第93話 友達が欲しい
翌日昼休み。
「どうしたの? 涼君」
弁当を食べながら、少し考え込んでいた涼に奏が話しかける。
「なんか嫌いなものでも入れちゃった?」
「いや、そんな事ないよ。いつも通り美味しい」
「そう? それならよかったけど、何悩んでいたの?」
「ああ、俺友達いねぇなーって思って」
「私とまどかがいるじゃない? それじゃあ不服?」
少し奏がむすっとする。
涼は慌てて誤解を解く。
「違うんだ。奏とまどかは大切な友達だよ。そうじゃなくて、同姓の友達が居ないなってこと」
「涼君って、今まで友達いた事ないの?」
「小学校まではそれなりにいたけど、中学からは自分で交流を断っちゃったからな。
友達いないのは自業自得なんだよ」
すると、まどかが口をひらく。
「今の涼君だったら、友達なんて簡単にできるんじゃない?
ああ、女子が寄ってくるのか」
「うーん、男子も寄ってくるにはくるんだけど……」
「どうしたの?」
「なんというか、友達になろうっていうのは、奏目当てが多いんだよな」
「ああ、なるほど」
「俺と友達になりたいんじゃないようでな」
「それじゃあ、友達になれないね」
「涼君、なんかごめんね」
「奏が謝る事じゃないよ。こんなこと気にされちゃ嫌だよ。俺は」
「うん、分かった涼君」
涼は食べ終わった弁当を、片付け立ち上がる。
「奏、美味しい弁当を毎日ありがとう」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
「悪いけど、俺図書室に用があるから行ってくる」
「うん、分かった。また後でね」
「じゃね涼君」
涼は図書室に入った。
(本の匂いはなんでこう落ち着くのだろう。電子書籍じゃ味わえないな)
などと考え、目的の棚に歩いていく。
その棚の前には見覚えのない1人の小柄な男子生徒が立っていた。
その男子生徒は『ダンジョンで出会いを求めたのは間違いだっただろうか』の11巻を手に取っていた。
「あ」
「え?」
「ああ、ごめん、同じ本の9巻を探していたから、仲間がいたって思ってな」
「ああ、そうなの」
男子生徒がそう返す。心なしかおどおどしている。
よく見てみると、小柄で華奢だが、整った顔をしている。髪の毛はかなり伸びていた。
(まるで、前の俺の頭だな)
「その本、面白いよな」
親近感の湧いた涼は積極的に話しかける。
「うん、僕はこの間まで読んだ事なかったんだけど、アニメで見てから好きになって読むようになったんだ」
「ああ、俺は友達に勧められて、読み始めてからアニメ見たんだ」
「アニメもいいよね」
「熱い展開が好きだな」
「うん、そうだよね。ヒロインも可愛いよね」
「そうだな。ちなみに誰が好きなんだ?」
「やっぱり剣姫かな」
「ああ、強くて可愛いよな」
「でしょ。いいよね。えっと、」
「あ、俺、1年1組の羽山涼」
「あ、羽山涼くんって、今話題の人だよね」
「ああ、話題になってるらしいな」
「あ、僕は1年3組の黒田康太。よろしくね。あ、でも……」
「ん? どうした?」
「いや、あんまりよろしくしない方がいいのかなって」
「え? 俺そんなに嫌われ者?」
「いや、羽山君じゃなくて、僕の方が問題で」
「?」
「いや、なんでもないよ。それじゃあ、いくね」
「……ああ、分かった」
涼はもう少し話してみたいと思ったが、残念だった。
場所は変わって、奏 まどか 涼の3人で下校途中。
「って、ことがあったんだよ。早速友達ができるチャンスって思ったんだけどな」
「急に帰ってしまったと」
「うん」
「涼君が怖い雰囲気出しちゃったとか?
「え?俺そんなに怖い?」
「ううん、普段は全然そんなことないけど、怒ってる時とか威圧感すごいよ」
「そうなのか? じゃあ、黒田と友達になれそうにないのか」
「涼君、あきらめないで。何か事情があったんだよ。問題があるのは僕の方って言ってたんでしょ」
「そうだな。明日教室に遊びに行ってみようかな」
「うん、そうしてみれば?」
「でも黒田康太くんかぁ」
「どうしたんだ、まどか」
「なんか、聞いたことあるんだけどね」
「そうなの? 有名なのかな」
「うーん。あ、分かったかも」
「どんな奴なんだ?」
「1年3組の子でしょ。その子、結構ひどいいじめ受けてるって話だよ」
「いじめ?」
「うん、クラスに3人、たちの悪いのがいて、その3人が中心になっていじめてるみたい。
クラスの人たちは3人に目をつけられたくないから、みんなで黒田くんを無視してるみたいなんだ」
「そうなのか、それは辛いな」
「かわいそうだよね。クラスで味方がいないみたいだよ」
「どこ情報?」
「そのクラスの子。仕方なく無視してるけど、罪悪感があるんだって」
「そうなんだ。じゃあ、その3人以外は3組は結構いい奴らなの?」
「いい奴らかはわからないけど、悪いわけじゃないと思うよ」
「それなら、その3人をなんとかすれば、とりあえず元に戻るのかな」
「もしかして、首突っ込もうと思ってる?」
「どうかな? とりあえず友達にはなりたいんだけどな。いい奴そうだったから」
「無茶なことしないでよ」
「まあ、準備だけはしておくけど、何もしないかもだし」
「準備って何?」
「まあ、そう言ったことに対する基本戦略は全部同じだからな」
「なんだかわからないけど、心配だなぁ」
「とりあえず、明日の昼休み、黒田に会いに行ってみるよ」
まどかと奏は心配そうな顔で涼を見ていた。
今日も、涼 奏 まどか 天音の3人は涼の自宅で勉強をしていた。
ピロリン
涼のスマホにメッセージが来た。
「あれ、ありさからだ」
「ありささん、なんだって?」
「今見てみる」
『今何してる? もしかして勉強会してるのかな? なんで誘ってくれないのかな』
「だってさ」
「勉強会するなんて言ったっけ?」
「覚えてないな。メッセージ遡ってみるか……あ、あったな。俺伝えてるよ」
「涼君、ありささんとそんなにチャットしてるの?」
「ああ、そこそこはしてるよ」
「私には来てないのに、怪しくない?」
「え? そんなことないよ」
「ちょっとスマホ見せて」
「いやだ」
「なんで? 何かやましいことでもあるの?」
「そんなことないよ」
「さっきと同じこと言ってる。怪しいよ。見せてよ」
「まあまあ、奏。なんだか浮気を疑っている奥さんみたいになってるよ」
「お、奥さん!」
奏は真っ赤になりながら、もじもじしている。
「奥さんなんて、飛躍しすぎだよぉ」
今度はまどかが、聞いてきた。
「それで、生徒会長はなんだって?」
『勉強会するなら、仲間に入れてくれだって』
「お兄ちゃん、1人増えるの?」
「みんながいいって言うなら。俺はいいと思う。同じ同好会なんだから」
「そうね私もいいよ」
「私もいいよ、お兄ちゃん」
「仕方ない。ありささんならいいよ」
「じゃあ、メッセージ送るな」
ものの数分で返信が来た。
「明日から来るって。みんなもよろしくな」




