表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/23

第02話:街から人が消えた日

東京湾に謎の巨大構造物が出現してから、3日が経過した。政府は直ちに「緊急事態事態宣言」を発令。湾岸エリアを中心とした一帯が封鎖区域となり、都民には不要不急の外出自粛が要請された。——そして、街から人が消えた。



《リクエストを受信しました。報酬¥1500》



普段なら「ミツオ」——たった320円で買い叩かれている案件が、今日は桁が違う。



「稼ぎ時……なんだけど」



私はペダルを漕ぎながら、空を見上げた。違和感が、拭えない。今は14時のはずだ。なのに、空の色は既に夕暮れ時の茜色を帯び始めている。朝、家を出てからまだ数件しか配達していない感覚なのに、もう日が傾いている。



信号待ちで、横に並んだバイク便の男が声をかけてきた。ワークマンのイージスを着込んだ、木島だ。



「お姉さん! 今日ヤバくないっすか? もう3万いきましたよ!」ヘルメットのシールド越しに、興奮した目が覗いている。特需バブルに浮かれているようだ。



「……ねえ、木島くん」


「ん? なんすか?」


「きみ、今何時だと思う?」



木島は不思議そうにスマホを見た。「えーと、14時……うわっ!? もう16時過ぎてんじゃん! え、マジで? 俺のスマホ壊れてね?」



「壊れてないわよ。私の時計もそうだから」



やっぱり、おかしい。忙しいから時間が早く感じる、なんてレベルじゃない。物理的に、太陽の動きが早まっているとしか思えない。



「ジャネーの法則じゃ説明つかないっすね」



その日の深夜。疲れ切った体で帰宅した私は、いつものようにIRL配信者・GAMIのチャンネルを開いた。彼は封鎖区域ギリギリのビルの屋上から、超望遠カメラで『ウラヌス』と呼ばれる、あのドームを定点観測していた。



『おいおい、見ろよこれ……』



配信画面に映し出されているのは、東京湾を覆う半透明のドームだ。その表面には、天王星の環のような「縦の輪」が発光している。GAMIがカメラのズーム倍率を上げる。



『この縦の輪……回ってやがる。

      しかも、少し傾いてねえか?』



確かに、光の輪はゆっくりと、しかし確実に回転していた。その形状は、巨大な観覧車のようにも見える。コメント欄が流れる。



【コメント欄】

:カイロスの時計かよ

:中と外で時間の流れ違ったりしてw

:人類おわたorz

:SF乙

:よくできたCG

:AIが作りますた

:GAMI行ってこい

(視聴者数:6,203人 ↗)



ふと、コメントの一つに目が留まった。——中と外で、時間の流れが違う。私はハッとして、窓の外を見た。あのドームの中は、今どうなっているのだろう。外の世界では、こんなにも時間が滑るように消えていくのに。もしかして、奪われた時間は、あの中に吸い込まれているのではないか?



——ブブッ スマホが震えた。


《京極レンからメッセージ》



[LINE]

:悪い、まずい事になって、イージスが。

:正直助けて欲しい。君の力が欲しい。

:頼む m (_ _)m

:一段落したら今度♨︎行こ(*゜▽゜*)'・*:.。..:



——京極 レン。内閣府、政策統括官(防災担当)付企画官。次世代防災システム『イージス※』の統括責任者。そして、私のかつての「恋人」だった男。何なの?この適当な絵文字は……私はスマホの電源を切った。『まずい事』って、窓を開けて空を見れば誰でも解るわよ。



※A.E.G.I.S.(イージス)Advanced Estimation for Global Integrated Safety



(第2話 完/第3話へ続く)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ