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幼馴染に振られた少女と家族を失った孤独な少年の慰め合い同盟〜いつの間にか離れられなくなってしまって〜  作者: めのめむし


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第72話 奏の弁当作戦

 2時間目が終わった後の休み時間。


「よう、羽山」

「お、向井」

「頭の方はどうだ?」

「とりあえず大丈夫だよ。1週間は運動できないけど」

「それならよかった。大山がすまなかったな。同じバスケ部員として謝るよ」

「よしてくれよ。向井には関係ないことだし、そもそも俺たちはチームメイトだっただろ」

「ああ、そうだったな」

「それよりも、その後の試合に出れなくて悪かったな」

「うん、それは仕方ないさ」

「俺も出たかったんだけどな。結構楽しかったから」

「はは、あれだけプレーできてれば楽しいだろうよ」

「盛り上がったよな」

「ああ。そういえば、バスケ部の監督に羽山のこと色々聞かれたんだ。

もしかしたらスカウトされるかもしれないぞ」

「そうなのか? 俺なんかでいいのかな」

「いや、お前のプレーはかなりよかったぞ。相手チームを圧倒してたからな。

大山はあれで、ベンチメンバーなんだよ。それも寄せ付けなかったからな。

もしかしたら、1年の中で一番上手いかもしれないぞ」

「大袈裟だな」

「それで、監督にスカウトされたらどうする? 俺としては、羽山なら大歓迎だぞ」

「うーん、考えたことなかったしな。言われてから考えるよ」

「分かった。しかし羽山がバスケ部に入ったら女子の応援がすごいことになりそうだな」

「なんでだ?」

「球技大会の初日な、2回戦目は応援凄かったろ」

「ああ、凄かったな」

「あれ、ほとんど女子だったんだけど、次の日羽山がいないってわかると、応援が全然なくなってしまったんだよ。泣けるだろ」

「そ、そうか。俺も人気あったみたいで、意外だな」

「お前な。自分のスペックの高さに気づけよな」

「ああ、分かった。ありがとう」

「おう、じゃあ行くわ」

「ああ、それじゃな」


 向井が去っていくと、女子3人組が2人増やして5人で近づいて来た。


「羽山くん、お疲れ様」

(あ、2人増えた。しかもやっぱり名前知らない)


 相変わらず、名前がわからない涼だったが、来てくれたことは嬉しい。

だから、満面の笑みで返す。


「お疲れ様」


 5人は嬉しそうにする。


「ねえ羽山くん、今日なんか予定ある? ボーリングとか行きたいなって言ってたの。

羽山くん超うまそうじゃない?」

「「「「ねぇ」」」」

「ああ、ごめんね。1週間は大人しくしているように言われてるから、しばらくまっすぐ帰る感じなんだ」

「あ、ごめんね。来週だったら、あ、そうかテスト前だよね」


 見るからにがっかりする女子。

本当に名前はなんだろうと思う涼。


「ごめんね」

「ううん、気にしないで。また誘うね」

「ああ、ありがとう」

「それじゃあね」

「「「「じゃあね」」」」

「うん、それじゃ」


 女子5人組は去っていった。


 涼がなんとなく奏の方をみると、奏は女子と男子両方に囲まれていた。

男子は猛烈にアタックしているように見える。


(はぁ、奏はモテるな。なんか、複雑な気分だ)


 奏を見て、ひっそりと落ち込む涼。

3時間目のチャイムを聞いて、次の教科の準備をするのだった。


 しかし、3時間目は急遽、自習になった。

自習の時間の最中、涼は担任の笠井麻里に呼び出された。


「羽山君、生徒指導室まで来て」

「はい」


 生徒指導室はいつ来ても緊張する。

前回は家族に関することだったし、今回もきっと球技大会のことなのだが、それでも体が固くなる。


「自習の時間にごめんね」

「いえ、大丈夫です。普段から勉強してますから」

「頼もしい言葉ね」

「それで、どうしたんですか?」

「うん、球技大会のことでいくつか確認と報告があって」

「やっぱりそのことですか」

「これはきちんとやっておかないといけないからね。

それで、頭の方は大丈夫?」

「週末の間、何もなかったので、大丈夫だと思いますよ」

「それはよかったわ。栗山さんからも聞いていたから、安心はしていたけどね」

「そうだったんですね」

「大山くんのことなんだけど、大山くんに謝罪をさせたいのだけど、羽山君のことを悪く言って、あまり謝罪の意思を見せないのよね。羽山君、大山くんの態度に心当たりあるかしら」

「心当たりはたくさんありますけどね。

なんか、怪我をさせられたこととは関係ないと思うので、それは関係なく謝ってもらいたいところなんですけどね」

「それはそうね。でも、こちらも把握しておきたいから、話せるところだけでも話してもらえないかしら」

「ええ、いいですよ。先生は大山と奏、栗山さんが別れたのは知ってましたよね」


 涼は奏と賢治が別れてから、今までの賢治の行動の中で自身に関係のある部分をかいつまんで説明した。


「単に因縁をつけてるのと逆恨みね」

「まあ、そんな感じなんですよ」

「分かったわ」

「球技大会当日は私や複数の先生方は見ていたけど、教師側でもビデオ撮影をしていたの。

だから、職員で共有もできているわ。

とりあえず、3日間の謹慎処分になっているのだけど、それ以上の処分を検討するべきだと言う声も上がっているの。

今聞いた限りでは、それまでの行動のことも考えれば、停学になってもおかしくはないんだけど、停学にするのは難しいっていう声もあるわ。

羽山君はどう思う?」

「僕は、謝ってさえもらえれば、処分はどうでもいいんです。もっとも、謝ってこない可能性の方が高いですけど。

あ、どっちにしても、停学にするのは望みません。別に僕に得はないですし、それで彼が反省するとも思っていませんから」

「そうなのね。ありがとう。参考にさせてもらうわ。じゃあ、戻って自習の続きをしてちょうだい」

「はい、失礼します」


 なんだかんだ色々あってからの昼休み。

奏とまどかがやってきた。


「涼君、お昼食べよう」

「ああ、分かった」


 そこで声がかかる。


「羽山くん!」


 みると女子3人組が来ていた。


(今度はまた3人組なんだな)

「何?」

「お昼一緒に食べない?」

「ああ、ごめん。奏とまどかと一緒に食べることになってるんだ」

「あ、よかったら栗山さんと古賀さんも一緒でどうかな」


 奏とまどかの顔が強張る。


「なるほど、それもいいんだけど……」

「じゃあ」

「でも、ごめんね。奏には俺の人にはいえない悩みを聞いてもらう同盟を結んでいるんだ。

だから、人が多くなると話せなくなっちゃってさ。そう言うことで、ご飯一緒はできないんだ」

「古賀さん……も」

「うん、まどかは奏の親友だからね。一緒に色々聞いてもらってるんだ」

「そうなんだ……分かった。それじゃあまたね」

「うん、じゃあね」


 5人組は見るからにがっかりしながら戻って行った。


「それじゃあ行こっか。屋上でいいよね」


 振り返って言うと、奏とまどかが笑顔だった。


「どうしたの?」

「ううん、なんでもないよ。ね、まどか」

「うん、なんでもないよ」

「そう? それじゃあ行こうか」

「「うん」」


 3人は屋上に行って、いつものようにレジャーシートを広げて座った。

そして、それぞれ弁当を広げて食べ始める。

と、言っても涼は例の如くカロリーバーだった。


「涼君は何かあれかな?」

「何? 奏」

「ツッコミ待ちとか?」

「へ?」

「ああ、もう、なんなのそれ」


 奏が、ビシッと涼のカロリーバーを指差す。


「カロリーバーだよ。いつも見てるだろ」

「そうよ、いつも見てるのが問題なの」

「?」

「涼君は、そのうちちゃんとしたお昼に変えるって言ってたよね」

「ああ、確かに言ったな」

「で、なんでいまだにカロリーバーなの?」

「いや、結局これが一番楽かなって」

「もう! 涼君は、食べるものをきちんと考えないのが問題だよ」

「ああ、そうだな。ごめんな」

「謝んなくていいの! そんなことより、食生活改善して」

「そう言われてもなあ」

「分かった。よーく分かった」

「分かった?」

「涼君に任せていたら、涼君が栄養失調で倒れちゃうってことがよーく分かったよ」

「大袈裟だな」

「大袈裟じゃない! もうこれからは私の指示を聞いてもらいます!」

「指示?」

「分かった?」

「いや、どんなし」「分かった?」

「はい、分かりました」

「よろしい。差し当たって、涼君には私が毎日弁当を作ってくるから、それを食べてもらいます」

「え? それは悪いよ」

「そんなこと気にしてる場合じゃないでしょ。それに2人分くらい1人分の手間と変わらないんだから」

「俺としては嬉しいけど、本当にいいの?」

「いいよ。私が決めたことだし」

「じゃあ、お願いするよ」


 奏は、にっこり笑って答える。


「はい、お願いされました」

「そっかー、奏が作ってくれるのか。嬉しいな」

「そうかな」

「もちろん嬉しいよ。あ、そうだ、お金は払うからね」


 そう言うと、涼は財布から1万円札を2枚取り出して奏に渡した。


「そんなにもらえないよ」

「いや、1ヶ月分をこれで材料費とか計算して、引いて行ってくれればいいから。足りなかったら言って」

「いや、余裕で足りるよ」


 まどかがポツリと言った。


「急な話で、2万円ポンと出すところが涼君は金持ちって感じだよね」

「ん? ああ、食費とかも持ち歩いてるからね」


 奏が思い出して言う。


「そうだ、涼君お弁当箱がないんだった。うちに大山くんのはあるけど、いやでしょ」

「それは確かに」

「涼君、1週間運動もしないよね」

「うん」

「じゃあさ、一緒にお弁当箱買いに行かない?」

「ああ、奏が大丈夫なら」

「私が言い出してんだから大丈夫だよ。

「分かった」

「じゃあ、放課後にショッピングモールに行こう。まどかは……」

「私は部活」

「だよね。じゃあ涼君、放課後ね」

「分かった」

「じゃあ、私いないから、放課後制服買い物デート楽しんできてよ」

「デ、デート?」

「デートなのか?」

「デートでしょ。男女が放課後に制服で買い物行って、しかも男のお弁当箱買うなんて」

「そ、そうね」

「そうか。なんか照れくさいな。そう言うと。か、奏はさ、俺なんかとデートはいやじゃないか」

「いやじゃないよ……むしろ嬉しいかも」

「ああ、えっと、俺も嬉しいよ」

「「……」」


 涼と奏が見つめ合う。2人の頬は赤く染まる


 しかし、まどかが叫び出す。


「ああー! なんなの、このラブコメみたいな空気。わざとやったでしょ、2人とも」

「そ、そんなことないよ」

「そんなはずないだろ、まどか」


 涼と奏は赤い顔をしながら、残りの食事をとった。


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