表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「番探しの王子と転生おばあちゃん~王子様、私は黒髪黒目じゃありません~」  作者: 栗原林檎
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/37

5

ケルベロスの巨体が地響きを立てて崩れ落ちる。

静寂。

燃え残る炎と焦げた地面の匂いだけが、戦いの激しさを物語っていた。


「……討伐、完了」


誰かが呟いた瞬間、張りつめていた空気が一気にほどける。


だが――

次に広がったのは歓声ではなく、困惑だった。


「……団長の腕、治ってます」


「さっきまで貫通してたはずですよね……?」


ギディオンは自分の腕を見下ろす。

血も傷も、まるで最初からなかったかのように消えていた。


「魔法部隊、治療は?」


「……追いついていません。

これは……回復魔法の域を超えています」


ざわ、と空気が揺れる。

視線が一斉に――フードの人物へ向いた。

フルールは思わず一歩後ずさる。


(まさかあいつか?いや、違う。

俺は結界しか見ていない)


この魔の森で、あれほど精緻で強力な結界を張れる存在。

それだけで常識外れだ。


(だが……魔力の気配がない)


探るように視線を向けても、そこからは微塵も感じ取れない。


(結界はどうやって張った……?)


(こいつは……いったい何者なんだ)


一瞬、思考が渦巻く。

だがギディオンは小さく息を吐いた。


(……今は考えても仕方がない)


「この者は保護する」


低く、しかし揺るぎない声。


「事情聴取と安全確保のため、連れて帰る」


フルールはぎゅっとフードの端を握りしめた。


「……どこに連れていかれるんですか。

なんとなくもう予想できますけど」


「王宮だ」


「あぁ~……やっぱりねぇ……」


ため息まじりに空を仰ぐ。

しばらくして、そっと聞いた。


「……あの」


「なんだ」


「お風呂はあるのかしら」


一瞬の沈黙。


「あるどころか最高だぞ!」


副団長ルーカスが勢いよく声を上げる。


「王宮自慢の大浴場だぞ!」

「広くて湯気もすごくて!」

「一日中入ってたいくらいだ!」


フルールの目が輝く。


「……本当に?」


「もちろんあるよ!大きくて気持ちいいお風呂が!」


少し考えてから、こくり。


「……それなら、行きます」


(風呂で釣れたな)


誰もが心の中で思った。



――森の入口付近に待機させていた馬に乗り

王宮へ向かう道中。

ギディオンは何度もフードの人物を振り返る。


「顔を見せろ」

「……嫌です」

「確認のためだ」

「嫌なものは嫌です」


頑なな態度に、ルーカスが苦笑する。


「まぁいいじゃないですか団長。

どうせ風呂に入るんですし、その時分かりますよ」


「……それもそうだな」


ギディオンは小さく頷いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ