第97話 イジメの顛末
昼休み、涼は担任の笠井麻里に呼び出されて生徒指導室にいた。
「なんか、最近よくここにくる気がするなあ」
「呼び出した理由は、昨日のいじめの件よ」
「やっぱりそうでしょうね。それでどうなったんですか?」
「昨日、黒田君本人とお母さんとお話ししたんだけど、反省していると言うことで、できるだけ穏便に済ませたいとのことだったわ」
「そうなんですか? ちなみにどんな処分になるんですか?」
「今、3人は謹慎中だけど、停学に切り替えることになるわ。1ヶ月ってとこね」
「軽くないですか? 退学かと思った。 またやったらどうするんだろう」
「テストはまるまる受けられないから、補習が大変よ。あと、またやったら、問答無用で退学ね」
「あいつらクラスの人たちも脅して、黒田を無視させていたんですよ。
クラスの雰囲気も悪くなるんじゃないですか?」
「もちろんクラスの人にも手を出さないって話になってるわ。相当大人しくなるはず」
「まあ、そうまで言うなら、こちらとしては別に何か言う立場でもないし」
「3組担任の坂上先生も感謝していたわよ」
「今度はいじめを早期に見つけてほしいですけど、なかなか難しいもんですかね」
「そうね、いじめは巧妙に隠されているから、なかなか見つけられないのよね」
「その割には、あいつらペラペラ喋ってましたけど」
「ふふ、私も音声聞いたの。笑っちゃいそうなくらい、ベラベラ喋ってたわね。
あまりのおかしさに、お茶を吹きそうになったわ」
「それで、黒田はどうなったんですか?」
「普通に今日は登校しているそうよ。改めてお礼に行くって話よ。
あと、ご両親もお礼をしたいそうよ」
「黒田ならいいけど、両親はな」
「黒田君にとって、恩人だからね。お礼もしたいでしょ」
「これから仲良くなるのかもしれないのに、むげに断わるのは良くないか」
「黒田君と仲良くなりたいの?」
「ええ、俺、男友達いないんで」
「そうなのね、それはよかったわ。黒田君はいい子らしいし、羽山君によく合うわよ。きっと」
「そうですか」
「昼休みなのにごめんなさいね。もう戻っていいわよ」
「はーい。失礼します」
涼が教室に戻ると、奏が近寄ってきた。
「涼君、黒田君って子がさっき来たよ」
「ああ、昨日のお礼ってやつか」
「また来るって」
「ああ、こっちから行くのもなんだし、待ってるか」
「呼び出しはなんだったの?」
「同じだよ。いじめの件だった」
「そう。問題なさそうでよかった」
「まあ、そうだな」
「……」
じーっと奏が見ている。
少し顔が赤くなっている。
「どうした、俺の顔なんかじーっと見て」
「う、うん、なんでもない」
「そういえば、最近よく見てないか?」
「涼君の気のせいじゃない?」
「そうか」
(やっぱり、涼君の顔を見ていると恥ずかしくてドキドキする。なんでこんなにかっこいいんだろう。
いや、そうじゃなくて、早く見慣れないと、勉強会も同好会もあるし、色々支障がありすぎるよ)
奏は、涼のことが気になって、気づいたら、涼のことを目で追うようになっていた。
口を開いたら涼の話ばかりだし、頭の中は涼でしめられていた。
幸い、勉強を始めれば、持ち前の集中力で、勉強に支障はない。
しかし、体育の授業では男子の方ばかり見ていてミスするし、家庭科の授業では針で無駄に指を刺す。
家では、涼のことで頭がいっぱいで、作ったスープを流しに流してしまい、怒られたこともあった。
普段の生活に支障をきたすレベルなのだ。
(私って、ポンコツなんだね)
ちょっと、落ち込んでしまう。
すると、涼が頭を撫でてきた。
「ひゃ、なに、涼君」
「いや、また悩んでるみたいだったから、頭撫でてるんだよ。
悩んでなかったか?」
「悩んでる悩んでる!」
「よかったら話聞くよ」
「それはダメ」
「そ、そうなのか」
「涼君はこのまま撫でて」
「これだけでいいの?」
「うん、これだけでいいの」
離れたところでは、女子達がキャーキャー言っている。
涼は恥ずかしかったが、気にしないようにした。
奏はにっこりと笑顔で、満足そうに撫でられていた。
放課後。
黒田康太が、涼を訪ねてきた。
「羽山君、昨日はありがとうございました」
「成り行きだったし、昨日、もう言われているし気にすんなよ」
「うん、そうなんだけどね。言い足りないからね」
「そっか、分かった。どういたしまして」
「それでさ、うちの両親も羽山君にお礼を言いたいんだって。
ご両親にもご挨拶したいらしいし、
一度、羽山君のうちに尋ねたいそうなんだけど、どうかな?」
「ああ、うちは両親はいないんだよ。もう亡くなってるから」
「え、それは、ごめんなさい」
「知らないんだから気にするなよ」
「うん」
「まあ、出迎えるのが俺だけなんだけど、よかったらうちに来てもらえるか?」
「うん!」
「って、言ってもいつ頃になりそうなんだ?」
「テスト前だけど、短く訪問するから、土日はどうかって言うことなんだけど」
「ああ、いいよ。土曜でどうかな?」
「うん、時間は10時くらいでどうかだって」
「ああ、いいよ。決定したら、連絡くれるか?」
「分かった。これ僕のID」
2人はWineIDを交換して、康太が帰っていった。
「涼君、終わったの?」
「ああ、終わった」
「じゃあ、行こうか。涼君、まどか」
「ああ」
「うん」
「今日は甘いもの食べにカフェに行ってから帰りたいね」
「ダメだぞ、ありさと天音がきちゃうからな」
「ちぇ、じゃあ、コンビニスイーツならどう?」
「ああ、それならいいよ。みんなの分も買っていこう」
「やった。どこのコンビニがいいかなぁ」
「私はナインのスイーツがいい」
「ええ、まどか、ナインは高いだけだよ。コスパもいいオーソンがいいよ」
「ええ、ナインがいいよ。涼君はどう思う」
「俺はどっちでもいい」
「どっちでもいいは無し」
「だって、美味いコーヒーがあれば、どこのスイーツでもいいよ」
「ええー」
3人はスイーツをどこで買うか悩みながら教室を後にした。




