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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第89話 練習試合

 日曜日。

今日も今日とて、早朝ランニングする涼と奏。

戻ってきて、今はストレッチをしている。


「今日は時間あるし、ボルダリングでもしようか? バスケは早朝だと意外にうるさいからな」

「うん、そうしよう」


 奏もボルダリングは随分上手くなった。

どうしても必要な筋力はまだ追いついていないが、ムーブはとても良くなっている。


 とはいえ、中級者にはまだなれないというところだが。


「このコース難しいね」

「ああ、やり方見せるよ。と言っても俺と奏では体格に違いがあるから、参考程度だけど」


 奏にやり方を見せてから奏がやってみる。

少し、登ったところで、奏が落ちた。


「きゃ」


 すぐ後ろに涼がいたため、涼が抱きとめた。


「あ、ありがとう」


 と、言いながら無意識に奏は肩を掴む涼の手に自分の手を重ねてしまった。


(あれ、私なんでこんなことしてんの? 好きみたいじゃない。いや、好きだけど。

今どかすとかえって良くないよね。どうしよう)


 と、若干パニックになりながらも、そのまま後ろを振り返り、涼と目を合わせてしまった。


(この体勢で見つめあっちゃった。これって、キスしちゃいそうな体勢じゃない?)


 奏の頭の中はもうぐるぐるだった。

顔を涼に少しずつ近づけていった。

そこで、動きを止め見つめあった。それから、涼はにこりとして、奏の体勢を戻した。


(うおー、奏と今キスしちゃいそうになっちまった。流石にまずいだろ。

でも、奏もしても良さそうな雰囲気じゃなかったか? いや、そんなはずはないよな)


 涼は涼で頭の中はぐるぐるだった。しかし、


(ああ、涼君はなれちゃった。なんでこの状況で、涼君は冷静に対処するのかなぁ。

少しくらい勢いで行動してもいいのに。でも、そんなことになったら、私耐えられないかも)


 奏から見たら涼は冷静だったようだ。


「じゃあ、そろそろ終わりにして、ストレッチをしてからシャワー浴びようか」

「うん」


 その後、シャワーを浴びて、朝食を食べた。


「天音の練習試合って、午後からだっけ」

「うん、1時からだから、その少し後くらいに行こうよ」

「分かった。それまで、勉強でもしてから、アニメか映画でも見てるか」

「うん、そうしよう。お昼ご飯はどうしようか?」

「カップラー」「ダメだよ」

「だよね。」

「じゃあピ」

「もだめ」

「……奏、作ってくれるかな」

「うん、いいよ」

「良かった」

「あっ」

(あれしてもらいたい。お願いしちゃおうかな)

「何?」

「なんでもない」

(でも、言えない。やっぱり)

「言ってよ」

「……言ってもいいの?」

「なんか怖いな。でもいいよ」

「じゃあさ、ご飯作る代わりに、膝枕して」

(やってくれるかな? 断られたらどうしよう)

「ああ、そんなことだったらいいよ」

「いいの!」

「天音がこの前、1回やっても2回やっても同じって言ってたからな」

「……それって、後ろから抱きついた時?」

「あ、うん」

「へー、涼君。天音にまたあれやるんだ」

「いや、そうは言ってないけど」

「でも天音に言われたらやるんでしょ」

「かもしれない」

「……変態」

「っ!」


 絶句して真っ赤になる涼。ちょっと言われる心当たりがある。


「あれ、天音にも当てるんだ」

「……!」

(何も言えない。あれって、あれだよな。もう恥ずかしい。

変態って言われても何も言い返せないし。こんな体嫌だ。

でも誤解だけは解いておかないと)


 涼は。おずおずと喋り始める。


「あのな、奏。」

「何?」

「えっと、天音にはあれは当たってないよ」

「ウソ」

「いや、本当。こう言うのも恥ずかしいんだけど、当たらないように腰を引いておいたんだ」

「そうなの?」

「ああ、だからこの話題は……終わりにしてくれたら助かる」

「ふふ、恥ずかしいの?」

「はずか死ぬ」

「ププ、何それ。もうしょうがないなあ。じゃあ終わりにしてあげる」

「ありがとう」

「その代わり私にもまたあれやってね」

「それってどういう」

「いいの。さっ、勉強しよ」

「あ、ああ、分かった」

(膝枕、いつしてもらおうかな)


 憔悴している涼とは対照的に奏は笑顔で元気だった。


 お昼は奏が作った。

涼のうちに以前にお歳暮で届いて使わなかった蟹缶を使ったカニチャーハンだ。

カニの風味と、カニの出汁がきいて、とても美味しい。


「カニ美味しいね」

「奏が作ったから、なおさら美味しいんだよ」

「ふふ、嬉しい」

「何杯でも食べられそうだよ」

「そこまではないかな」

「それは残念」

「蟹缶まだあるし、また今度作ってあげるから」

「おお、頼むよ」

「これ食べたら、そろそろ行こうね」

「膝枕しなくていいの?」

「今度にしよう。ゆっくりして欲しいの」

「分かった、そうしよう」


 食事をし終わった後、天音の中学校に行く準備をした。


「涼君、何その大きなクーラーボックス」

「ああ、差し入れだよ。もう暑いからな氷入れて冷やした、ゼリー飲料とスポドリ。昨日買っておいた」

「重くない?」

「すごく重い。だからタクシーで行こう」

「涼君って、ちょくちょくセレブだよね」

「タクシーは便利だから好きだよ」


 2人はタクシーで奏の学校まで行った。

幸い、体育館はロータリーからすぐのところだったため、重いクーラーボックスを長い距離、運ばないで済んだ。


「こんにちはー」

「あ、奏先輩! こんにちは」

「先輩、来てくれたんですか」

「お姉ちゃん、きてくれてありがとう」

 天音と同じ部の部員たちが集まってきた。


(そっか、奏は去年までここでやってたんだよな。2年生3年生は直接の後輩なのか)


 全員が集まってきて、挨拶をしてくる。

そして、3年生のキャプテンが奏を紹介する。


「2、3年は知っているけど、栗山奏先輩。去年のキャプテンをしていた。

奏先輩のテクニックはかなり高いから、この機会にアドバイスをしてもらうといいかもしれない。

それと、」


と、涼を見てきた。


「ああ、羽山涼です。バスケの経験は浅いけど、基礎練だけはめちゃめちゃ積んでいます」


 すると、キャプテンが言う。


「ああ、天音ちゃんが言ってる、お兄ちゃんですね。1on1で天音ちゃんが全然勝てないって言ってました。

私ともやってもらえますか?」


すると、「私も」と言う声が続出した。


「あはは、皆さんに余裕があればお願いしますね。後、これは差し入れです。ゼリー飲料とスポドリが入ってます」

「ありがとうございます」

 

 部員たちは、差し入れに喜んだ。


「どこに置いておこうか?」

「こちらで持って行きます。1年生」

「「はい」」

「あ、重いから、俺が運ぶよ」

「いえ、大丈夫です……すみません、やっぱり重いです」

「じゃあ、場所だけ教えて。よっと」

「わ、すご」


 軽々と持ち上げる涼にまだ華奢な一年生は驚いていた。


 練習試合は2回行った。

相手は強豪校で、テクニックもフィジカルもなかなかの強さだったが、天音のチームも拮抗して、1勝1敗だった。


天音はどちらもスタメンで経験のために入替するまではほとんど出ていた。


「天音、うまいな」

「うん、上手になった。特にドライブがいいよね」

「ああ、1on1の成果が出たかな」

「うん、出てると思うよ」


 試合は終わって、相手チームは帰っていった。


 すると、天音が涼の腕に飛びついてきた。


「お兄ちゃん、私の活躍どうだった?」

「ああ、すごく良かった。ドライブとシュート力が高いな。」

「えへへ、お兄ちゃんのうちで練習しているおかげだよ」

「そう言ってくれると嬉しいな」


すると、キャプテンに声をかけられた。


「羽山先輩、1on1やっていただけませんか?」

「ああ、シューズ持ってきてるし、いいよ」

「ありがとうございます。あの、先輩ダンクもできるんですよね。それも使っていただけませんか」

「ああ、分かったよ」


 そうすると部員たちが、「私も」と集まってしまい一人当たり短時間しかできなくなったが、涼のテクニックに驚いていた。ダンクをした時は大喜びだった。


 キャプテンが声をかけてきた。


「今日は差し入れありがとうございました。あと1on1もすごく勉強になりましたし、その、かっこよかったです。

また、きてくれたら嬉しいです」

「うん、また機会があったら来させてもらうよ。みんな頑張ってね」

「はい!」


 元気に返事をしてくれて、涼はとても嬉しかった。


(この子達なら、また差し入れ持ってきてもいいな)


 帰りはまたタクシーを使い帰ったが、天音も一緒に乗った。


「お兄ちゃん、今日はきてくれてありがとうね」

「いや、天音が喜んでくれたら、良かったよ」

「私は嬉しかったけどね、複雑な気分だったよ」

「なんで」

「みんなお兄ちゃんのことかっこいいって言ってて、ダンク決めたらハートの目になってたよ。良かったねお兄ちゃん!」

「そうか、それなら嬉しいな」

「むー、お兄ちゃん!」


 ももをつねられた。


「いて、何するんだ天音」

「お兄ちゃんが鼻の下伸ばしてるからいけないんだもん」

「伸ばしてないって」

「でも嬉しかったでしょ」

「うん」

「ほら!」

「いや、嬉しいのはしょうがないだろ。正直に言ってるだけだよ」

「もう、そんな正直いらない」

「まあ、機嫌直してくれ」

「じゃあ、頭撫でて」

「分かったよ」


 とは言っても、タクシーの中なので、控えめに天音の頭を撫でた。

サラサラの天音の髪が指に気持ちいい。


(運転手さんに見られてないかな)


 タクシーが涼のうちに着くまで、天音の頭を撫でた。

天音はすっかり機嫌を取り戻していた。


「今日は、うちでご飯だよ。楽しみだね、お兄ちゃん」

「ああ、そうだな。俺も楽しみだよ」


 自宅に荷物を置いた後、シャワーを浴びて、3人で自転車に乗って、奏の家に向かった。

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