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「番探しの王子と転生おばあちゃん~王子様、私は黒髪黒目じゃありません~」  作者: 栗原林檎
第1章

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『豊穣の星月祭』の喧騒が王宮の隅々まで届く中、王太子執務室の奥にある私室では、張り詰めた空気が漂っていた。

ギディオンは、父である皇帝と母である王妃を前に、固い決意を口にしていた。


「父上、母上。私は……フルールを、生涯の伴侶にしたいと考えております」


その言葉に、王妃が微かに目を見開いた。


「ギディオン。彼女がこの国の救世主であることは認めます。ですが、彼女はあなたの『番』ではないのですよ?」


「分かっております。ですが、今の帝国を見てください。魔物を狩り、食べる文化が根付いたことで、平民までもが自警討伐隊を組み、自ら魔物を退治し始めています。これまで騎士団が負っていた負担は激減し、魔物の異常増加も抑えられている……。これはすべて、彼女がもたらした奇跡です」


ギディオンは真っ直ぐに両親を見据えた。


「私は、不確かな運命や『番』という理よりも、自分の魂が選んだ相手を信じたいのです」


皇帝は重厚な沈黙のあと、静かに口を開いた。


「気持ちはわかる。だが、いまだ帝国の魔力バランスは不安定なままだ。見過ごすわけにはいかん。もしお前が番以外を娶り、魔力がさらに乱れれば、魔物が再び溢れ出す可能性もあるのだぞ」


王妃も、案ずるように言葉を継ぐ。


「何より、いずれ真実の番が現れたとき、誰よりも傷つくのはフルールさん本人なのですよ。彼女をそんな残酷な立場に置くつもりなのですか?」


ギディオンは悔しそうに唇を噛んだ。反論できない正論が、胸に突き刺さる。


「……そこまで言うのであれば、神木の元へ行き、審判を仰ぎなさい」


皇帝の厳格な声が響いた。


「お前の愛が、帝国の理を超えられるかどうか。神木がお前に答えを出すだろう」



~レオンとリリアのお忍び大作戦~

一方その頃、第二皇子レオンと第一皇女リリアは、こっそりと「作戦会議」を開いていた。


「……ねぇ、リリア。お兄様って絶対にフルールのこと好きだよな?」


レオンが真剣な顔で切り出すと、リリアは「あら、レオンにしては珍しく鋭いわね」と、少し意外そうに頷いた。


「当たり前だろ! 兄様のあの顔、見たことないぞ。……フルールは兄様の『番』じゃないみたいだけど、さ。俺は、フルールがいいんだ」


「奇遇ね、私もよ。あんなベアトリスみたいなお姉様になるのは御免だわ」


二人は顔を見合わせ、ニヤリと笑う。


「兄様とフルールが結婚したら、フルールは本当に俺たちの『姉様』になるんだよな?」


「ふふ、そうね。……応援するしかないわね、これは!」


二人はすぐに行動に移した。護衛を最小限に付け、変装をして祭りの街へと繰り出したのだ。

目的は、デート中のはずの兄とフルールを見つけること。


「あ! 見つけたわ!」


リリアが指差した先には、茶色のウィッグで変装したギディオンと、ピンク色の髪にメガネをかけたフルールがいた。

二人は屋台の前で、東の国の豆を大切そうに抱えて笑い合っている。


「……心配しなくても、もう夫婦みたいだよな」


レオンが呆れたように、けれど嬉しそうに呟く。


「そうね。兄様、あんなに優しく笑っちゃって……」


「よし、俺たちも祭りを全力で楽しもうぜ! 父様と母様にお土産も買わなきゃな!」


「ええ! 美味しい魔物食の屋台も全部回りましょう!」


仲良く駆け出していく幼い皇子と皇女の背中を、後をつけていた護衛たちは、温かな眼差しで見守るのだった。

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