第一話 邪神像と味噌ラーメン
チャッピーに「新しい小説のアイデアください」と言ったら「今ダンジョン配信者が流行ってますよー」、と言われて、「ダンジョン配信者ってなんじゃらほい?」と思って煮詰めていったやつです。AI文書注意。
目覚めたとき、ロックは邪神像を抱いていた。
角が頬に刺さっている。石製だから普通に痛い。寝返りを打つたびに脇腹に当たっていたらしく、左の肋骨のあたりがじんじんしていた。
「……またか」
ベッドの脇の棚には同じものが4体並んでいる。高さ30センチほどの、両手を広げて叫んでいるような姿勢の小さな像。ダンジョンのモンスターが0.9%の確率でドロップするレアアイテムだ。売っても二束三文にしかならないが、捨てるとなんかバチが当たりそうなので捨てるに捨てられない。
ロックはそれを3年間で5体引き当てた。確率的にはおかしい。本人は「よくあること」としか思っていない。
枕元のスマホが震えた。
画面にはハッチの名前。出る前から声量が予測できる相手だった。
「ロックさん! ロックさんロックさん!」
「うるせえ。朝っぱらからなんだ」
「Eランク上がったんですよー! 昨日の査定で!」
「おめでとう」
「いやもうちょっとなんかないですか!? 感動とか!」
「おめでとう、すごいな」
「棒読み!」
ハッチ。ギルドの新人研修クエストで3層まで案内した教え子。今は別のパーティで活動している。人懐こくて声が大きくて、距離の詰め方が野良犬みたいな奴だった。
「強い人とパーティを組んだら、10層まで行けるらしくて! いま一緒に行ってくれる人を探してるんですよ!」
「そうか、俺は9層あたりをうろついているから、なんか困ったことあったら聞きに来い」
「えっ!? えっ!? ロックさん一緒に来てくれないんですか!?」
「俺は昨日帰ってきたばかりなんだから、少しは休ませてくれよ」
電話を切った。
ポケットの中で、なにかが微かに温かかった。手を突っ込むと、指先に小さな光が触れる。直径3センチほどの光の球。ロックのドローン妖精だ。
配信者登録をすると、配信神ヨウツベノミコトから一体のドローン妖精が授けられる。レベル1、光の球。配信者の「撮り方と生き方」に応じて形態が進化し、やがてカメラとして空を飛ぶようになる。
ロックの妖精は3年間、一度も目を覚ましたことがない。
配信者登録はしてある。配信から有益な攻略情報を得るためには、必要なことだった。
だが配信ボタンを押したことは一度もなく、登録者数はゼロのまま動いていない。
妖精にとって、ロックは主人ですらなかった。眠っている光の球を起こす方法は一つしかない——配信をすることだ。
ロックにその予定はなかった。
窓から冬の朝日が差し込んでいる。ギルド併設の安宿、月額4万8千ゴールド。壁が薄い。隣の部屋の目覚ましが鳴っている。下の階では誰かがドアを蹴っている。Dランク3年目の冒険者が住む場所としては、まあ相応だった。
棚の邪神像に朝日が当たって、4体の影がベッドの上に伸びている。そろそろ処分しようと思うのだが、売りに行く気にはならなかった。理由は自分でもよくわからない。
朝食はカップ麺。味噌味。
ダンジョンの湿気で蓋の糊がやられるのはシーフード味が一番早い。味噌は最後まで持つ。3年かけて検証した結果だ。誰にも報告していない。報告する相手がいない。
湯を注いで3分。
蓋を開ける。湯気の向こうにスマホの画面がある。
ロックの一日が始まる。他人の配信を見ることで。




