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#6
(たくさんあるなあ……)
響子はサークルチラシの掲示板で視線をきょろきょろさせていた。
規模の大きいサークルから活動内容がまるでわからない極小サークルまでありとあらゆる活動がこの学内で行われていることを知る。
楓の言葉を聞いてサークルに入るのもいいかと思ったのだがこれほど数があると返って困ってしまう。
どれくらいその場でいたのか気づくと次の講義の時間が迫っていた。響子は時計を確認してまたあとで考えようと思いその場を後にしようとした。
サークルのチラシが所せましと貼られた掲示板が続く。講義室の方向へ足を進めた時にふと目を引くものがあった。こんなに見ていたのにまるで気づかなかった。
『言葉の雨 文芸サークル メンバー募集中』
手書きのにぎやかなチラシが支配している中決して目立たない無機質なタイプ文字が並んでいた。
気づかなかったのではなくて気づけなかった、あまりにも控えめでこの中ではかすれてしまう。
(・・・…これだ)
響子はそう思った。時間が思ってたより進んでいた。余韻を残したまま、響子は早足で講義室に向かった。