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第11話:開示要求で身バレ

【ウラヌス内部・ガミの拠点】



「みんな見てくれ……! この満天の星空! ヤバくないっすか?」(モニター越しでも分かる、宝石を散りばめたような星々。だが、ガミは不敵に笑った)



「……でもよぉ」



「俺たち現代っ子は、こんな静かな星明かりじゃ満足できねえよなぁ!?」(ガミが手元のスイッチ(魔石回路の接点)を——バチンと繋ぐ)



静寂な夜の森が、暴力的な極彩色に塗り潰され、無数の「発光する石」が幾何学模様に点滅し、星空を完全に掻き消す。そこへ、軽トラのエンジン音が近づいてきた。



「……うっわ。目が痛い」



「あ、ミサキさん! どうっすかこれ! 〜エレクトリカル・パレード〜 っすよ! 星より明るい地上の星っす!」



「何これ、ミレナリオ? 懐かしいんだけど……ていうか、せっかくの星空が台無しじゃない」



「いやぁ、暗いと作業しづらいんで! これで夜もパリピっす!」



「パリピねぇ……。で? なんでSOSなわけ? こんなに明るいのに」



「そこなんすよ……。光るんすけど、電気が取れないんす! 魔力と電力は互換性がないみたいで…… 俺のスマホも配信機材もバッテリー残量が赤色レッドゾーンっす!」



「……はぁ。文明の利器を使いたいなら、文明のエネルギーが必要ってことね」(軽トラの荷台から「ドスン!」と重たい箱を二つ下ろす)



「うおっ、重そう! なんすかこれ?」



「Anker PowerHouse 767。ポータブル電源の親玉みたいなやつよ。あと、ソーラーパネルもセットで」



「アンカーきたぁ〜信頼と実績の青い光!」



「容量は2048Wh。あんたのショボい配信機材なら、これで三日は持つわ。昼間はソーラーで充電して、夜はこれを使う。……魔石なんかより、よっぽど安定的よ」



「神……! ミサキさんはインフラの女神っす! さっそく接続を……」



(ブブッ……ブブッ……)



「ん? なんか鳴ってません?」



「……私のスマホかな」(ポケットからスマホを取り出し、画面を一瞥する。表情がスッと冷める)



「出なくていいんすか?」



「いいのよ、ただの迷惑電話だから。……しつこいのよ」



「うわ、電源切った。徹底してますね」



「ストーカー除けのお守りが必要かもね。……ほら、さっさと接続しなさい。今日は追加料金、高めにもらうわよ」



「ひえっ了解す〜文明開化の音がする!」





【立川広域防災基地・大規模災害対策本部内 危機管理センター立川運用室】



立川の夜は、既に冬の気配を含んだ冷たい風が吹いていた。京極は、冷めきった泥のようなコーヒーを喉に流し込んだ。胃の腑が焼けるように熱い。



だが、頭の中は冷徹に澄み渡っていた。



永田町からここ、立川の通称「別館」へ拠点を移して三日。正面のメインスクリーンには、くだんの配信映像が流れている。



『GAMI・チャンネル』現在、同時接続数2万5千人。画面の中では、極彩色の光に包まれた男が、巨大なバッテリーを抱えて小躍りしている。



「……解析結果は?」



京極が短く問うた。背後でキーボードを叩いていた京極の部下Aが、手を止めて答える。「えぇ。配信元の環境ですが、やはり我々の世界とは時間軸がズレてるのかと…」部下Aは配信の冒頭に映っていた星空のキャプチャを見せる。



「デネブ、アルタイル、ベガ

         ……夏の大三角ですね」



「つまり、向こうはまだ夏。時間の進み具合が遅れているのか……」「えぇ。もしくはこちら側が進んでるのかですね……およそ3ヶ月から4ヶ月ってところですかね。で、今注目の例の『運び屋』の件ですが……」



京極の目が、画面の端に映り込む「影」を捉えた。フルフェイスのヘルメット。ダボついた作業着。だが、その声にはどこか聞き覚えがあった。



「……千代乃ちよの



京極は無意識にその名を呟いた。かつて、彼が押し付けた膨大なデータを黙々と処理していた女。地味で、従順で、都合のいい女。それが今、世界のことわりすらねじ曲げるダンジョンの中心で、女王のように振る舞っている。



「開示要求の結果が返ってきました」



部下Bがタブレットを差し出す。「配信者の『GAMI』。本名、坂上さかがみ健太。23歳。それと、以前のやり取りで、映り込んだQRコードから、送金履歴を洗いました。……巨額の金が動いていますね」



「受取人は、タカダ・チヨノと、あります」



京極は胸ポケットから、おもむろに私用のスマホを取り出しコールする。《__高田千代乃__》プルルル……プルルル…… 京極は、目の前のモニターを凝視した。



数秒の遅延(ラグ)の後、画面の中の影が動いた。



ヘルメット越しでも分かる、あからさまな不快感。——チッ。スピーカーから、微かな舌打ちが聞こえた気がした。ポケットからスマホを取り出すと即座にスワイプする。——プツッ。京極の耳元の電子音が、無機質な切断音に変わった。



「まさかな……ってか、あれ、お前なの?」



そう言い捨て、京極はしばし沈黙した。長く閉ざされていた眼が再び開かれると、そこには粘着質な光がその眼に宿っていた。



「国税局に連絡を入れろ。査察だ」



「え? しかし、まだ確証が…… それにこんな時間やってないですよ」「脱税じゃん。通報するのが市民の義務だろが——個人の口座に、出所不明の数千万が動いているんだぞ? 徹底的にやらせないと、ダメだろが?」京極は再びモニターに向き直った。画面の中では、文明の明かりを取り戻したガミたちが、能天気に乾杯している。



「逃がさないよ、千代乃ちゃんw

      お前の管理者は、この私だよ」



モニターの青白い光だけが、京極の歪んだ愉悦を照らしていた。



(第11話 完/第12話へ続く)


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