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第十一話

 二人の先輩の言う事を統合すると、こうなる。

 葛生先輩は動物的感性でしか読まない。本質なんて読まない。ただ一点、楽しそうに書かれているか否かだけしか読まない。

 間々田先輩は簡潔すぎて、都賀先輩は複雑すぎて理解できたのはそれだけだった。

「つまりね、私は楽しく書きたいからここに来たんじゃないのかなって思うの」

 結局、葛生先輩の言葉が一番分かりやすかった。その通りだったからだ。

「まぁ、それなら蹴ったのも頷けるか」

 間々田先輩の言葉に都賀先輩も頷いた。なんだかんだで一番は葛生先輩のようだ。例え間々田先輩に引っ付いて腑抜けていようとも、だ。

 暫く四人で歓談していたところで間々田先輩は切り出した。

「そう言えば、まだ着ていない二文がいるんだけどね、岩舟慶介って人。春と同じクラスだっけ?」

「あー、今年は離れましたよ」

 都賀先輩はやや疲れたような顔を作って首を振った。

「春ちゃんは何か聞いてない?」

「いえ、今日は会ってないのでからさっぱりですよ」

「そっか。まぁそいつともう一人含めて二文は合計六人になったのか。ああ、そうそう重要なことを聞いてなかったな。兼部をしていたり、今後その予定はある?」

「いえ、ないですけど……もう一人?」

「文芸部長」

「はい?」

「文芸部長、宇都宮冬子。それがもう一人の正体」

「なな、なんで文芸部の部長が二文に?」

「なんでって、部長が兼部しちゃいけないって話はないしね。別にこちらと確執があるわけでもないし」

「はぁ」

 話は分かるが納得はし難い。割と名誉な文芸部の部長職に納まりながら二文にも所属。どうしてか、と考えて葛生先輩の言葉を思い出して納得した。つまりはそういうことなのだろう。

 僕がここで愚考しても仕方がないし、だからと言っていきなり聞いてみるのもおかしな話だ。いつか機会があったら、と脳の片隅にでも置いておこう。

 結論をつけたところで間々田先輩はようやく葛生先輩を剥がそうとしていた。

「やー」

「何?」

「離れてよ」

「やーだー」

 猫なで声を発する葛生先輩にはやはり慣れない。若干の頭痛を覚えてちらりと都賀先輩を見ると彼女は眉間を押さえていた。僕と一緒なのだろう。本当にあれで高校三年なのだろうか。

「やーが同好会長なんだからしっかりしてよ」

 間々田先輩の正論もどこ吹く風、涼しい顔をしてぐりぐりと顔を間々田先輩の腕にこすり付けていた。きっと前世は猫なのだろう。

「これじゃ使い物にならないな……それじゃ僕から」

 およそ受験学年とは思えない、だらしない声を出している葛生先輩を無視して話が進められる。

「えっと、とりあえず今月の月例会なんだけど、今年は趣向を変えようかと思うんだ」

 相手にされなくなったのか、葛生先輩はおとなしくなっていた。多分寝ているのだろう。

「変えるんですか? そうしたら二文の存在意義が変わりません?」

 都賀先輩はすぐに反応して言葉を返した。

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