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第20話:翻訳アプリでフェンリルと話そう!

【ミサキのログハウス前】



ミサキ:というわけで。石材を探しに深層へ行きたいの。乗せてって。



ワイバーン:……嫌っす。ワイバーンは首を横に(物理的にものすごい風圧で)振った。姐さん、深層ってことは、また空域制限ギリギリを飛ぶことになるでしょ? もし間違ってリアルワールドに出ちゃったらどうすんすか。俺、もうあの『F-2』とかいう鉄の鳥、マジで無理なんすよ。ロックオンのアラート音を聞くだけで失禁する自信あります。



ミサキ:チッ、情けないわねぇ。今回はダンジョン内だけの移動だってば。(……まあいいわ。無理強いして空中でションベン漏らされても困るし)



ワイバーン:(ホッとした顔)あ、それならポチ(フェンリル)に行かせればいいんじゃないっすか? あいつ、昔は『氷結回廊』をナワバリにしてたらしいんで、陸路なら詳しいはずっすよ。



ミサキ:ふーん。ポチがねぇ。



私は視線を足元に向けた。そこには、私の足首にじゃれついている巨大な銀色の狼――フェンリルがいた。



ミサキ:ねえ、ポチ。あんた、深層への道わかる?



ポチ(フェンリル):ワンッ!



ミサキ:……ダメだわこれ。IQが犬だわ。ワイバーンみたいに人語を喋れればいいんだけど。



私はポケットからスマホを取り出した。最近インストールした最新の翻訳アプリ——『Google Translate Pro(魔導プラグイン導入版)』を起動した。



ミサキ:えーっと、『同時通訳モード:魔獣語』……これでどうかな。もう一回聞くわよ。ポチ、深層の『氷結回廊』まで案内できる?スマホのマイクを向ける。



フェンリルは、「グルル……」と喉を鳴らした。



『翻訳中……』



スマホ音声(渋いバリトンボイス):『――我を誰だと思っている。我は誇り高き狼、神をも喰らう牙、フェンリルぞ? そのような下働き、我のプライドが許さぬ。人間風情が気安く命令するでない』



ミサキ:うわ、めんどくさ。性格悪っ。普段しっぽ振ってるくせに、中身はこんなオッサンだったのね。



ミサキ:……じゃあ、おやつあげる。ビーフジャーキー3枚。フェンリルがピクリと反応した。



スマホ音声:『……ほう。あの、コンビニとかいう場所で売られている、魅惑の干し肉か。……悪くない。だが、我の格を考えれば、5枚が妥当であろう』



ミサキ:3枚。それと撫でてあげる。



スマホ音声:『……御意。交渉成立だ。背中に乗るがいい、小さき主よ』



チョロいもんね。





【ガミの拠点】



出発前、ミサキはガミの拠点を訪ねた。「というわけで、4〜5日留守にするから。家の周りの結界、維持しといてね。」



「ええええ!? マジっすか!? ちょ、ちょっと待ってくださいよ! 俺の食料はどうなるんすか! ピザもコーラも在庫切れそうなんすけど!?」 ガミが涙目で訴えてくる。確かに、引きこもりの彼にとって、ライフライン(私)が途絶えるのは死活問題だろう。



「大丈夫よ。代わりの『足』を用意しておいたから。はい、これ」私は一枚の名刺と、フリスクのケースを渡した。



「……『木島便利配送』? ああ、あの体力バカの……。で、こっちのフリスクは?」



「中身はワイバーンよ。『出ろ』って言えば出るように躾けてあるから。いざって時は使いなさい。話も通じるし、私の名前出せば言うこと聞くはずだから」



「い、いや、使わないっすよ! 魔物とか怖いし! 俺はずっと部屋にいますから!」



「はいはい。じゃ、行ってくるわ。ポチ、行くよ!」



スマホ音声:『うむ。風になるぞ、しっかり掴まっていろ』



私はフェンリルの背に跨り、ダンジョンの深淵へと駆け出した。





【翌日:ガミの部屋】



プシュッ……スカッ。空しい音がした。コーラのペットボトルが空だ。



……終わった。俺のポーションが尽きた。ガミは震える手で、ミサキから渡された名刺を見た。電話をするのは怖い。人と話すのも怖い。だが、カフェイン切れの頭痛と、空腹には勝てない。



☎︎「……も、もしもし……。あ、ミサキさんの紹介で……ええ、はい……ガミです。……あの、コーラと……ピザポテトを……箱で……」





数時間後。ログハウスの前の階段に、バイクの音が響いた。



「ちわーっす! 木島です! ご注文の品、お届けに参りましたー!」



モニター越しに見る木島は、相変わらず爽やかだった。しかし、その動きにはどこか違和感があった。腰を庇うような、ぎこちない動き。彼は、コーラの入った重い段ボールを持ち上げ、階段を登ろうとして――。



グキッッ!!! 嫌な音が、マイク越しに聞こえた。



「あ……ぐ、ぅ……あ、あああ……」



木島が、スローモーションのように崩れ落ちた。段ボールが転がり、コーラのボトルが散乱する。木島は地面に這いつくばり、ピクリとも動かなくなった。



「き、木島さん!? ちょ、大丈夫っすか!?」



ガミは恐る恐るドアを開けた。目を細めながら駆け寄ると、木島は脂汗を流し、白目を剥いていた。



「ガ……ガミさん……すんません……。やっちまいました……再発、っす……。足の指先まで……痺れて……もう、一ミリも動けねえっす……」



(第20話 完/第21話へ続く)

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