第17話:異世界プログラマー召喚VS生成AI
【リフォーム中のミサキのログハウス】
木島:うぉぉぉ……重いっす……バーさん、頼む! もっと腰入れて!
バーサーカー:■■ッ!
現れたのは、木島と、Tシャツに短パン姿(木島のお下がり)を着せられたバーサーカーだ。二人がかりで運んでいるのは、巨大な白い物体。猫足のバスタブである。
ミサキ:おー、やっと来た。ご苦労さん。
木島:ハァ、ハァ……マジで重いっす、これ……。鋳物とか、何考えてんすか……。
ミサキ:だってFRP(強化プラスチック)じゃ味気ないじゃない。お風呂はロマンよ。で、バーさんの方はどう? 少しは言葉覚えた?
バーサーカー:ア…ゥ……ウーバー…
木島:まだ単語レベルっすね。『ウーバー』と『地蔵(配達待機)』だけ覚えました。あと、コンビニの場所と、タワマンの入り口で警備員に頭下げるのは完璧っす。
ミサキ:まぁ、出足としては上々かな、引き続き宜しく頼むね。
木島は「じゃ、次の配達あるんで!」と爽やかに去っていった。残されたのは、ピカピカのバスタブと、ToDoリストだった。
ミサキ:さて、バスタブは来たけど、細かい日用品が足りないわね。シャンプーに石鹸、それに……ガミに頼まれたコーラか。木島くんは行ってしまったし、バーさんはまだ使えない。
……仕方ない。自分で行くか。
「ワイバーン!」
——バサァッ! 呼び出しに応じ、翼竜が舞い降りる。露骨に嫌そうな顔をしているのがわかる。
「またっすか? 自衛隊怖いんでヤダっす。マジ勘弁してください」
「今日は『耳』だけじゃなくて、Lサイズのピザ丸ごと一枚食わせてやるわよ」
Σ( °ω° )ビクッ!? ……「乗ってください、姐さん。どこまでもお供します」
「でもさ、そのデカさじゃコンビニの駐車場に収まらないし、目立つよね。アンタ、小さくなれないの?」
「え? 小さく?」
「魔物なんだから変化くらいできるでしょ。ほら、このフリスクの空き箱。これに入ってみてよ」
ワイバーンは目を丸くした。 ( ヽ°ん°)?
「いや、物理的に無理じゃ? ……俺、全長4メートルあるんすよ?」
「……そう。残念ねぇ。ピザなんだけど、チーズンロール(モッツァレラチーズをミミに包みパルメザンミックスチーズをかけて焼き上げました。)に、しようと思ったんだけど」
「やります! やらせてください!!」
——ポンッ.。oO
「おー、できるじゃん。便利ね。これならポケットに入れて連れ歩けるわ」
◇
地上のコンビニ。久しぶりのシャバの空気だ。私はカゴに、自分用のシャンプーと、ガミへの差し入れ(コーラ、ポテチ、カップ麺)を放り込んでいく。
レジ打ちの最中、ポケットの中で「モゾモゾ」と何かが動く感触があったが、店員には気づかれずに済んだ。買い物を終え、ドミノピザでチーズンロール(L)を受け取り路地裏へ。
「はい、約束のブツ」
デリバリーで受け取ったLサイズピザの箱を差し出す。——ポンッ、と元のサイズに戻ったワイバーンは、箱を開ける手間すら惜しんで、段ボールごとバリバリと噛み砕いた。
「ウメェ! 箱すらウメェ!」
「……全部食べちゃったorz 一枚食べようと思ったのに……アンタ、ほんと悪食ね」
◇
【ウラヌス内部・ガミの拠点】
ミサキ:頼まれたもの、買ってきたわよー。入るわよー。
しかし、ガミの反応は薄かった。彼は複数のモニターに囲まれ、死んだ魚のような目でうなだれていた。
ミサキ:何よ、辛気臭い顔して。
GAMI:いやぁ……最近、数字が伸び悩んでて。っていうか、どうやっても2万8000人で頭打ちになるんすよ。それ以上、誰も入れなくなるっていうか。
ミサキ:2万8000……。ああ、なるほどね。エフェメラルポートの枯渇かな。
GAMI:ポート……? よくわかんないっすけど、やっぱ限界なんすかね。俺も『異世界プログラマー召喚』ってスキル持ってたんで、直そうとしたんすよ。「もっとたくさん繋がるようにしてくれ!」って念じて。でも、
「要件定義エラー」
とか出て、全然動かなくて。やっぱ俺の魔力が足りないんすかね?
ミサキ:はぁ。——魔力じゃないわよ。言語化能力〔ロジック〕が足りないのよ。どんなに凄いチートスキルも、結局はツールよ。「何をしてほしいか」を具体的に指示できなきゃね。
GAMI:じゃぁ、ミサキさん、やってくださいよ! お手並み拝見です! この『異世界プログラマー召喚』スキル、譲渡しますから!
ミサキ:いらないわよそんなの。
ミサキ:わざわざ異世界からプログラマー召喚しなくても、リアルにある“普通のAI“に、今のポートの話と改善案を説明して、プルリク(修正提案)投げさせればいいのよ。
これオープンソースでしょ?
GitHub探して、直しとくわよ。少し時間かかるけど。ちゃんと手順さえ組めば、現代のテクノロジーは魔法より確実よ。
GAMI:……姉さん、アンタ何者なんだ……
(第17話 完/第18話へ続く)




