欲しい!欲しい!
☆☆☆田舎株式会社
俺の会社は、小さな土木会社だ。しかし、役員が5人・・いや、今朝6人に増えた。
元妻の祖父が会長という名の社長で、元義父、元義母、男兄弟の二人が取締役だ。
しかし、今朝、役員になったのは、沢田、托卵した男だ。
「チース、何もしらないので先輩方よろしくお願いします」
コミュ力の固まりみたいな男だ。
あっという間に会社に溶け込みやがった。
「・・・宇佐田君、君は今日から資材部に行ってくれ」
「え、はい。では引き継ぎは?」
「大丈夫だ。現場の人間に聞かせるから、沢田君は大卒だよ。分かるよ」
「はい・・・」
「有給を取ることを許可する。君、自分の行き先を考えなさい」
資材部、つまり、倉庫番だ。倉庫の隅っこにパーテーションで仕切られた一角に机がある。
「はあ、暇だ。在庫管理するか。それが終わったら有給を取ろう。たまっているからな」
さて、明日役所に相談に行くか。
外国人の子供が突然現れた。日本語の『欲しい』『ちょうだい』『ズルイ』しか言わない。
児童相談所か?いいや。明日、総合受付で相談しよう。
そう言えば、姉妹がいるのに、何故、欲しがり姉はいないのだろか?
民話だと不遇な姉が定番だよな。そういうものかもしれない。
「さて、ネンネだ。明日、役所に行こう」
「・・・ズルイ」
ヌイグルミも一緒に布団に入れるのだな。
そう言えば、理子も昔は可愛かったな。
ピンポ~ン!
「誰だ?こんな時間、もしかして、闇バイト?いや、こんな一人暮らし用のアパートに?」
インターホンで問う。
モニター越しに、燕尾服を着た初老の男がいた。外国人だ。
怪しい。
「あの~、ここに欲しがり妹のミリーはいませんか?」
何故か即答で
「おりません」
と答えた。
しかし。
「ほお、欲しがり妹と聞いて訝しまない。ここにいるのですね・・旦那様と奥様と上のお嬢様が心配されています。お引き渡しをお願いします」
何だ。
グイ!グイ!
と上着を引っ張られた。欲しがり妹だ。起きてきたのか?
フリフリと顔を横にふる。
「おい・・」
上着を上にめくり、腹を見せた。
「ウグ・・」
思わず叫び声がでそうになった。傷が無数にある。虐待か?
「お帰り下さい」
「ええ、今日の所は帰ります」
「欲しーの!欲しーの!」
「分かった。ここにいたいのだな」
「なの~!」
☆☆☆星苅神社
近隣で1番大きな神社に行った。
高身長な巫女さんが鳥居の近く竹箒を手に持ち掃除をしていた。
違和感がある。
しっくりしすぎている。
言うなれば、
わざとらしく工事現場の前で真新しい作業服を着て誰かと話している人?
古鉄を盗むために下見をしているような・・不穏さを感じた。
「あら・・」
彼女は俺と欲しがり妹をみたら反応した。
「・・・取り替え子?」
「ズルイ!」
「フフ・・・そうね。貴方もあちらの世界から来たのね」
・・・・・・
神社の一室に通されて、お茶を出された。欲しがり妹にはオレンジジュースだ。
「フウ、端的に説明しますね。この子は取り替え子です」
・・・理由は定かではありませんが、子供が異界の者に取り替えられる事があります。
不倫で生まれた子、遺伝的に隔世遺伝か起きて、祖父に似ている子など。全く男親に似てない不穏な子が何故そうなっているかの理由付けにもなっていました」
「つまり、狭い共同体で・・・我慢するための言い訳ですね」
「しかし、定期的にあちらの世界と『転生』と言う名で、子供が取り替えられているのです。この子は貴方の子と取り替えられる予定でしたが、何か原因があってこの子だけが来ましたわ」
「それは・・・離婚して、親権は妻のほうに、というか・・・」
托卵だった事は言わなくていいか。
「あら、私は26歳、貴方は?」
「31歳です。もうすぐ32歳です」
「お勤めは?」
「田舎土建です。やめる予定です」
「資格は?」
「施工管理技士と重機の資格各種です」
「ズルイ!ズルイ!」
「フフフフフ、では、これを」
「お札?」
「はい、私が書いた物ですわ」
何だろう。アルファベットの元になったような文字だ。
「これがあれば大丈夫ですか?」
「いや、これは少し嫌だなと感じる程度ですわ。今夜やってきます」
いいですか?スペインのパクスブルク家では、王宮に身体に障害のある子を道化として侍らせました。
それは絵画にも残っています。
理由は様々です。慈悲の心を見せるため。自分をより美しく賢く見せるための当て馬。
農村では生きながらえない子の命が助かった面もあるでしょう。
しかし、本質は、ヘイトを集めて、家族を円満にするためだと私は思っていますわ。
「それが、欲しがり妹・・や、ざまぁされる令嬢なのかもしれませんね。私も転生という形で16歳の時にこの世界に来ました。入れ替わり転生です。認識阻害の法がかかり。自然に溶け込めましたわ」
「有難うございました」
「あの、お賽銭をお願いしますわ」
ちゃかりしてやがる。
巫女さんは、俺のアパートまでついて来て、お札を貼ってくれた。
他にもアドバイスをしてくれた。
ドアの前に大きな鏡を置きなさいとかだ。
「朝の8時まではしのげば大事ですわ」
「はい、多分、大丈夫です。寝なければいいのでしょう」
これから昼寝をして寝だめして。徹夜をする。
夜、20時。
ピンポ~ン♩ピンポ~ン♩ピンポ~ン♩・・・・
やってきた。欲しがり妹の家族達だ。