゲームの世界だ。ここから何を連想するか。ぱっと思いついた言葉を書いてゆく。

 真っ先に思い浮かんだ「恋愛」という言葉を書いて矢印で引っ張る。自己流のマインドマップで見づらい事この上ないが気にしない。解説書も何も読んだことが無い僕が自然と身につけた物だから、これでいいのだ。

 自己流でのルールは単純。思いついたのを書いて行く。訂正、修正しない。もし間違えたときは新たに書き足してゆく。やがて、線と文字で埋まり、何が書いてあるのか分からなくなったら一旦停止。その中で読める場所、白い場所は思いつかなかった場所だからそこから発展しないので切り捨てる。新しい紙を出して、読める、覚えている物を書き出して行く。それを数度繰り返す。

 三枚もやると大分読みやすくなってくる。そうなると新しい手順に入る。普段から書いていたぶつ切りのエピソード集を印刷してくる。それを見ながら、どの言葉にどのエピソードが入るのか考える。一旦組み立てる。すぐに崩す。また組み立てる、また崩す。また組み立てる、また崩す。その繰り返し。そのうち使われない、使われにくい部品が出てくるのでそれを切り捨てる。

 そうして残った物を置いておいて、漸くプロットらしいものを考える。必要なのは始まりと終わり、掴みとオチ。あらすじはたったの二行。それを起点として再びマインドマップを作る。ぶつ切りのエピソードで組み立てしてみて、何とか形になりそうになったらひとまずそこで止める。

 再び新しい紙に必要な役割を書き出してゆく。新しいエピソードが浮かんだら別紙に書いて行く。ある程度書き出したら、今度は切り詰めてゆく作業。使いそうも無い、あるいは掛け持ちで済まされる役割を消してゆく。絞りきれたら、次は人生を作ってゆく。絶対に書かないような過去も全て書いて行く。こういう設定を書いておくと、後々困らないのだ。

 人物、プロットが完成したら、頭に放り込んで動かしてみる。ここでは収拾が付かないことが多々あるが、それは気にしない。プロット通りに動かない人々を楽しみつつ、沸いてきたオリジナルのエピソードを書き出してゆく。こういうのは大体使われないが、ストックになるので良しとする。

 ここまでやって、一日置いておく。無論、頭の中で遊ばせたままだ。コンポの電源を落とし、ベッドに潜り込む。

 明日は土曜日、半ドンで授業がある。恐らく授業中は聞けないだろうがいいだろう。頭の中で遊ぶ人物たちを尻目に眠りについた。

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