第96話 ありさがやって来た
5人は、1時間ほど勉強をして、一息いれる。
こういう時、涼の影響か最近ではみんなコーヒーを飲んでいる。
「コーヒーおいしいね」
「コーヒーのおかげで、集中できそうだね」
「ありさはなんでうちに勉強しにきたの?」
「なんでって?」
「同級生の友達と一緒にやったほうが効率的じゃないか?」
「まあ、そうなんだけどね。こう言ってはなんなんだけど、私は結構成績はいいんだ。
だから、誰かに教わる必要って特にないんだよ。そうすると、同級生と一緒に勉強しても、基本的に教えるばかりなんだ。
それだったら、これから面白いことを一緒にやる人たちと勉強を通して交流を深めるほうが、理にかなってると思ってね」
「なるほど」
「同じ同好会の人たちの赤点も防げるしね」
「私、助かりました。すごくわかりやすくて」
基本的にありさはまどかに教えていた。まどかはありさの教え方のうまさに感動を覚えていた。
「ああ、私もありささんが教えていたところ聞いていたけど、すごく上手でびっくりしました」
奏もありさの教え方を褒めている。
「喜んでもらって何よりだよ」
「明日以降も、ありさは来るの?」
「嫌なの? 私何か変なことした? 教えて、涼君」
「落ち着いて、ありさ。そんなことないから」
「分かってるよ。冗談。そうだね、よければ来させてもらいたいんだけど」
「じゃあ、決まりだね」
「よろしく」
「でも、ありさは少し遠いから、早めに終わらせるべきかな?」
「自転車だから、よっぽど遅くならなければ大丈夫」
「そっか。分かった昨日と同じ時間にしよう」
ありさが話題を変える。
「ところで、同好会の夏休みの予定は決まったの?」
「うーん、3x3の大会は直近はもう埋まってるし、夏はできないかな。」
「ボルダリングなんかもコンペだっけ? あるんでしょ」
「そっちも今からじゃ申込遅いかな」
「そうなんだね。じゃあ、どうするの?」
「ああ、夏は色々試してみるのがいいかと思ってる。まあ、今のところ、入ってる予定って言ったら、バーベキューと海に行くくらいなんだけどね」
「何それ、海のこと聞いてないんだけど」
「ああ、ごめん、海は同窓会関係なく行こうかと思っててね」
「誰が行くの?」
ありさ以外みんなが手をあげる。
「私だけハブられたー」
「ああ、ごめん、これはありさと知り合う前に決まってたことで、しかも一部屋しか空いてなかったんだ」
「どんな海なの?」
「えっと、新潟の海で、ファミリー向けのビーチかな。夜に花火大会があるから、結構混むと思うけど」
「花火大会まであるの?」
ありさに、天音が追い打ちをかける。
「みんなで、浴衣を着て花火大会に行くんですよ」
「何それずるい。青春じゃない。アオハルじゃない。私も行きたいー」
ありさが駄々をこね始める。
(この人、生徒会長だよな)
「そうは言ってもなー」
「ね、涼君」
「何? 奏」
「宿に聞いて5人でも泊まれないか聞いてみれば?」
「ああ、聞いてみるか?」
「聞いて聞いて、私をねじ込んで」
涼に縋り付くありさ。
「分かった分かった。でもいけるとして、俺と同じ部屋になっちゃうけどいいの?」
「全然問題ない!」
「本当かよ。親に聞いてくれないか?」
「ふっ、普段から信頼があれば親問題なんて関係ないのさ」
「いや、今信頼を裏切ろうとしてるだろ」
「1回ぐらい大丈夫」
「だめ、とりあえず聞いてくれ」
「むっ、頑固だな」
「なんでもいいから、ほら聞いて」
「分かったよ。じゃあ、メッセージする」
ありさがメッセージを送ったら5分くらいで帰ってきた。
「ほとんどが女の子なら、大丈夫だろうって」
「まあ、それならいいか」
涼が電話をかけてみると、5人だったら問題ないとのことだったので、追加してもらった。
「いやー、よかった。仲間外れにならなくて」
「よかったですね」
「奏ちゃんの提案のおかげだよ。涼君ときたら、頭ごなしにダメって言うんだからね」
「フフフ」
「なんか、人聞き悪いんですけど」
ありさが涼の不満を無視して言う。
「他に何か考えてるの?」
「キャンプとか登山かな」
「おお、いいじゃないか」
「でも……もう勉強の時間だから、話はまた今度」
「涼君は私に冷たいと思うんだけど」
「はいはい、そんなことないよ。とっとと、まどかに教えてあげてね」
「分かったよ」
5人はそのまま時間いっぱいまで勉強に集中した。
場所は変わって、賢治の自宅。
賢治と瑠美はオンラインで繋がって、勉強をしていた。
結局、涼の件で合計2週間の謹慎処分が追加されたが、起こしたことに対しては軽い処分だった。
それは、奏と賢治が衝突した後に涼がこれ以上謝罪を求めないという旨を担任に言ったことが関係する。
2週間の謹慎なので、謹慎明けは直ぐにテストがある。
通常、人に会うのは禁止なのだが、勉強会をするという名目なので、オンラインは許可されていた。
「ハアー」
「どうしたの? 集中力切れちゃった?」
「いや、数学が苦手でな」
「ああ、そうだったよね」
「奏が教えてくれないのが悪い」
「栗山さんには断られたの?」
「ああ」
「まあ、彼女としては安心だよ」
「なんでだよ」
「元カノと一緒に勉強会されるのは嫌なものだよ」
「でも、奏は幼馴染なのに」
(なんでも幼馴染ね)
「無理なものは無理なんだから、自分でやるしかないでしょ」
「めんどくせえな。なんで数学なんかあるんだろ」
「それは今更だよ。それに英語も苦手でしょ」
「瑠美、教えてくれ」
「いいけど、前にも言ったけど、良くも悪くもないから、期待はしないでよ」
「いいよ。この際」
(この際ってなによ)
「どこがわからないの?」
賢治がカメラに教科書を向ける。
「こことここ」
「ああ、これはねぇ……」
だいぶ失礼なのは相変わらずだが、賢治にしては、まあまあ真面目に勉強をしていた。




