第08話:ゴブリン・ルンバ
【ウラヌス内部・ガミの拠点前】
GAMI:あ、ミサキさんから連絡きた。「もう着く」って……え? エンジン音が聞こえないな。
ドォォォォォン!!
GAMI:うわっ!? なんだ!? 敵襲!?
ミサキ:……到着。
砂煙が晴れると、そこには巨大なSランク魔獣・フェンリル(ポチ)の背中に、優雅に横座りしているミサキの姿があった。
GAMI:えっ……ミサキさん?
ミサキ:はい、荷物。
GAMI:いやいやいや! バイクは!? 今日はモンキーじゃないんすか!?
ミサキ:あぁ、あれね。ガソリン代も馬鹿にならないし、こっちの方が速いから。
GAMI:速いからって……Sランク魔獣をタクシー代わりに!?
ミサキ:燃費いいのよ、この子。ジャーキー1個で体感で300キロくらい走るかんじ、悪路も関係ないし。エコよ、エコ。
ポチ:ワンッ!(褒められて尻尾ブンブン)
GAMI:常識が……俺の常識が追いつかない……。
【コメント欄】
:は?
:誰もいないじゃん
:今のパトカー無人?
:じゃなくて
:犬に乗って来たぞこの配達員
:エコ(Sランク)
:フェンリル通勤www
:ガス代節約のために伝説の魔獣を使うなw
:不気味すぎる(強さが)
(視聴者数:18,598人↗︎)
ミサキ:で? 何よこの立派なログハウス。
GAMI:あ、そうなんすよ! スキル【クラフト・メニュー】で作ったんす! 釘一本打たずにポチッと建設完了っす!
ミサキ:ふーん。見た目はいいけど…… なんか中、騒がしくない?
(ログハウスの中から、ペタペタという足音と奇声が聞こえる)
GAMI:それっすよ! SOSの理由は! ちょっと中見てください!
◇
【ログハウス・リビング】
(床一面に泥の足跡。緑色の小鬼たちが数十匹、我が物顔で走り回っている)
ゴブリンA:ギャッギャ!(この家いいぞ!)
ゴブリンB:ギョギョ!(泥だらけにしてやる!)
GAMI:家建てたら「巣」判定されたみたいで、勝手に上がり込んでくるんすよ! 追い出しても泥だらけで戻ってくるし! 新築が台無しっす!
ミサキ:……汚っ。
GAMI:そこでミサキさん! 頼んでた『激落ちくん』とデッキブラシを……!
ミサキ:……はぁ。道具渡す前に、まずは躾ね。ポチ。
ポチ:グルルルルゥ……!(室内の気温が一気に下がるほどの殺気)
(ゴブリンたち、フェンリルの威圧に凍りつき、直立不動で整列する)
ミサキ:いい? あんたたち。ここに住みたいなら家賃を払いなさい。
ゴブリン:ゴブ?(ヤチン?)
ミサキ:労働よ。ここを磨きなさい。チリ一つ残さずピカピカにしたら、このポチの餌にならずに済ませてあげる。
ポチ:ガウッ!(涎を垂らして牙を鳴らす)
ゴブリンたち:ギィヤァァァァ!!(死に物狂いで『激落ちくん』を奪い合い、床を磨き始める)
GAMI:すげぇ…… ゴブリンが『ルンバ』より高速で動いてる……。
ミサキ:恐怖による労務管理、一番コストかからないわよ。
GAMI:ブラック企業の発想だ……。
ミサキ:で、次は家具だっけ?
GAMI:あ、こっちっす! 見てくださいこのスライム家具!
ミサキ:……何この趣味の悪い透明な椅子。
GAMI:【素材加工】で作ったんすけど、冷たいし、ベチャベチャするし、座り心地最悪で……。
ミサキ:だから持ってきたわよ。『シモンズ』のマットレスと、『無印』の「人をダメにするソファ」。
(ミサキ、スライムの椅子の上に高級寝具をドスンと設置する)
GAMI:おおお? スライムの弾力がマットレスに伝わって……これはまるで最高級ウォーターベッド!
ミサキ:設置完了。じゃ、座ってみれば?
GAMI:(ダイブする)んあぁぁぁぁ〜……! 神……! これぞ文明の融合……!
(その横から、銀色の巨体が割り込む)
ポチ:(ビーズクッションに顔を埋める)……クゥ〜ン。(とろける顔)
ミサキ:……あーあ。Sランク魔獣がダメになっちゃった。
GAMI:ちょ、ポチ! そこ俺の場所! ……あ、はい、譲ります。噛まないで。
【コメント欄】
:は?
:魔獣がダメになってる
:スライムの上にシモンズは草
:ゴブリン掃除隊www
:ポチかわいい
:てか配達員さん何者なん
:フェンリル手懐けてゴブリン使役して
:最強の調教師じゃん
(視聴者数:18,533人)
ミサキ:さて、仕事終わったし帰るわよ。ポチ、起きなさい。
ポチ:(クッションから動かない。全力の拒否)
ミサキ: ……チッ。置いてくわよ。
(第8話 完/第9話へ続く)




